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23-3 大丈夫になった
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微かに首を傾げた凱が、方眉を上げる。
「疑われて白状すんじゃなく自分から?」
「そう。俺が頼んでやったって。もし、そうなってあいつに聞かれたら、お前も本当のこと言って」
「必要んなることあんの?」
「ある。言ったろ? 涼弥の心境によっては、俺にも男との経験があったほうがいいって」
「あー……楽になるってやつ? 男とやったことあんのお前に知られてるって、あいつ知ってんの?」
「偶然、話してるの聞いちゃったんだ。その相手と涼弥が。で、あいつ焦っちゃってたから、俺は大丈夫って言っといたのに……避けられてる感じ」
大丈夫って言った経緯と理由を、かいつまんで話した。
「で、お前が今から悠と……その相手とやるとしても、俺をそういう目で見てるとしても大丈夫って言った」
凱が眉を寄せる。
「そいつとやっても大丈夫っつーのは、よけいじゃねぇの」
「うん。それは嘘。好きだってバレたくなかったから。それに、俺のほうは……お前とやる予定だったしさ」
「やっぱ後ろめたいの?」
溜息をひとつついて、凱を見る。
「今日までは少し、後ろめたさはあったよ。だから、涼弥に知られないようにしようって。でも、今は……知られてもかまわない」
まっすぐ。凱を見つめる。
「後悔してないからほんとに。ただ、涼弥がお前に悪感情向けるかもしれないことだけは、ごめん。出来る限り俺んとこで止める」
「それは仕方ねぇだろ。俺はさーお前にオッケーした時点で、涼弥に殴られる覚悟くらいしてるぜ。お前がいーと思うよーにしろよ」
凱の瞳が邪気なく笑う。
「あ。本心は早く伝えてあげてねー。大丈夫って言われていろいろ混乱してんじゃねぇの? 避けてんのは、どーしていーかわかんねぇからだろ」
「混乱?」
「俺にそーゆー目で見られてもいーってことは、俺とそーゆーことする可能性ゼロじゃねぇのか? ノンケなのに? 彼女いんのに? だから考えねぇよーにしてたのに? 考えていーのか? 期待しちゃっていーのか?」
「いいよ。そのために言ったんだし……って、今は自信持って言える」
「一度考えたら消えねぇからな。あからさまに期待の目でお前のこと見ちゃってから早とちりってなんの、怖いんだろ。お前が思ってるよりあいつ、鈍いぜ」
「そうかもしれないけど……」
「ハッキリ好きだって言えよ。ずっとお預けじゃ、あんまりじゃん?」
お預けって……。
気持ちだけじゃないよね?
「あー!」
テーブルに突っ伏した。
「どーした? 疲れたの?」
「……涼弥とセックスするの怖い」
「出来たんじゃねぇの? 心構え」
「出来たよ。挿れられるのが怖いんじゃない」
「まだ何かあんの?」
顔を上げた。
のんきな凱の笑顔に癒される。
「自分がどうなっちゃうかわかんなくて。お前みたいにうまく出来ないよ俺、きっと」
「うまくやろーとしてやってねぇよ。信用する相手とは思いっきりやんの。お前もそーすれば? 俺がすげー気持ちよがってんの見て興奮しただろ?」
「うん……」
「うまいとかじゃねぇの。お前がいーなら、涼弥はそんだけで十分満足。お前のその『怖い』は、ちんこ勃てばどっかいくから大丈夫」
気が……抜ける。楽になるなマジで。
「お前に言われると、ほんとその気になる。もっと言って」
「涼弥とやんのは怖くねぇよ。ワクワクして楽しみにしといて大丈夫」
「ありがと……大丈夫になった」
目を合わせて笑ったところで。
「凱」
ドアにノックと烈の声。
「入っていーよ」
凱が答えると、烈が部屋に入ってきた。
「ショウが、將梧も夕飯食べる?って」
「いや。それは……もう帰るよ俺。こんな時間だし」
お断りすると。
「なら、綾さんが駅まで送るって。バスあんまりないし、もう遅いから」
「え……? それは……」
助けを求めて凱を見る。
「原チャリでバス停行くつもりだから、嫌なら断っていーぜ」
俺が決めるの……?
