いつものように上司に罵られて辛い人生送ってたら鉄骨にぶん殴られて異世界行った話

ぷりん3号

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2話

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「せ、先生!魔力測定器が……」
 助手に呼ばれ、急いで見に行くと測定器の水晶玉が見たことのない色になっていた。
「こ、これは……」
 「昨日最後に測定をした子は誰だ?」
 助手は急いで名簿を探し、名前を言った。
――――――。
「……、よし、その一家に報告だ」

 次の日の朝。家はいつもより静かだった。最低限の会話だけが聞こえ、あとは食器を並べる音だけ。
 僕はお皿によそいでもらった朝食を食べ物が通らない喉に押し込んだ。
 と、突然ドアをノックする音が家に響いた。
 すると1人のメイドさんが僕たち三人を呼んだ。
「タルフィアール様ですね。私はレイザレル国際魔法学院の教師をしております……」
 父と母は話を聞いていたが、驚いたようにして、顔を合わせていた。
「シェイア、行くぞ」
 父がそう言って母も共に早朝の少し肌寒い外から馬車に乗った。
 ついた場所は昨日の魔法学校。家族全員が降りると、そそくさと学院へ入っていった。
 そして向かったのはまるで神殿のように大きな部屋。
 そして目の前には昨日の天秤よりもさらに大きく、豪華な天秤があった。
 先生は台を用意して、僕が天秤に手を乗せられるようにしてくれた。
 しばらく置いておくと、水晶の色はまるで銀河のように綺麗に輝いていた。
「まさかな……」
 先生はぼそっと言った。
 そしてまた父と母が先生と話していた。すると母は嬉しそうに、父は母の肩を抱いて喜んでいるように見えた。
「シェイア」
 父と母が呼ぶ。
「お前本当にすごいよ」
「シェイア、あなたはタルフィアール家の誇りよ」
 すると奥から見たことのない男の先生が出てきた。その先生は僕と同じ髪が青色でキラキラと輝いているように見えた。
「シェイア・タルフィアール。あなたを我が学院、レイザレル国際魔法学院に相応しい生徒とし、無試験入学を認めます」
 その時の父と母は一番嬉しそうだった。
 その日の夜は大きなパーティーを開いた。僕が主役なんてちょっと恥ずかしかったけど、嬉しかった。

 ――7年後――
「シェイア、準備できてるわよね?」
 母さんが部屋に入ってきた。
「んぐあぁぁぁぁぁ……」
 ベットでもぞもぞしているところ、毛布を剥がされ丸まったハムスターみたいな僕があらわになった。
「あなた今日は入学式よー。それにあなたが代表で話すんだから」
「え“」
 思わずシーツに埋めていた顔を上げた。
母さんは荒れている部屋を片付けながら言った。
「あれ?聞いてなかった?この前話したはずだけど」
 (シェイアの記憶)――――――――――
 母「そういえばあなた入学式に話すからね」
 寝ぼけまなこのシェイア「んぁぁぁぁぁ……」
 ――――――――――――
 結論:考えてない。
「え”……え……。え……」   終わった(オワタ)
 母はそのまま続ける。「早くしないと遅れるわよ。ほら、起きて」
 僕は蝉のようにベットにしがみついていたが簡単に引き剥がされた。
 廊下を歩くのが辛い……。ここを歩けば僕は入学式で大勢を前にして謎の沈黙が……。
 入学初日から医務室に運ばれたりして……くぅぅぅぅぅぅぅ……。
「ト……トウサン……オハヨ……」
 いつもと顔が違いすぎる僕に父さんがすかさず反応した。
「しぇ、シェイアァァァァァァ!!???!どうしたんだその顔はぁぁぁぁぁ!??!!!?!?」
 すると、僕の後ろから母さんが説明をする。
「この子、入学式の言葉考えてないらしいわよ。学院で無試験入学なんて滅多にないのに、入学したのがそんな子だなんて思われたら……」
 母さんは席について、メイドさんが注いでくれた紅茶を一口。そして少し大げさにため息をした。
 すると父さんは向かいに座っている僕に自信ありげに言った。
「シェイアなら台本がなくたって素晴らしい言葉をつらつら述べるからな!!なんたって我がタルフィアール家の自慢の息子なんだ!!」
 朝の寝起きの辛さと父さんの謎の浮かれ具合で朝ごはんが喉を通らない。
「トウサン……トウ……」
 僕が寝起きの喉で必死に絞り出した小さな声に父さんが気づき、耳を傾ける。
「なんだシェイア?そうかそうか!入学式で話したいことが多すぎて話がまとまらないか?そんなものまとまらなくても……」
「トウサン……ウルサイ……」
「う、うるさ……」
 父さんがショックでテーブルに突っ伏している中、僕は朝ごはんをもそもそと食べた。

