93 / 246
26-2 待ってろよ
鈴屋はディスガイズの情報を検索。
凱は玲史を探しに。
涼弥に電話をかけ続ける俺の横で、御坂は何やら思案中。
「やっぱり出ない」
呼び出しコール音を20回数えて。ケータイの液晶画面を乱暴にタップして、通話を切った。この3分で5回目だ。
「コールするってことは、電源はオンのまま。呼び出し音はオフでもバイブにはなってるはず。誰かが持ってるか近くにいれば気づいてるよな」
溜息をつく御坂に、俺も長い息を吐く。
「でも無視……か」
6回目の通話マークをタップ。コール音が耳に響く。
「俺からだから出ないのかも」
「知らないヤツからは、よけい出ないだろ」
プッ……。
コール音が消えた。胸が逸る。
「涼弥! 聞こえるか!? 涼弥!?」
返事はない。
だけど、確かに涼弥のケータイがある空間と繋がってる。
その証拠に、誰かの……息づかいが聞こえた。
「おい! 涼弥……じゃないのか……?」
目を合わせた御坂は、黙って俺を見守ってる。
ケータイから顔を上げた鈴屋も俺を見る。
水本か?
そう聞くか迷った数秒後。
「早瀬。これはどういうことだ? お前、何やった?」
声量と怒りを抑えた低い声が返された。
涼弥でも水本でもない。
この声……沢井だ。沢井友己……じゃあ、今……。
「沢井! 涼弥は!? いるんだろそこに……」
「ああ、いる。店ん中にな。俺は外だ。これは店入る前に持ってろって渡された。お前がしつこく鳴らすから出たんだ」
「外!? 何で……」
「涼弥に言われてんだよ! 話済むまで絶対手出すんじゃねぇ、いいっつーまで中入んなって……わけがわからねぇ」
「中に……あいつといるの、うちの学園の水本か? ほかに何人……?」
「水本ともう二人。そんなことより説明しろ! 早瀬」
目を閉じた。
店の中に涼弥がいる。水本たち3人と。外に沢井。
話をするために、涼弥は水本とその店に……少なくとも、最初は。
手を出すなってことは、涼弥はケンカする気で行ってない。水本の要求をのむつもりで……そして……。
開けた目は、ぼやけてない。
「ごめん。俺のせいだ。涼弥は……俺にとって不都合なモノを、水本が握ってると思ってる。それ潰すためにそこにいるんだ」
「はぁ!? 何であいつがそんなもん気にする必要がある。何にしろ、力づくで取り返しゃいい。あいつら3人くらい、俺と二人で十分やれんのによ」
「……データなんだ。動画の」
「何の?」
言葉に詰まる。
どうせあとでバレるなら、今言うか?
ただ……俺はかまわないけど、涼弥は……仲間には知られたくないかもしれない……って。バカだな俺。
これじゃ涼弥と同じだ。
それに。
ちゃんと言わなきゃ、どうして俺のために涼弥が…って説明にならないよね。
「俺と涼弥がキスしてる動画。今日学校で撮られた」
沈黙。
「俺も今から行く。何かあったら連絡してくれ」
返事……出来ないほど……何だ? 驚愕? 嫌悪感?
