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28-1 朝の作戦会議
翌日の金曜日。
いつもより早く、昨日よりは少し遅い時間に学校に到着した。
早朝の教室にいたのは予想通り、御坂と鈴屋。
朝の挨拶をして、すでに窓辺で会談中の二人に仲間入り。
「杉原、大丈夫だった?」
御坂が尋ねる。
「凱がさ。將梧といたら、痛いの感じないくらい舞い上がってるはずだって」
「あー涼弥、肋骨2本ヒビ入ってた。あと、耳に穴開けられてたよ」
「え? マジ? 全然気づかなかった」
「病院行ったから、一応大丈夫。ちゃんと安静にしてろって言ってあるし」
「何でそんなことするのかな。暴力って嫌い」
「俺も」
鈴屋に御坂も同意する。
「俺もだよ。涼弥は昔からよくケンカしてるけどさ」
「凱と高畑も、慣れた感じだったね」
「二人とも見た目を裏切るよな」
「昨日のは見てないけど、斉木さんの時の凱は鮮やかだった」
御坂と俺のコメントに、鈴屋が頷いて続ける。
「1年の時、高畑が3年生二人相手にケンカしてるとこ出くわしたことあるんだ。一瞬でひとり倒して、もうひとりはジワジワ追いつめてた。楽しそうで……ちょっと怖かったよ」
玲史がサドなのは、セックスだけじゃないのか。
「でも。昨日は、凱も高畑も不要な暴力はふるわなかったんでしょ? 水本さんとは違う」
「何で江藤と仲いいんだろうな?」
「幼馴染みみたい。斉木さんに聞いた」
俺の疑問に、鈴屋が即答する。
「江藤さんの情報ほしかったから、昨日は愛想よくして。それで、御坂には言ったけど今日……凱が江藤さんと話する時、僕は斉木さんのとこにいるから」
「は……何で?」
「隣なんだ。寮の部屋。普通の話し声は聞こえなくても、叫んだり壁蹴ったりは気づけるはず。あと、防犯ブザー持たせるって言うから」
え……隣? 防犯ブザー?
「ちょっと待って。鈴屋、斉木の部屋に行くの? それ、お前は大丈夫なのか?」
「うん。僕もブザー持ってくし、斉木さんと取引したし。心配要らないよ」
取引って……よけい心配になるんだけど。
鈴屋と斉木の関係に口挟む気はないけどさ。
それに……。
「いや、防犯ブザー持ってれば襲われないわけじゃないだろ。鳴らす余裕あるなら、ケータイ画面触ってこっちと通話状態にしたほうが……」
「俺だったら、ケータイは見えるところに置かせるか預かる。話してるの録音されたくないし、今言ったみたいに通話で聞かれないように。江藤もそのくらい考えてるって」
御坂の説明に納得。
「でも、防犯ブザーってあれだよな? ピン抜くと警告音鳴り響くやつ」
「そう。最大130デシベル。車のクラクションよりデカい音だから、ちょっと離れた場所でも聞こえるだろ」
「鳴らすヒマなかったら役に立たないじゃん?」
「凱の案、自動で鳴るようにするってさ」
「どうやって……?」
御坂と鈴屋が、顔を見合わせて口角を上げる。
「腰に本体、ベルトの端にピン引っ張るとこつければオッケー。ベルト外さなきゃ脱がせられないから。それ聞いて笑った。シンプルだけどバッチリだよな」
確かに……ムリヤリ何かされそうになった時に。
ケータイ触れなくて連絡出来なくても。
口塞がれて叫べなくても。
手足拘束されて動けなくても。
ズボン下ろされそうになって防犯ブザーが勝手に鳴ってくれるなら、SOSは出せる。
「よく思いついたな」
「凱の思考回路は高性能だよね。でも、ブザーつけてっても鳴ることはないって確信してる」
御坂と目を合わせたまま、眉を寄せた。
「江藤が自分をレイプすることはないってさ」
「え……だって、噂の検証のためだろ? 可能性あるから話するんじゃん? てか、根拠何? 聞いたか?」
「集会のあと、昇降口のとこで会って喋った時。取り巻き連中の前で。江藤が左手の人差し指で親指に爪立てて握りしめて、右手でその腕掴んでたって。話してる間ずっと」