 そういえば、制服って届いてからも見てなかったな。なんかめんどくさくて。
 開かずに置いてある少し豪華めの箱を開けた。制服を広げてみると、白を基調としたブレザーに、金の縁取りが施されている。前世の学生服のように、ネクタイではなかったが、豪華めのリボンのようなものがあった。下はそのまま真っ白のスラックス。そしてブレザーの左側に学院の校章がデザインしてある。
 ファンタジーらしく『魔法学校』と言う感じはするが、汚れたら一瞬で終わるとも思った。
 制服を着てみると、思ったよりも自分に合っている。でも……
「なんか……。女っぽい……」
 髪が少し長めと言うこともあるのだろうがなんか女っぽい。
「まぁ誰も気にしないか」
 僕はカバンを持って部屋を出た。

「シェイア様、襟が立っていますよ」
 そう言ってメイドさんが直してくれた。
「シェイア様はこれから学院の寮生活に入ることでしょう。もう私たちは手助けすることはできません」
「わかってるよ」
 襟を直し終わると僕はメイドさんの方を見た。
「12年間、お世話になりました」
 メイドさんは僕を見ながら言った。
「前まではこんなに小さかったのに、目を離していたらこんなにも大きくなっていたなんて。シェイア様、こちらこそお世話をさせていただきありがとうございます」
 と、お辞儀をしてから顔を上げた。
「いってらっしゃいませ、シェイア様」
 僕は笑って返す。
「うん。いってきます」

 僕は家族三人で馬車に乗り込み5年前の道をまた通る。
 あの時は本当に悲しい思いだった。でも今は誰も悲しんでなんかない。
「いい?シェイア、寮生活になるんだから、身だしなみはしっかりね」
「シェイアは1人でもできるさ。もう俺たちの手が届かないところで生活できるようになるんだから」
 あの時一瞬と感じていた道が少し長く感じた。
 馬車を降りると、あの時と同じようにたくさんの馬車、たくさんの同い年とも思える子達が門の中へ入ってゆく。そしてみんな門の前で家族に別れを告げている。
 僕はできるだけゆっくり歩いた。ゆっくり、ゆっくり。そこで父さんと母さんと何気ない会話をして、いつもと変わらない日常の一片を過ごす。
気づくと目の前には門があった。こんなにもあっという間に過ぎる物だったっけ。
「シェイア、大丈夫?父さんと母さん、見えなくなるまでここにいるから」
「なんか、不思議だなぁって思って」
僕は父さんと母さんの方を向いた。
「馬車に乗ってる時はあんなに早く行ってみたいって思ってたのに、来てみたら急に行きたくなくなるなんて」
 僕は下を向いた。本当は泣かないつもりだったけど、やっぱりダメだ。
 僕は顔を上げた。
「父さん、母さん。いってきます」
 その時の声は震えていて。涙で全然顔が見えなかったけど、それでも父さんと母さんも僕と同じ気持ちなんだなってわかった。
 父さんと母さんは声を揃えて言った。
「いってらっしゃい」
 僕は涙を拭いて門の中へ片足を踏み入れた。これでもう僕はレイザレル国際魔法学院の生徒だ。
 一気に城へ向けて走る。また父さんと母さんの顔を見たら泣きそうだから。
 城の目の前まで走り、入り口で止まった。
 僕は振り返って門の外にいる父さんと母さんに大きく手を振った。
 すると母さんは小さく振り返し、父さんは両手で大きく振ってくれた。
 僕は手を振りながら小さく呟いた。
「育ててくれて、ありがとうございます」
 そのまま城の中へと入っていった。
 
 
 
 
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