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17-5 半年前のレイプ未遂
眉をひそめる凱に、話を続ける。
「美術部でお世話になってた先輩で、そんな素振り全然なくてさ。信頼してたから、困惑が先にきて……抵抗する間もなくベッドに縛りつけられてた」
下を向いて。一回ギュッと目をつぶってから、顔を上げる。
「いじられて指突っ込まれて、ガチガチのペニスあてられて……あーもうどうにもならない。俺、やられるんだって観念したよ」
微妙に外してた視線を凱に合わせた。
俺を見る凱の瞳は、揺れもせず憂いもなく強い。逸らされないその瞳に安心する。
大丈夫。コイツになら全部話せる。
「この時の恐怖と嫌悪感は、特にトラウマになったりはしてない。未遂だったし、病んだら負けだと思ったし。まぁ、男とセックス出来るかって不安の……理由のひとつにはなってると思うけどね」
「うん」
「もし、あのままレイプされてたらって考えることはあったよ。男にやられたからって死ぬわけじゃないじゃん? 身体は。でも、心が無事じゃないと自分じゃなくなるのかな……とか」
「心がぶっ壊れても自分じゃなくなれねぇからさ。お前が無事でよかった。心も」
凱は……壊れたことがあるのか?
壊れても自分をなくせない苦しさを知ってるのか……。
だから、俺が無事でよかったって言ってくれるのか。
この男の本質が、強くてやさしいから。
独特な思考を持っていようと。
この先どんな負の面を見ようと。
俺はコイツの味方でいる。
そう思えるヤツっているよな。
不思議なのは、ほんとに恋愛感情じゃなこと。
涼弥に感じるドキドキと好きだって気持ちとは違う。
強いていえば……沙羅に感じるものに近いかな?
信頼と親愛の情。
凱に対して、それが確かに俺の中にある。
ああ……だからか。
だから、ろくに知らないうちから、俺のガードは勝手に下がって。素の自分を晒すのに、抵抗がなくなっちゃてたのか。
きっと、これも第六感の成せる業。
感謝だ。
「うん。ありがとな」
俺を見つめる凱の瞳に、暗い光が宿る。
「ムリヤリやるヤツは許せねぇよ。お前やろうとした最低男、まだ学園にいんの? ブチのめしたい」
「もう、ブチのめされてる。涼弥に」
凱と目を合わせたまま、薄く笑った。
「間一髪で俺を助けにドア蹴破って入って来たの、あいつなんだ」
「キレただろ?」
唇の端を上げる凱。瞳は、笑ってない。
「そいつ、無傷で済ませてねぇよな?」
「鼻の軟骨と前歯2本。あとは瞼の上が切れたくらい。一緒にもう2人来ててさ。殴り倒した先輩に馬乗りになった涼弥を、どうにか引き離したから」
「なんで止めんだよ」
「机にあったシャーペン掴んで、突き刺そうとして……さすがにマズいだろ」
「自業自得じゃん?」
「俺のせいで涼弥が責められるのは嫌だ」
反論される前に続ける。
「先輩に非があっても。涼弥が傷つくのは、嫌なんだ」
「お前助けられたんだから、満足じゃねぇの」
「そうかもしれなくても、だよ。幸い修了式の日の午後で。寮も人少なかったおかげで、大事にならずに済んだ。結局、先輩は自分が悪いのわかってるから、涼弥に殴られたケガを学校に報告しなかったしね」
「保身だろ」
「でも、ありがたかった。もともと新学期から転校する予定だったから、先輩はもう学園にいない」
「それで終わり?」
凱がそう聞くのは、この話がまだ終わってないって……俺の顔に出てるからか。
「表向きっていうか、レイプ未遂そのものはね。うちのクラスで知ってるのは紫道だけだし……川北紫道はLHRで一緒に教壇にいたヤツ。デカくて強面のほう」
「あーあのマジメそうな」
「うん。紫道は寮生で、あの日も寮にいて……涼弥と助けに来てくれたうちのひとり。誰かに話したり、俺に何か聞いたりとかしないでそっとしておいてくれた。いいヤツなんだ」
ここで深呼吸した。
「涼弥が俺を心配して、よく知らない男が近づくの警戒するの……この時からだよ。もう油断しない、俺は平気って言ってあるんだけどさ」
「わかった」
「あのあと……顔面血だらけの先輩連れて2人が部屋出てって、涼弥が残った。俺、猿ぐつわされて縛られたまんまだったから、それ解いて……」
もう一度。
ゆっくり息を吸って吐く。
「將梧」
ブレてた目の焦点を、凱に合わせ直した。
「何あったか、俺に話していーの?」
「俺が……聞いてほしいんだ」
「うん」
「ギリギリで助けられたのわかったけど俺、まだ気が動転してて。大丈夫かって聞かれても、まともに返事出来なくて。そしたら、涼弥に抱きしめられた。落ち着かせようとしたんだと思う」
「そーかもな」
「お前も昨日してくれたじゃん? 俺が泣いてる時。ほかに理由ないだろ?」
「まーね。俺はねぇよ」
「涼弥もないはず……少なくとも、あの時はないと思った。だけど、あいつが腕緩めて、身体離れたあと……」
自分の眉間に皺が寄るのがわかった。
「キスしたんだ」
「美術部でお世話になってた先輩で、そんな素振り全然なくてさ。信頼してたから、困惑が先にきて……抵抗する間もなくベッドに縛りつけられてた」
下を向いて。一回ギュッと目をつぶってから、顔を上げる。
「いじられて指突っ込まれて、ガチガチのペニスあてられて……あーもうどうにもならない。俺、やられるんだって観念したよ」
微妙に外してた視線を凱に合わせた。
俺を見る凱の瞳は、揺れもせず憂いもなく強い。逸らされないその瞳に安心する。
大丈夫。コイツになら全部話せる。
「この時の恐怖と嫌悪感は、特にトラウマになったりはしてない。未遂だったし、病んだら負けだと思ったし。まぁ、男とセックス出来るかって不安の……理由のひとつにはなってると思うけどね」
「うん」
「もし、あのままレイプされてたらって考えることはあったよ。男にやられたからって死ぬわけじゃないじゃん? 身体は。でも、心が無事じゃないと自分じゃなくなるのかな……とか」
「心がぶっ壊れても自分じゃなくなれねぇからさ。お前が無事でよかった。心も」
凱は……壊れたことがあるのか?
