リアルBL!不安な俺の恋愛ハードルート

Kinon

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4-1 5限目はサボりで

 キーン……コーン……カーン……コーン……。

 あ……予鈴……昼休みもう終わり……か。
 5限は理科で選択科目。

 鐘が鳴り止んだ。
 顔を上げようと動かした俺の頭を、かいがグッと引き寄せる。

「まだ委員長の顔に戻れねぇだろ? のんびりしてこーぜ。あ。一緒に遅れてくのマズいなら、俺だけ先行ったほうがいーの?」

「次……選択、お前……理科、何取ってる?」

 涙はもうほとんど止まったけど、ヒックヒックとしゃくりあげるのは止まらない。

 みっともねーな俺。
 そう思うよ本気で。でも嫌な気はしてない。
 開き直ったら強い、は真理か? この場合は少し違うけど。

「理科はー生物かな」

「俺は、物理だから……教室、誰もいなくなるし……大丈夫」

「そー? めんどくせぇから行かなくてもいーや俺」

「転校初日、から……サボるなよ」

 凱の胸元でくぐもった笑いを上げた俺は。知らない間に、目の前のシャツをギュッと掴んでることに気づいた。

 うわ……しがみついてんじゃん俺! これはさすがに恥ずかしいわ……。
 でも離すと動かすとこの距離だと今さらだと、ただ触ってるみたくならない?……と。要らん心配するくらいに気分が回復してきたところで。

「お前、ストレス多いの? 10円ハゲ出来てる」

「え!?」

 ガバっと顔を上げた。

「嘘だろ!? どのへん……!?」

 両手で頭を撫でまわす俺を見て、凱がニコリと口角を上げる。

「あー悪い、見間違い。つーか嘘。ごめんね」

 口を開けたまま、凱がイスに戻って窓のほうを向いて座るのを見つめた。



 嘘って……俺のため、だよな。
 泣いた俺が、決まり悪い思いをしないで顔を上げられるように……。
 こういうやさしさって、やろうとして出せるもんじゃない。
 ここは素直に尊敬する。

 目の周りを袖口で拭いて、気持ちを落ち着けた。
 凱の隣に自分のイスを持っていってそっと置く。



「凱……」

「んー?」

「ありがとな。お前が泣きたいときは、俺が慰めるよ」

「おー。じゃあ、そん時はセックスの相手して」

 は!?
 あー……冗談ね。あんま面白くないよ?

 イスに腰かける動作を一瞬静止してから完了させた。

「そういう冗談、クラスのヤツらには言うなよ。通じないからな」

 こっちに身体ごと向けた凱が眉を寄せる。

「本気だけど」

 え!?
 ちょっ本気で言ったの……!?
 おかしいな……数分前にちょこっと俺を感動させたアナタは幻でしたか?

「お前は、その……セックスで慰められるの?」

「そーね。自己崩壊しそーなくらいヤバかった時、見かねた友達が俺とやって落ち着かせてくれたの。かなり助かったからさ」

「……その友達、お前とやりたかっただけじゃないのか?」

「さあねー。俺は信頼出来んのそいつくらいで、そのせいかもしんねぇけど。慰めてほしいって頼まれてセックスすることもわりとあったからさー。みんなそーかと思って」

 いやいや! 偏ってるよその認識。
 少なくとも俺は違うぞ。間違っても、勝手に慰めようとするなよ!?

「みんなそうとは限らないから気をつけろ。そもそも頼まれてするって……お前さぁ、どういう基準でセックスするわけ?」

 初対面から2時間で性的指向について話した上、胸を借りて泣きじゃくる自分を晒した俺は。セックスの話題だろうが何だろうが平気でプライベートな領域に立ち入るくらい、凱に対して遠慮がなくなってる。

 いや、だって。
 たぶん、凱のほうは最初から遠慮なんかしてないじゃん?
 だから問題なし……と正当化。

「んーどうだろ。頼まれて嫌じゃねぇ相手で理由も納得いく場合とか、俺のほしい情報や何かの代わりに取引でとか。男にやらせんのは疲れるからいつでもは無理。突っ込むならいつでもいーかなー」

 思い返すように目線を斜め上に話す凱は、俺の問いにちゃんと答えてるんだろう。

「あと、自分からしたいって思うのは……すごくつらい時とか苦しい時とか? そんな感じ」



 あ……う……遠慮すべきでしたね。
 いろいろ引っかかり過ぎてのみ込めない。
 特に……取引って何? 何かの代償にセックスするの?
 凱くん……それって売春ぽくない?

 今までどういう生き方してきたんだろこの子。心配になるわ。



「凱。ほしいモノと引き換えにって、身体売ってるようなもんだぞ? 悪いことは言わない。それはやめとけ、な?」

 急に、援交する未成年をやさしくさとす中年刑事みたいな口調で話す俺。

「……そんなんじゃねぇよ」

 凱のその一言も、突然人が変わったように怒気と凄みのある声音で。雰囲気も顔つきも、硬く冷たく闇よりも暗く怖い……。
 ビクッとたじろいだ。

 それを見て数回瞬いた目を再び俺に向け、凱が表情を和らげる。

「金で支払わせてくんねぇっつーか、相手の条件がセックスの場合だけ。金積まれても身体は売らねぇよ。大丈夫」

 ニヤッと笑う凱の瞳は悪戯っぽいけど、今さっき見た冷たい鋭さはない。

 あれ?
 闇をまとったあの男はいったい誰? どこ消えた?
 けっこう怖かったんだけど……!
 気のせいってことにしていいなら、そうしよう。



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