花嫁と貧乏貴族

寿里~kotori ~

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恋愛感情ゼロな王女と王子の会話

王宮の貴族たちの間では王位継承権第1位の国王陛下の愛娘ダイアナ王女の結婚相手が父方の従弟ミモザに決まったスクープで持ちきりであった。

ミモザ王子は亡き王弟の息子で国王陛下の甥っ子だが養子のような存在である。

血筋としては申し分なくダイアナ王女より少し年下の14歳で身体が弱いことを除けばピッタリの婚約者だ。

しかし、うわさ好きで詮索大好きな貴族連中は明朗快活で聡明な美少女であるダイアナ王女がなんでよりにもよって陰気でネガティブで虚弱体質なミモザ王子なんかを結婚相手にしたのかヒソヒソと囁いている。

「他国の王族と王女を結婚させるのは国王陛下が反対していた。身分としてはいいのだが……ミモザ王子は引きこもりで気難しい御方だぞ?」

「国王陛下と王妃は結婚に乗り気ですわ。でも~ダイアナ王女もお気の毒だこと」

「ほんに!従弟でしかも陰気で離宮にこもってるミモザ王子が未来の夫君だなんて!」

宮廷に出入りしている貴族の大半は西の離宮に住んでいるミモザ王子にあまり良い印象を持っていない。

ほとんどの連中が国王陛下の独断でダイアナ王女に無理にミモザ王子との結婚を強要したと勘違いしている。

実はミモザ王子を夫にと望んだのはほかでもないダイアナ王女なのだが。

王女なりに諸外国と自国の立ち位置を模索して考えた結論である。

下手に他国の王族の男を選ぶと外交や交易などに有利なようで干渉も受ける。

ダルい戦争の援軍なんて求められたら面倒だ。

「何より他国の王族の殿方なんて実際にお会いするまで現物が分かりませんわ。顔は多少不細工でも構わないけれど、性格が権力渇望思考の意識高い系だったら面倒よ」

とんでもない殿方が婿に来てもおいそれと離婚はできないし離婚なんてことになったら最悪は国同士の戦争に発展する。

自国はそこまで他国に力を求めなくてもやっていけると判断したダイアナ王女は国家を磐石にして守るためにミモザ王子を指名した。

このことから察するようにダイアナ王女はミモザ王子を特別愛してる訳でも恋してるわけでもない。

もちろん従姉弟同士で子供の頃から知ってる仲なのでけして嫌いではない。

しかし、ラブラブキュンキュンな関係では両者ともにないのが現実だ。

「まあ、ミモザのお人柄と面倒くささと気難しさは知ってるもの。愛はなくてもミモザのことは好きだしいいでしょう?」

「そうですね。ダイアナ姉上。僕も正直申して姉上を女性として愛するは生涯無理な気がします。でも努力して子孫はのこす所存なので」

「よろしくね。ミモザを選んで心配なのは貴方が子作りで役に立つかよ?わたくしが子供を産めないリスクがあってもミモザが王位につけば解決する。でも、ミモザに子種がないと従姉弟婚した意味がないから!」

「そうですよね。結局、僕に子供つくる能力なしですと姉上は別の貴族を迎えることになる。身体が弱いので種無し葡萄な危険性が僕にはあります」

このダイアナ王女とミモザ王子の会話を聞いていてモモとミシェルは思っていた。

ほぼ同時に心で叫んでいた。

(なんちゅうトキメキと甘酸っぱさ皆無な婚約者同士の会話!)

(国の安泰を考慮に入れた結婚だがダイアナ王女もミモザ王子も会話が事務的すぎる!)

