穢れた世界に終焉を

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閑話 にぎやかしいのは良いことよ

ヒメが抱えた赤子

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「おや、子供がいたなんて知りませんでした。誰に孕まされた子ですか?」

 受付嬢のその言葉に激震が走る。
 平然と、顔色一つ言ってのけたことで余計にそのセリフに重みが増してしまっていた。

「どうして最初から私以外の子である可能性を排除しているのだ」

 表情の変化ではなく声量で勝負した受付嬢は正解だった。
 流石のヒメでさえ周囲の騒めきに顔の熱さを自覚してしまう。

 抗議の意を込めたセリフが多少なりとも早口になってしまったのは、仕方がなかった。

「へいへーい! 愛しの」

「うるさい」

「ぶへぇっ!?」

 クルクルとご機嫌にスピンを決めながら迫ってきた、フットワーク軽そうな男が一人撃沈。
 いつものことなのか。いつものことなのだろう慣れた手つきで裏拳をお見舞いして一撃ノックダウンさせるヒメ。

「救護班、救護班ー! 期待はしていなかったが斥候がやられっちまったー!」

「えっほ、えっほ」

「我らはプロよ。人助けのな~♪」

「ぴーぽーぴーぽー」

 一名子供が混じっていたことにツッコミを入れる者は誰一人としておらず。
 『綺麗に入ったぜ、でも綺麗なのは顔だけにしとけよな……』なんて戯言を遺して、雑に担架へと乗せられたノックアウト男が緊急搬送されていく。

「おいーっす」

「アオ貴様ちょっと話がある」

「は?」

 常に、というほどいつも一緒に行動しているわけではないが。
 疑うとするならば誰? という話になったら真っ先に思い浮かぶであろう人物の一人。

 一般モブに比べたら遥かに親しい間柄であろうアオに事情聴取がなされるのは当然の流れであった。

「てめぇ仮に本当だったら覚悟しとけ」

「え、ん? なんのことだよ?」

 状況把握なんてできるはずもない。
 扉を開けた途端にアオに待っていた運命は拘束そして連行。

「あーれー! お助けを―!?」

「ハーレーぶわぁんぶわぁん!!」

「ぶぅん! ぶおーん!」

 屈強な筋肉を持った大男二人に挟まれたアオが奥の部屋へと入っていき。
 その後ろにまたもや小さな子供たちが親鳥を追いかける雛みたく列を成してついていく。

「で? 何の用?」

「いつか痛い目見るぞ貴様」

「やーん、怖ーい」

 これでもかと演技たっぷりに身体をくねくねさせるのは受付嬢。
 テメェで床の掃除してやるからその動き止めるなよ? と、その言葉を口から出さなかったヒメを褒めてあげたい。

「テメェで床の掃除してやるからその動き止めるなよ?」

「本音、漏れてるわよ」

 狙ったわけでもなくマジで流れ出てしまった言葉に自身でも驚くヒメに呆れる受付嬢であった。
 
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