再会

大和撫子

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TSUNAGARIとKAMINARI。

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2009年。夜には満天の星が広がり、暗くなったらそのまま寝る。朝30分かけて中学校に行ってもいる生徒は4人。
通学路の近所の人は毎日誰かの噂話をして楽しんでいる。
人口3000人のこの町ですれ違う人は皆顔見知り。私はこんな狭い狭い鳥籠のような空間から早く出ていきたい。
14を迎えた中学3年生になろうとしている私は今日も大粒の雪が降る秋田の町に住み、まだ朝方で冷え込んでいる中羽毛布団から出て、1階のリビングにおり予め用意されていた茶碗に少し盛られている米と味噌汁を食べる。
「お母さんっていつもワカメの味噌汁だよね。」暖かい味噌汁が大雪の外の気温を忘れるかのように、私の体に染み渡りながら母に聞く。
お皿を洗っている母は、「野菜なんて今の時期買えやしないわ。」少し笑いながら答える母に少しイライラした。
全国キーのテレビでは完成予定の東京スカイツリー特集が組まれていた。「私も東京に生まれてたら。東京で生活を送っていたら。もっと大雪に悩まされずに済んだのに。常に新しいものに囲まれて生きれたのに。」
私は都会の中継を見ると秋田とすぐ比べてしまい切なくなる。「どうせ、秋田なんか都会から下に見られてるんだ。」すぐ後ろ向きになる私によく怒りを覚える。
秋田の中心部に行くのも年に数えるほど。仙台になんか行った記憶は数年前だ。
常に新しいものに囲まれてる東京とは違い、秋田はいつも新しいものなんかない。新しくなるのは近所のスクープ、噂話だけ。私のとこだけ何も変わってない。なんで私だけ…そんなことを思いながら時計を見るともう遅刻しそうな時間になっていて急いでリュックを背負い学校へと向かった。
学校への道のりは過酷だ。雪道を30分も歩き続ける。学校の生徒は4人だけなんだから一緒に学校へ行く友達もいない。同級生もおらずただ止む気配のない雪を見ながらひたすら歩くのみだ。

そんな中私にも新しいものが増えた。それはガラケーだ。東京の子は皆これを持っている。親に頼んで買ってもらったガラケーを通学中に操作しながらいるのがとても楽しく感じる。
最近はTSUNAGARIというオンライン上で色々な人と繋がれるアプリケーションをダウンロードし、色々な人と喋る。YURIという名前で登録している
私は色々な人と繋がった。色々な人と喋っている時だけは少しだけ鳥籠の中から解放されている気がした。学校へ向かう途中も少し寒さを忘れることができる。
ここ最近は同い年のKAMINARIとよく連絡をとっている。彼は東京に住んでいてとてもよく気が合い話していると面白い。私の学校は男子がいないから初めての同い年の男子と喋っていてとても緊張した。それがKAMINARIとの初めての出会いだ。
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