その場に俺もいたけど……江藤が自分の腕掴んでたかどうかなんて見てない。
「自分抑えて演技してる、本当の自分を知らないヤツらの前だから。凱はそう言うんだけど……どう思う?」
「どう……だろう。そもそも、凱だって知らないから確かめるんじゃ……凱!」
いつの間にか人の増えた教室に、ちょうど凱が入ってきた。
「おはよー。將梧、元気じゃん。涼弥にやられてねぇんだな」
自分の席にカバンを置いて俺たちに加わる凱の言葉に、呆れつつも笑う。
「おはよう。涼弥の肋骨ヒビ2本。治るまでやらないけど……やってたら俺、元気じゃなくてどうなってる?」
「立って歩くのもキツい感じ」
嫌だなソレ。
「じゃあ、初めてやるのは休みの前の日にするよ。それより……」
御坂と鈴屋と目を合わせ、凱に視線を戻す。
「お前のプラン聞いてたとこ。江藤のこと、何で信用出来る? あいつが、どんな本性隠してるっていうんだ?」
さっそくの質問に、お馴染の凱の笑顔。
コイツの無邪気さは、装ってるんじゃなくて素だ。
ただ、そこに共存する狡猾な邪は、今はシッカリとしまわれてるんだと思う。
「心配してんの? 俺があいつにやられんじゃねぇかって?」
「あたりまえだろ。レイプ魔の噂がある男だ」
「逆は?」
「は……!?」
「俺が江藤をやる心配はねぇの?」
「ない。お前、ムリヤリは許さないって……自分がレイプする側になんか、ならないだろ」
「うん。でもさー俺の見た感じ、あいつはされる側だぜ?」
「え……?」
「ナイフで脅されてやり返したじゃん? あん時、口では余裕そうだったのに震えてたから。レイプされたことあんのかもな。トラウマ、残ってるうちは身体が勝手に反応すんの」
笑みの消えた凱と見つめ合う。
「江藤がレイプ魔だって聞いて、ほんとにそーなら潰す気だったけど。違そうだからさ。被害者いねぇなら別にかまわねぇよ。何でそんな噂作ってんのか聞くだけ。せっかくだしねー」
「その読み、自信あるのか?」
「トラウマがあるってのは8割。あいつが俺を襲わねぇのは99パーセント」
「あるんだな。信じるよ」
「たださー俺に突っ込もうとはしねぇけど、自分をやらせようとはするかも」
それって……襲い受け……ってことか……!?
いつもより早く、昨日よりは少し遅い時間に学校に到着した。
早朝の教室にいたのは予想通り、御坂と鈴屋。
朝の挨拶をして、すでに窓辺で会談中の二人に仲間入り。
「杉原、大丈夫だった?」
御坂が尋ねる。
「凱がさ。將梧といたら、痛いの感じないくらい舞い上がってるはずだって」
「あー涼弥、肋骨2本ヒビ入ってた。あと、耳に穴開けられてたよ」
「え? マジ? 全然気づかなかった」
「病院行ったから、一応大丈夫。ちゃんと安静にしてろって言ってあるし」
「何でそんなことするのかな。暴力って嫌い」
「俺も」
鈴屋に御坂も同意する。
「俺もだよ。涼弥は昔からよくケンカしてるけどさ」
「凱と高畑も、慣れた感じだったね」
「二人とも見た目を裏切るよな」
「昨日のは見てないけど、斉木さんの時の凱は鮮やかだった」
御坂と俺のコメントに、鈴屋が頷いて続ける。
「1年の時、高畑が3年生二人相手にケンカしてるとこ出くわしたことあるんだ。一瞬でひとり倒して、もうひとりはジワジワ追いつめてた。楽しそうで……ちょっと怖かったよ」
玲史がサドなのは、セックスだけじゃないのか。
「でも。昨日は、凱も高畑も不要な暴力はふるわなかったんでしょ? 水本さんとは違う」
「何で江藤と仲いいんだろうな?」
「幼馴染みみたい。斉木さんに聞いた」
俺の疑問に、鈴屋が即答する。
「江藤さんの情報ほしかったから、昨日は愛想よくして。それで、御坂には言ったけど今日……凱が江藤さんと話する時、僕は斉木さんのとこにいるから」
「は……何で?」
「隣なんだ。寮の部屋。普通の話し声は聞こえなくても、叫んだり壁蹴ったりは気づけるはず。あと、防犯ブザー持たせるって言うから」
え……隣? 防犯ブザー?