何だっていいやもう。
「沢井。もし、涼弥に声届くチャンスあったら……動画なんかどうでもいいからやり返せって伝えて」
「……わかった」
通話が切れた。
「行けんの?」
「どこで誰が相手なの?」
いつの間にか戻ってた凱に、玲史もいる。
「うん。だいたいの状況わかったから。店の中に涼弥と水本たち3人。外に仲間の沢井がいる。沢井は、涼弥とやり合えるくらい強い」
「楽勝じゃん」
凱はすでに解決したみたいにリラックス。
「じゃあ、僕は要らない? 紫道は置いてきたけど」
玲史は……何故か楽しそうだ。
「いや。お前も来て。学校終わって向こうの人数も増えるかもしれないし」
「お礼にあとで僕の遊び相手してくれる? 將梧、男もオッケーになったんでしょ?」
「高畑。それ……」
「いいよ」
御坂を遮って答える。
「SMでも何でもつき合う。だから、今は手貸して。頼む」
「へー本気なんだ」
数秒、真顔で俺を見つめて、玲史が笑った。
「冗談だよ。見返りなんか要らない」
「え……」
「期待させてごめんね。これとは別で、將梧が興味あるなら教えるから」
「教えなくていい。期待もしてない」
「残念」
わざと肩を落とす玲史を見て、笑みを浮かべる。
沢井との電話で尖ってた気持ちの先っちょが少し丸まった。
「玲史……ありがとな」
「相手、水本って言った? あのケンカ好きの3年?」
「知ってんの?」
「一度、僕が襲われかけたところに通りかかったことあってさ」
「あいつ、ノンケなんだろ? んじゃ、当然……」
凱が悪い顔で笑みを浮かべる。
「そ。襲ったヤツ、一緒にボコボコにしたよ。わりと容赦ない男だよね」
「今回は敵でいーの?」
「うん。將梧をネタに杉原が脅されてるんでしょ? 理由はそれで十分」
玲史と凱が、俺を見る。
「6限も終わるし、もう行く?」
御坂の言葉に頷いた。
「委員長。僕は残るけど、必要だったら連絡して。あと……斉木さんの端末の動画、なんとか消させるから」
鈴屋を見て首を横に振る。
「気にしなくていい。江藤のとこにもあるし。あ……そんなガッツリ鮮明だった?」
「ガッツリっていうか……」
例の動画を実際に見た鈴屋が、困り顔で言葉を濁す。
「わかった。うん。もう……」
「見ててドキドキしたよ。けっこう……」
「ストップ。言わないで」
照れる俺に、鈴屋が口元をほころばせる。
「気をつけてね」
「うん。じゃあ……」
「行こっか」
玲史が俺の腕を取って歩き出し、凱と御坂も続く。
「実は僕、紫道の次に杉原のこと狙ってたんだよね」
「え!?」
「好みのタイプだけど、ノンケだから遠慮してたのに。まさか將梧にさらわれるなんて悔しい」
腕を組むように擦り寄った玲史の瞳があやしく光る。
「と、思ったんだけど。將梧に興味湧いちゃった」
え……それはどういう……?
「杉原に飽きたりプレイが物足りなかったら、いつでも来てよ」
美少年顔の玲史の上目遣い。
これにやられる男は多いんだろうな。いや。騙される男は、か。
「うん。万が一そうなったらな。あーでも、縛るのはなしで」
「うわー何その自信たっぷりな返し。男と恋して変わったの? 將梧。前よりいい感じ」
変わった? そんなすぐ?
違う……素の自分になってるんだ。ここでも。
涼弥の前でも……素直な自分でいたい。
待ってろよ。
今、行くからな。
凱は玲史を探しに。
涼弥に電話をかけ続ける俺の横で、御坂は何やら思案中。
「やっぱり出ない」
呼び出しコール音を20回数えて。ケータイの液晶画面を乱暴にタップして、通話を切った。この3分で5回目だ。
「コールするってことは、電源はオンのまま。呼び出し音はオフでもバイブにはなってるはず。誰かが持ってるか近くにいれば気づいてるよな」
溜息をつく御坂に、俺も長い息を吐く。
「でも無視……か」
6回目の通話マークをタップ。コール音が耳に響く。
「俺からだから出ないのかも」
「知らないヤツからは、よけい出ないだろ」
プッ……。
コール音が消えた。胸が逸る。
「涼弥! 聞こえるか!? 涼弥!?」
返事はない。
だけど、確かに涼弥のケータイがある空間と繋がってる。
その証拠に、誰かの……息づかいが聞こえた。
「おい! 涼弥……じゃないのか……?」
目を合わせた御坂は、黙って俺を見守ってる。
ケータイから顔を上げた鈴屋も俺を見る。
水本か?
そう聞くか迷った数秒後。
「早瀬。これはどういうことだ? お前、何やった?」
声量と怒りを抑えた低い声が返された。
涼弥でも水本でもない。
この声……沢井だ。沢井友己……じゃあ、今……。
「沢井! 涼弥は!? いるんだろそこに……」
「ああ、いる。店ん中にな。俺は外だ。これは店入る前に持ってろって渡された。お前がしつこく鳴らすから出たんだ」
「外!? 何で……」
「涼弥に言われてんだよ! 話済むまで絶対手出すんじゃねぇ、いいっつーまで中入んなって……わけがわからねぇ」
「中に……あいつといるの、うちの学園の水本か? ほかに何人……?」
「水本ともう二人。そんなことより説明しろ! 早瀬」
目を閉じた。
店の中に涼弥がいる。水本たち3人と。外に沢井。
話をするために、涼弥は水本とその店に……少なくとも、最初は。
手を出すなってことは、涼弥はケンカする気で行ってない。水本の要求をのむつもりで……そして……。
開けた目は、ぼやけてない。
「ごめん。俺のせいだ。涼弥は……俺にとって不都合なモノを、水本が握ってると思ってる。それ潰すためにそこにいるんだ」
「はぁ!? 何であいつがそんなもん気にする必要がある。何にしろ、力づくで取り返しゃいい。あいつら3人くらい、俺と二人で十分やれんのによ」
「……データなんだ。動画の」
「何の?」
言葉に詰まる。
どうせあとでバレるなら、今言うか?