ザ・王家の者同士の婚約者会話は愛も恋心も夢も希望もなくお互いを想うより国家を想うのを最優先している。

ダイアナ王女付きの女官たちは王女がミモザ王子のもとに足しげく通うのを喜んで見守っている。

女官長なんて降るほど縁談話があったダイアナ王女がその実、離宮に引きこもるミモザ王子を一途に恋していたと誤解し、感激して涙まで流す始末だ。

実際に離宮での王女&王子の会話を耳にしたら女官長は別の意味で号泣ものだろう。

婚礼の儀はミモザ王子が15歳になったらなのでまだ少し先だが王家の後継者の婚礼なので準備は急ピッチで始まっている。

ミモザ王子も今までのように離宮に引きこもりもできなくなる。

やはり、ダイアナ王女の婚約者として宮廷の貴族たちに顔を見せるのが務めとなるからだ。

「ミモザ!今度の宮廷の園遊会には顔を出すのよ?そこで改めてわたくしの婚約者であると発表するから」

「承知しました。陛下と王妃がわざわざ僕のために催してくれる園遊会です。ダルいですが笑顔でいますよ」

「あら!別にキャラ変更しなくていいことよ!ミモザが終始ニコニコ微笑んでるなんて気色悪いわ。風で身体を冷やさないようお気をつけあそばせ」

「お心遣いありがとうございます。ダイアナ姉上」

ダイアナ王女とミモザ王子はモモやミシェルから見てもラブラブではない。

でも、王家の血をひく者としての信頼関係は非常に固いと感じた。

「ミモザ王子。園遊会に参加する貴族どもの顔ぶれだけど……」

「モモ。言う必要ない。だいたいの顔ぶれは把握してる。あんな奴らと会うために離宮を出るのは面倒だが仕方ない。ミシェル……エドガーとリンを抜かしたシルバー家の者たちは来るのだろう?」

「はい!妹のシンシアとジャンヌと父クロード。そして、母ローズもミモザ王子にお会いできるの楽しみにしております」

「ローズ殿か……。ミシェル、お主のお父上のことは嫌いだ。しかし、僕はそれ以外のシルバー家の面々は好きだぞ。特にローズ殿は親戚ということを抜きにしても尊敬している」

「ありがたきお言葉。母のローズのことは私も心より尊敬しております。父クロードは息子の私から見ても微妙ですが」

ミシェルの言葉にミモザ王子は少し笑い、ダイアナ王女は頷いた。

「クロード……ミシェルのお父上はこの間、リンってラン・ヤスミカ領に嫁がせた庶子のご子息が毒入りの果実酒を送ってきたなんてご冗談を陛下……お父様にしていたわ!その毒入り果実酒を飲んだら冷え症が治ったから、わたくしのお母様に献上するって!」

「ダイアナ王女。リン様の作る毒酒は飲むと健康になる。でも!クロード様も毒と知ってて王妃様に献上すんな!殺すぞ!!」

シルバー家は毒に耐性があるのでリンの毒酒を飲んでも死なないが王妃が飲んで万が一のことがあったら、どう責任とるのか?

王妃が病に臥せった、急逝したとは聞いてないのでリンの毒酒は今度も万能薬だったのだろう。

ダイアナ王女いわく王妃は前にもまして明るく、お元気らしいのでリンはまたもクソ親父クロードを殺し損ねた。

「リン様もいい加減に毒の調合の才能ないって自覚して諦めろって言いたい」

モモが苦笑するとダイアナ王女は「閃いたわ!」と手を叩いた。

「モモ!ミシェル!そのリンというシルバー家の子にお願いして!わたくしとミモザの結婚は世継ぎをのこさないと意味ないわ。妊娠するためのお薬とミモザの子種が増えるお薬を調合するように!子供は最低でも男児と女児合わせて5人は欲しいの!」

あくまでも王家の務めを最優先するプリンセス・ダイアナ!

結婚前から子作り&子種増量に必要な薬作れは流石にミモザ王子に失礼だろうと思うがミモザも感情論に流されるプリンスではない。

「それは名案です。姉上。そのリンとやらに子種が増量する媚薬を製造させて婚礼して1年後には第1子をもうける目安でいきましょう。子供は5人から7人がベストです。男児は2人で女児5人。王位継承&他国に政略結婚させるカードが必要なので」

お互いを愛し合うとか惹かれ合う以前に未来の外交カードまで計画しているダイアナ王女とミモザ王子の姿にミシェルとモモはドン引きした。

ここまで冷静に話し合ってるのもすごいが、ダイアナ王女とミモザ王子はむしろ楽しそうに仲良く語り合っている。

「全然、浮わついた感ないがお似合いな夫婦になりそうだな?」

「そうだね。モモ……私は到底お二方のように淡々と愛してない相手と子作り相談なんてできない。ダイアナ王女もそうだが、ミモザ王子もやはり大した御方だ」

愛情や恋心なんて湧かなくてもダイアナ王女とミモザ王子には国家を共に守るという絆で繋がっている。

ミシェルはそんな夫婦関係もありなのかと考えたが感情的な自分にはとてもできないと悟った。

だが、時間がかかっても16歳のダイアナ王女と14歳のミモザ王子がお互いを夫婦として愛しく想ってほしい。

そんなことをモモに呟くとモモはニヤリとして囁いた。

「バーカ。お互いに信頼して愛してなきゃ王子も王女もこんな遠慮ない会話できねーよ」

取り急ぎリンに子作り用の薬を作れと書簡を送らなければとモモは笑っている。

ダイアナ王女とミモザ王子が照れていてお互いにわざと冷めた会話をしてるのか、マジでお互いを国家運営のパートナーとしか見てないのかはミシェルには今はまだ判別出来なかった。

end









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