「ちょっと待って。鈴屋、斉木の部屋に行くの? それ、お前は大丈夫なのか?」
「うん。僕もブザー持ってくし、斉木さんと取引したし。心配要らないよ」
取引って……よけい心配になるんだけど。
鈴屋と斉木の関係に口挟む気はないけどさ。
それに……。
「いや、防犯ブザー持ってれば襲われないわけじゃないだろ。鳴らす余裕あるなら、ケータイ画面触ってこっちと通話状態にしたほうが……」
「俺だったら、ケータイは見えるところに置かせるか預かる。話してるの録音されたくないし、今言ったみたいに通話で聞かれないように。江藤もそのくらい考えてるって」
御坂の説明に納得。
「でも、防犯ブザーってあれだよな? ピン抜くと警告音鳴り響くやつ」
「そう。最大130デシベル。車のクラクションよりデカい音だから、ちょっと離れた場所でも聞こえるだろ」
「鳴らすヒマなかったら役に立たないじゃん?」
「凱の案、自動で鳴るようにするってさ」
「どうやって……?」
御坂と鈴屋が、顔を見合わせて口角を上げる。
「腰に本体、ベルトの端にピン引っ張るとこつければオッケー。ベルト外さなきゃ脱がせられないから。それ聞いて笑った。シンプルだけどバッチリだよな」
確かに……ムリヤリ何かされそうになった時に。
ケータイ触れなくて連絡出来なくても。
口塞がれて叫べなくても。
手足拘束されて動けなくても。
ズボン下ろされそうになって防犯ブザーが勝手に鳴ってくれるなら、SOSは出せる。
「よく思いついたな」
「凱の思考回路は高性能だよね。でも、ブザーつけてっても鳴ることはないって確信してる」
御坂と目を合わせたまま、眉を寄せた。
「江藤が自分をレイプすることはないってさ」
「え……だって、噂の検証のためだろ? 可能性あるから話するんじゃん? てか、根拠何? 聞いたか?」
「集会のあと、昇降口のとこで会って喋った時。取り巻き連中の前で。江藤が左手の人差し指で親指に爪立てて握りしめて、右手でその腕掴んでたって。話してる間ずっと」
その場に俺もいたけど……江藤が自分の腕掴んでたかどうかなんて見てない。
「自分抑えて演技してる、本当の自分を知らないヤツらの前だから。凱はそう言うんだけど……どう思う?」
「どう……だろう。そもそも、凱だって知らないから確かめるんじゃ……凱!」
いつの間にか人の増えた教室に、ちょうど凱が入ってきた。
「おはよー。將梧、元気じゃん。涼弥にやられてねぇんだな」
自分の席にカバンを置いて俺たちに加わる凱の言葉に、呆れつつも笑う。
「おはよう。涼弥の肋骨ヒビ2本。治るまでやらないけど……やってたら俺、元気じゃなくてどうなってる?」
「立って歩くのもキツい感じ」
嫌だなソレ。
「じゃあ、初めてやるのは休みの前の日にするよ。それより……」
御坂と鈴屋と目を合わせ、凱に視線を戻す。
「お前のプラン聞いてたとこ。江藤のこと、何で信用出来る? あいつが、どんな本性隠してるっていうんだ?」
さっそくの質問に、お馴染の凱の笑顔。
コイツの無邪気さは、装ってるんじゃなくて素だ。
ただ、そこに共存する狡猾な邪は、今はシッカリとしまわれてるんだと思う。
「心配してんの? 俺があいつにやられんじゃねぇかって?」
「あたりまえだろ。レイプ魔の噂がある男だ」
「逆は?」
「は……!?」
「俺が江藤をやる心配はねぇの?」
「ない。お前、ムリヤリは許さないって……自分がレイプする側になんか、ならないだろ」
「うん。でもさー俺の見た感じ、あいつはされる側だぜ?」
「え……?」
「ナイフで脅されてやり返したじゃん? あん時、口では余裕そうだったのに震えてたから。レイプされたことあんのかもな。トラウマ、残ってるうちは身体が勝手に反応すんの」
笑みの消えた凱と見つめ合う。
「江藤がレイプ魔だって聞いて、ほんとにそーなら潰す気だったけど。違そうだからさ。被害者いねぇなら別にかまわねぇよ。何でそんな噂作ってんのか聞くだけ。せっかくだしねー」
「その読み、自信あるのか?」
「トラウマがあるってのは8割。あいつが俺を襲わねぇのは99パーセント」
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