リアルBL!不安な俺の恋愛ハードルート

Kinon

文字の大きさ
20 / 246

9-1 電車に揺られて

 深音みおの家まで電車で15分。そこから歩いて10分ほど。
 共働きの両親が帰るのは早くても夜8時頃で一人っ子の深音の家には、腐った仲間たちの会合でよくお邪魔させてもらってる。
 初めてのセックスをしたのも深音の部屋だ。



 電車の中で、睦乃ちかの先輩の話をした。
 よく聞いてみると、実は何でもありませんでした的な可能性もありそうで。

 たとえば。
 彼女が一緒にホテルに入ったのは、男に見えたけど実は女だった。
 ホテルに一緒に入ったからって恋人とは限らない。
 後輩の見間違い。
 後輩のでっち上げ。
 などなど。

 まぁ、睦乃先輩の真実はどうあれ。実際に深音が思い悩んで苦しんでるのが、俺にとって重要なだけ。

 そもそも片思いの状態で恋人じゃないんだし。
 失恋は珍しい事象じゃないし。
 時間が経てば今の苦しみは消え、別の人間に恋心を抱いてるっていうのが相場。
 なんてね。
 そう冷めたとこから見れるなら、今こうして電車に揺られてないよな。



「先輩がバイだったとしても、それは別にいいの。ショックだったのはやっぱり……ホテルに行くような関係の相手がいたってこと。今。現在進行形で」

「いや、でもそれ言ったらお前も……」

「わかってるよ。私も將梧そうごとセックスしたし、今からするし。もとはと言えば先輩の提案だけど、決めたのは自分だってことも」

 俺が2度目のセックスに合意してからは、いつもの調子を取り戻した深音。

 ホッともしてるけどさ。も少し音量下げてくれ。ここ電車内。貸し切りじゃないからな?

「百歩譲って、身体だけの関係の相手だとしても。先輩に誰かが触ってると思うと嫌なの。想像しただけで嫌。私が文句言える立場じゃないけど、嫌なものは嫌」

 わー駄々っ子だ。御坂と同じこと言ってる。

「子どもの理屈だな」

「そうよ。悪い? 恋なんてね、ものすごーぐ自己中で自分勝手な感情との闘いなんだから」

「恋かぁ……」

「で、負けるの。負けてもやめられないの。だからこそつらい。ちょっとのことで世界が終わるくらい。苦しくてバラバラになりそう! 慰めて」

 深音が俺の肩に頭を乗せる。



 どうしよう?
 さっきまで。他者の存在があってはじめて己を認識し得る、みたいな哲学的なこと言ってたのに。
 人格壊れてきてるよ? 深音ちゃん。

 あーどんどん自信なくなってきた。



「ごめんね。強引にして。將梧がやさしいのにつけ込んでるの私。これで愛想尽かしてもいいから……今日だけ甘やかして」

「尽かさないから安心しろ。引き受けたのは、俺の意思だ」

「ありがと。同志だもんね。將梧そうごは」



 俺が委員長の仮面をつける理由を、紗羅と深音以外は誰も知らない。俺が誰にも言ってない。それは誰にも気づかれないからで。
 あ。今日までは……か。

 かいには会ってすぐに見抜かれて。おまけにその理由まで話した俺……2時間前は存在すら知らない人間にだよ?
 だけど、素の自分をさらけ出すのに抵抗を感じなかった。
 理屈じゃない信頼感みたいなものを、凱はくれたから。

 深音には、偽装交際を承諾する時に自分から話した。
 まぁ……その前から俺が女にあんまり興味がないのは知られてたけどさ。

 女にも男にも欲情しないこと。
 自分の性指向がわからなくて戸惑ってること。
 だから、俺も異性とのセックスを試したい。
 深音が一方的に俺を実験台として利用するわけじゃなく、お互いにメリットがある対等な関係だからって。



「將梧はまだ好きな人いないの?」

「んー……いない」

「気になる人は?」

「いないかな」

「嘘!」

 深音が勢いよく頭を上げる。

「急に何?」

「自分で気づいてないの?」

「だから何にだよ」

 見つめた深音の瞳が言ってる。

 ごまかさなくてもいいよ。
 わかってるくせに……って。

「あの怖そうな見た目の將梧の幼馴染み……今日一緒にいたでしょ?」

「涼弥だろ。いたよ」

 逸らせない俺の瞳。何も語ってないことを祈るしかない。

「そう、涼弥くん。私が来た時……見つめ合ってた」

「息止めてたんだよ……」

 ほとんど声に出さずに呟いた。

「え……?」

「何でもない。それで?」

「あの人のこと、切ない瞳で見てた。ものすごく。それ見て自分も切なくなるくらい」

 深音の眼差しが俺の瞳をまっすぐに射る。



 降参……だ。



 目を閉じたちょうどその時、電車が目的地に着いた。



感想 5

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。