壊れても自分をなくせない苦しさを知ってるのか……。
だから、俺が無事でよかったって言ってくれるのか。
この男の本質が、強くてやさしいから。
独特な思考を持っていようと。
この先どんな負の面を見ようと。
俺はコイツの味方でいる。
そう思えるヤツっているよな。
不思議なのは、ほんとに恋愛感情じゃなこと。
涼弥に感じるドキドキと好きだって気持ちとは違う。
強いていえば……沙羅に感じるものに近いかな?
信頼と親愛の情。
凱に対して、それが確かに俺の中にある。
ああ……だからか。
だから、ろくに知らないうちから、俺のガードは勝手に下がって。素の自分を晒すのに、抵抗がなくなっちゃてたのか。
きっと、これも第六感の成せる業。
感謝だ。
「うん。ありがとな」
俺を見つめる凱の瞳に、暗い光が宿る。
「ムリヤリやるヤツは許せねぇよ。お前やろうとした最低男、まだ学園にいんの? ブチのめしたい」
「もう、ブチのめされてる。涼弥に」
凱と目を合わせたまま、薄く笑った。
「間一髪で俺を助けにドア蹴破って入って来たの、あいつなんだ」
「キレただろ?」
唇の端を上げる凱。瞳は、笑ってない。
「そいつ、無傷で済ませてねぇよな?」
「鼻の軟骨と前歯2本。あとは瞼の上が切れたくらい。一緒にもう2人来ててさ。殴り倒した先輩に馬乗りになった涼弥を、どうにか引き離したから」
「なんで止めんだよ」
「机にあったシャーペン掴んで、突き刺そうとして……さすがにマズいだろ」
「自業自得じゃん?」
「俺のせいで涼弥が責められるのは嫌だ」
反論される前に続ける。
「先輩に非があっても。涼弥が傷つくのは、嫌なんだ」
「お前助けられたんだから、満足じゃねぇの」
「そうかもしれなくても、だよ。幸い修了式の日の午後で。寮も人少なかったおかげで、大事にならずに済んだ。結局、先輩は自分が悪いのわかってるから、涼弥に殴られたケガを学校に報告しなかったしね」
「保身だろ」
「でも、ありがたかった。もともと新学期から転校する予定だったから、先輩はもう学園にいない」
「それで終わり?」
凱がそう聞くのは、この話がまだ終わってないって……俺の顔に出てるからか。
「表向きっていうか、レイプ未遂そのものはね。うちのクラスで知ってるのは紫道だけだし……川北紫道はLHRで一緒に教壇にいたヤツ。デカくて強面のほう」
「あーあのマジメそうな」
「うん。紫道は寮生で、あの日も寮にいて……涼弥と助けに来てくれたうちのひとり。誰かに話したり、俺に何か聞いたりとかしないでそっとしておいてくれた。いいヤツなんだ」
ここで深呼吸した。
「涼弥が俺を心配して、よく知らない男が近づくの警戒するの……この時からだよ。もう油断しない、俺は平気って言ってあるんだけどさ」
「わかった」
「あのあと……顔面血だらけの先輩連れて2人が部屋出てって、涼弥が残った。俺、猿ぐつわされて縛られたまんまだったから、それ解いて……」
もう一度。
ゆっくり息を吸って吐く。
「將梧」
ブレてた目の焦点を、凱に合わせ直した。
「何あったか、俺に話していーの?」
「俺が……聞いてほしいんだ」
「うん」
「ギリギリで助けられたのわかったけど俺、まだ気が動転してて。大丈夫かって聞かれても、まともに返事出来なくて。そしたら、涼弥に抱きしめられた。落ち着かせようとしたんだと思う」
「そーかもな」
「お前も昨日してくれたじゃん? 俺が泣いてる時。ほかに理由ないだろ?」
「まーね。俺はねぇよ」
「涼弥もないはず……少なくとも、あの時はないと思った。だけど、あいつが腕緩めて、身体離れたあと……」
自分の眉間に皺が寄るのがわかった。
「キスしたんだ」
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