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プロローグ

来る者と待つ者

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 ある街に存在する館の中で1人、窓から見える街の光景を静かに見据える
者がいた。
 彼はこの街の領主であるが、その姿は人間と異なる容姿を持つ『異人』と呼ばれる存在であった。

 そんな領主の耳へと聞こえてきたのは部屋の扉を叩く音。
 心当たりから、その向こうにいる相手を察した領主が扉の方へと声を掛ける。

「君たちだね、入っておいで」
「はい、失礼致します」

 領主の声を聞いて部屋へと入って来たのは、それぞれ男性と女性の身なりをした
2人の異人。
 水晶によって人の形を模したような姿を持つその存在は、領主が信頼を置いている召使いたちであった。

 双方とも領主の様子を伺うような態度を見せると、女性の方が心配そうな声で
領主へと問い掛ける。
「お疲れのようですね……」
「この街を管理する者となるとやるべき事が多いね……しかし明日も大事な日だから気を緩める訳にはいかないよ」

 領主は疲労した顔を浮かべつつも何かを期待をするような態度で答えると、手に
持っていた2枚の用紙を召使いたちへと差し出した。 
 その姿ゆえに表情による思考は読めないものの、受け取った用紙を真剣な佇まいで見据える2人を見て、領主は嬉しそうな声を上げる。

「誰かがここを異人の街なんて呼ぶものだから人間が寄り付かなくなって
しまっていたけれど、ついにこの街も異人だけの街では無くなるのさ」
 用紙に視線を向けていた召使いたちは領主へと向き直ると、明るい態度で
それぞれの言葉を返す。

「これから更に賑やかな事になりそうですね」
「この方々の件は僕たちにお任せ下さい」

「助かるよ、段取りについても君たちに一任してしまっても良いのかな?」
 領主の問いに2人は了承の声を重ねると、穏やかながらも何処か圧の
ある口調で再び言葉を合わせる。

「それと、今のうちにお休みなってはいかがでしょう?」
「ああ、ありがとう……そうさせてもらうよ」

 召使いたちの重なった声に領主が苦い表情で答えると、2人は深く頭を
下げて静かに領主の部屋から退出した。
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