てことは……凱は綾さんを信用してるのか?
「あの人、お前を襲ったりしねぇよ。そこは安心して」
「それはよかった……」
烈を見る。
あー似てるな二人。でも、烈の瞳には含みがあるような……。
「じゃあ、お世話になろう……かな」
凱に視線を戻す。
「お前、腰痛いんだろ? ゆっくり休めよ。明日また、学校で」
「やさしーね」
唇の端を上げる凱に、笑みを返す。
「やさしいのはお前だろ。楽になった。ありがとな」
腰を上げて息をついた。凱も立ち上がる。
「俺も下まで行く」
凱と烈と3人で階段を下りて玄関ホールに着くと、廊下の向こうからバタバタと人がやって来た。
「凱! 挨拶に寄るんじゃなかったの?」
エプロン姿の元気なおばさんだ。
まぁ、おばさんとしてはまだ若いけど、うちの母親くらい。凱と烈の母親で間違いないな。
「こんばんは。遅くまでお邪魔してすみませんでした。クラスメイトの早瀬將梧です。凱くんにはお世話になっています」
礼儀正しく頭を下げると。目の前で足を止めたその人が満面の笑みを浮かべた。
「かしこまらなくていいわよ。お世話になってるのは凱のほうでしょう? 仲良くしてくれてありがとうね。この子の友達ってほとんど会ったことなくて……嬉しいな。またゆっくり遊びに来て」
「はい……こちらこそ、ありがとうございます」
「気をつけて帰ってね。おうちの方によろしく」
手を振って、凱の母親は再びバタバタと廊下を戻っていく。
「せわしないね。ショウは」
烈のコメントが終わらないうちに、玄関のドアが開いた。
今度は綾さんだ。
「疑われて白状すんじゃなく自分から?」
「そう。俺が頼んでやったって。もし、そうなってあいつに聞かれたら、お前も本当のこと言って」
「必要んなることあんの?」
「ある。言ったろ? 涼弥の心境によっては、俺にも男との経験があったほうがいいって」
「あー……楽になるってやつ? 男とやったことあんのお前に知られてるって、あいつ知ってんの?」
「偶然、話してるの聞いちゃったんだ。その相手と涼弥が。で、あいつ焦っちゃってたから、俺は大丈夫って言っといたのに……避けられてる感じ」
大丈夫って言った経緯と理由を、かいつまんで話した。
「で、お前が今から悠と……その相手とやるとしても、俺をそういう目で見てるとしても大丈夫って言った」
凱が眉を寄せる。
「そいつとやっても大丈夫っつーのは、よけいじゃねぇの」
「うん。それは嘘。好きだってバレたくなかったから。それに、俺のほうは……お前とやる予定だったしさ」
「やっぱ後ろめたいの?」
溜息をひとつついて、凱を見る。
「今日までは少し、後ろめたさはあったよ。だから、涼弥に知られないようにしようって。でも、今は……知られてもかまわない」
まっすぐ。凱を見つめる。
「後悔してないからほんとに。ただ、涼弥がお前に悪感情向けるかもしれないことだけは、ごめん。出来る限り俺んとこで止める」
「それは仕方ねぇだろ。俺はさーお前にオッケーした時点で、涼弥に殴られる覚悟くらいしてるぜ。お前がいーと思うよーにしろよ」
凱の瞳が邪気なく笑う。
「あ。本心は早く伝えてあげてねー。大丈夫って言われていろいろ混乱してんじゃねぇの? 避けてんのは、どーしていーかわかんねぇからだろ」
「混乱?」
「俺にそーゆー目で見られてもいーってことは、俺とそーゆーことする可能性ゼロじゃねぇのか? ノンケなのに? 彼女いんのに? だから考えねぇよーにしてたのに? 考えていーのか? 期待しちゃっていーのか?」
「いいよ。そのために言ったんだし……って、今は自信持って言える」
「一度考えたら消えねぇからな。あからさまに期待の目でお前のこと見ちゃってから早とちりってなんの、怖いんだろ。お前が思ってるよりあいつ、鈍いぜ」
「そうかもしれないけど……」
「ハッキリ好きだって言えよ。ずっとお預けじゃ、あんまりじゃん?」
お預けって……。
気持ちだけじゃないよね?