ただ……俺はかまわないけど、涼弥は……仲間には知られたくないかもしれない……って。バカだな俺。
これじゃ涼弥と同じだ。
それに。
ちゃんと言わなきゃ、どうして俺のために涼弥が…って説明にならないよね。
「俺と涼弥がキスしてる動画。今日学校で撮られた」
沈黙。
「俺も今から行く。何かあったら連絡してくれ」
返事……出来ないほど……何だ? 驚愕? 嫌悪感?
何だっていいやもう。
「沢井。もし、涼弥に声届くチャンスあったら……動画なんかどうでもいいからやり返せって伝えて」
「……わかった」
通話が切れた。
「行けんの?」
「どこで誰が相手なの?」
いつの間にか戻ってた凱に、玲史もいる。
「うん。だいたいの状況わかったから。店の中に涼弥と水本たち3人。外に仲間の沢井がいる。沢井は、涼弥とやり合えるくらい強い」
「楽勝じゃん」
凱はすでに解決したみたいにリラックス。
「じゃあ、僕は要らない? 紫道は置いてきたけど」
玲史は……何故か楽しそうだ。
「いや。お前も来て。学校終わって向こうの人数も増えるかもしれないし」
「お礼にあとで僕の遊び相手してくれる? 將梧、男もオッケーになったんでしょ?」
「高畑。それ……」
「いいよ」
御坂を遮って答える。
「SMでも何でもつき合う。だから、今は手貸して。頼む」
「へー本気なんだ」
数秒、真顔で俺を見つめて、玲史が笑った。
「冗談だよ。見返りなんか要らない」
「え……」
「期待させてごめんね。これとは別で、將梧が興味あるなら教えるから」
「教えなくていい。期待もしてない」
「残念」
わざと肩を落とす玲史を見て、笑みを浮かべる。
沢井との電話で尖ってた気持ちの先っちょが少し丸まった。
「玲史……ありがとな」
「相手、水本って言った? あのケンカ好きの3年?」
「知ってんの?」
「一度、僕が襲われかけたところに通りかかったことあってさ」
「あいつ、ノンケなんだろ? んじゃ、当然……」
凱が悪い顔で笑みを浮かべる。
「そ。襲ったヤツ、一緒にボコボコにしたよ。わりと容赦ない男だよね」
「今回は敵でいーの?」
「うん。將梧をネタに杉原が脅されてるんでしょ? 理由はそれで十分」
玲史と凱が、俺を見る。
「6限も終わるし、もう行く?」
御坂の言葉に頷いた。
「委員長。僕は残るけど、必要だったら連絡して。あと……斉木さんの端末の動画、なんとか消させるから」
鈴屋を見て首を横に振る。
「気にしなくていい。江藤のとこにもあるし。あ……そんなガッツリ鮮明だった?」
「ガッツリっていうか……」
例の動画を実際に見た鈴屋が、困り顔で言葉を濁す。
「わかった。うん。もう……」
「見ててドキドキしたよ。けっこう……」
「ストップ。言わないで」
照れる俺に、鈴屋が口元をほころばせる。
「気をつけてね」
「うん。じゃあ……」
「行こっか」
玲史が俺の腕を取って歩き出し、凱と御坂も続く。
「実は僕、紫道の次に杉原のこと狙ってたんだよね」
「え!?」
「好みのタイプだけど、ノンケだから遠慮してたのに。まさか將梧にさらわれるなんて悔しい」
腕を組むように擦り寄った玲史の瞳があやしく光る。
「と、思ったんだけど。將梧に興味湧いちゃった」
え……それはどういう……?
「杉原に飽きたりプレイが物足りなかったら、いつでも来てよ」
美少年顔の玲史の上目遣い。
これにやられる男は多いんだろうな。いや。騙される男は、か。
「うん。万が一そうなったらな。あーでも、縛るのはなしで」
「うわー何その自信たっぷりな返し。男と恋して変わったの? 將梧。前よりいい感じ」
変わった? そんなすぐ?
違う……素の自分になってるんだ。ここでも。
涼弥の前でも……素直な自分でいたい。
待ってろよ。
今、行くからな。
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。