リアルBL!不安な俺の恋愛ハードルート

Kinon

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1-1 転校生がやってきた

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柏葉かしわばかいです」

 教卓横に立つ転校生が名乗った。

 身長175センチくらいの痩せ体型。
 前長めの薄茶の髪は柔らかそうで、毛先がかかる耳の左側だけに銀のピアス。地なのかカラコンなのか、瞳の色も薄茶色。
 けっこう美形なのに万人受けする顔に見えないのは、どこか荒んだアウトローチックな雰囲気を持ってるせいかな。

 この男……柏葉を連れた担任の小泉が教室の引き戸を開けた瞬間から続く沈黙は、まだ破られない。
 みんな、目の前の新たなクラスメイトの次の言葉を待ってるからだ。
 俺、早瀬はやせ將梧そうごも。ほかのヤツらと一緒に、柏葉が口を開くのを待つ。



 普通あるじゃん?
 『○○高校から来ました』とか『趣味は○△です』とか、そういうの。
 少なくとも、『よろしくお願いします』くらい言うと思うんだよね。
 なのに。
 柏葉の自己紹介は名前だけらしい。



 シンとする中、柏葉が隣にいる小泉を見やる。

「何だ。それで終わりか?」

「はい」

「愛想ねぇなぁ。ま、いいか。じゃあ、席は……」

 小泉の声をかき消す勢いで、クラス中からコメントが舞う。



「おー! これは当たりじゃね?」
「女子部でナンパする戦力になるぜ」
「ちょっと怖そうだけど、僕好みー」
「俺もイケる。いい声できそう」
「そっちの獲物にすんな。女好きの顔してんだろ」
「勝手に決めないでよ。こーゆータイプはこっちにもメチャ需要あるんだから」
「お前らに供給すんのはもったいねぇ。俺らが使わせてもらう」



 はぁ……溜息出るわ。

 本人の前で、本人の意向ガン無視の発言って。うちのクラスの印象悪くなるだろ。
 転校生にはやさしく親切にしなさいって、小学校で教わらなかったのか?

 気持ちはわかるよ、俺も。
 でもさ。
 そんなあからさまに舌なめずりするような目で見られまくったら、幼気いたいけな転校生が引いちゃうよ?
 同性愛者ゲイでも両性愛者バイでも異性愛者ノンケでも。



「早瀬!」

 延々と続く初対面の人間に対する失礼アンド下品なやり取りに負けない音量で、小泉が俺を呼んだ。

「柏葉頼むぞ。お前が責任持っていろいろ説明しとけ」

「は!? 何で俺? 今忙しいんですよね。誰かほかのヤツに……」

「委員長だろ? それに、お前なら安全だ」

 う……反論出来ないし、拒否する理由も咄嗟とっさには見つからない。

「ま、すぐに馴染むだろうが一応な。柏葉、あそこの空いてる席座れ」

 小泉が指差したのは俺の隣。空席の定番、窓際の一番後ろだ。
 クラス全員の視線と雑音を浴びながら、柏葉は無言で示された席に向かう。

「いーなー委員長。役得だよね。僕がぜーんぶやさしく教えてあげるのに」

 廊下側の後ろからひときわ大きな声を上げるのは、新庄しんじょうさとる。整った小さな顔に二重の大きな目。長めのサラサラ茶髪を揺らす、この2-Bの半アイドルだ。
 委員長としては、転校生の面倒を見る役を新庄に譲るのは問題なし。むしろ、こっちからお願いしたいくらい。

 でもなぁ…さっき小泉にはああ言ったけど、よく考えたら。俺個人としてはちょっとオイシイんだよね、この展開。



 何故かっていうと。
 実は俺、隠れ腐男子だからさ。

 学園モノの王道BLと違って。現実の転校生は、カツラや眼鏡で変装してない。
 一見総受けキャラっぽいけど、なんか迫力ある感じもするから攻めもありかもなーなんて……つい腐男子の目で見ちゃう俺。

 そもそも。
 舞台となるこの学校のノリは、BL王道学園とは違うし。
 2次元のBLワールドは好きだけど。現実のリアルBLを見て楽しむ嗜好は、ほとんどないはずなのに。
 
 それでも。
 リアル高校生男子のイチャラブ。しかも、転校生の攻防を間近で眺めるのは悪くない。

 まぁ、それも…柏葉がもともとソッチ系、もしくは今後ソッチ系に染められた場合に限られるけどね。



 自分の席に腰を落ち着けた柏葉が、横を向いて俺を見る。
 バッチリと目が合った。

「よろしく……早瀬將梧だ。わからないことがあったら、何でも聞いてくれ」

 黙ったまま見つめ合う状態で4秒経ったところで、自分から話しかけた。
 なんか悔しいけど、耐えられなくて。

「よろしく……」

 そう言って。柏葉が唇の端を片側だけ上げる。
 マンガで、口の横に手書きで『ニヤリ』ってあるような表情。
 瞳は笑ってないの。悪巧みしてるヤツの顔って感じ。

 ちょっと眉を寄せると。

「委員長さん」

 明らかに敬意のない口調で続けた柏葉の瞳が、今は笑ってる。



 コイツ……かなり曲者なんじゃないの!?



 口を開くも言葉は出ない俺から視線を外し、柏葉が前を向いた。
 その横顔が、笑いをこらえてるように見えるのは俺の気のせい……じゃないね。たぶん。

「始めるぞー。中間近いから集中しろよ」

 小泉の言葉でピタッとお喋りが止まるあたり、さすが進学校。みんな勉強好きだよな。

 かくいう俺も頭を切り替えて、黒板に書かれる数式を睨んだ。



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