「あー!」
テーブルに突っ伏した。
「どーした? 疲れたの?」
「……涼弥とセックスするの怖い」
「出来たんじゃねぇの? 心構え」
「出来たよ。挿れられるのが怖いんじゃない」
「まだ何かあんの?」
顔を上げた。
のんきな凱の笑顔に癒される。
「自分がどうなっちゃうかわかんなくて。お前みたいにうまく出来ないよ俺、きっと」
「うまくやろーとしてやってねぇよ。信用する相手とは思いっきりやんの。お前もそーすれば? 俺がすげー気持ちよがってんの見て興奮しただろ?」
「うん……」
「うまいとかじゃねぇの。お前がいーなら、涼弥はそんだけで十分満足。お前のその『怖い』は、ちんこ勃てばどっかいくから大丈夫」
気が……抜ける。楽になるなマジで。
「お前に言われると、ほんとその気になる。もっと言って」
「涼弥とやんのは怖くねぇよ。ワクワクして楽しみにしといて大丈夫」
「ありがと……大丈夫になった」
目を合わせて笑ったところで。
「凱」
ドアにノックと烈の声。
「入っていーよ」
凱が答えると、烈が部屋に入ってきた。
「ショウが、將梧も夕飯食べる?って」
「いや。それは……もう帰るよ俺。こんな時間だし」
お断りすると。
「なら、綾さんが駅まで送るって。バスあんまりないし、もう遅いから」
「え……? それは……」
助けを求めて凱を見る。
「原チャリでバス停行くつもりだから、嫌なら断っていーぜ」
俺が決めるの……?
てことは……凱は綾さんを信用してるのか?
「あの人、お前を襲ったりしねぇよ。そこは安心して」
「それはよかった……」
烈を見る。
あー似てるな二人。でも、烈の瞳には含みがあるような……。
「じゃあ、お世話になろう……かな」
凱に視線を戻す。
「お前、腰痛いんだろ? ゆっくり休めよ。明日また、学校で」
「やさしーね」
唇の端を上げる凱に、笑みを返す。
「やさしいのはお前だろ。楽になった。ありがとな」
腰を上げて息をついた。凱も立ち上がる。
「俺も下まで行く」
凱と烈と3人で階段を下りて玄関ホールに着くと、廊下の向こうからバタバタと人がやって来た。
「凱! 挨拶に寄るんじゃなかったの?」
エプロン姿の元気なおばさんだ。
まぁ、おばさんとしてはまだ若いけど、うちの母親くらい。凱と烈の母親で間違いないな。
「こんばんは。遅くまでお邪魔してすみませんでした。クラスメイトの早瀬將梧です。凱くんにはお世話になっています」
礼儀正しく頭を下げると。目の前で足を止めたその人が満面の笑みを浮かべた。
「かしこまらなくていいわよ。お世話になってるのは凱のほうでしょう? 仲良くしてくれてありがとうね。この子の友達ってほとんど会ったことなくて……嬉しいな。またゆっくり遊びに来て」
「はい……こちらこそ、ありがとうございます」
「気をつけて帰ってね。おうちの方によろしく」
手を振って、凱の母親は再びバタバタと廊下を戻っていく。
「せわしないね。ショウは」
烈のコメントが終わらないうちに、玄関のドアが開いた。
今度は綾さんだ。
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