リアルBL!不安な俺の恋愛ハードルート

Kinon

文字の大きさ
137 / 246

33-2 役員にはなりたくないです

 5限が終わってすぐ、A組に行って涼弥を呼んだ。

「何かあったのか?」

 廊下の端で眉を寄せる涼弥に、急いで否定する。

「いや、平和。なんだけど、俺……生徒会役員選挙に出なきゃいけなくなった。立候補いなくて」

「何……どうしてもか……!?」

「うん。学級委員だから仕方ない」

「うちは二人出るぞ。ひとり、そっちにやる」

「無理だろ」

 必死に本気で提案する涼弥に笑う。

「A組は誰が?」

「上沢と三崎。それより、やめる方法考えろ。役員なんかなったら危ない」

 それは偏見。危なくはない……けど。その前に。

「よせ。役員にはならない」

「選挙に出ればなっちまう。目立ちゃよけい狙われる」

 狙われるうんぬんは置いといて。

「こんなやる気ないヤツ、選ばれない……はず」

 だよな……?
 まさか、マジで生徒会なんて……無理!

 眉間に皺を刻んだままの涼弥と見つめ合う。

「とりあえず……選挙は俺が出るしかないんだ。玲史れいじ紫道しのみちは風紀に立候補するからさ」

「やめれねぇのか……」

「うん。放課後、届け出して部活行く。補習終わったら連絡して」

「ああ……待ってろ」

「じゃあ、あとでな」

 思案顔の涼弥と別れ、教室に戻った。



 そして。6限、SHRと終わり。
 重い足取りで生徒会室に向かう。

 はぁ……マジで気が重い。
 最近ていうか、涼弥とつき合い始めて数日。気がかりは、いかにあいつに不要な心配かけずに済むかってことばっか。
 それ以外は、いたって順調だったからな。

 突然のデカいストレスに……気持ちがついてけない感じ。



「失礼します」

 部屋に入ると。

「あ、將梧そうごくん。いらっしゃい」

 会長の席から立ち上がった江藤が、デスクの前で出迎える。脇には天野。

「あの……立候補の届け出を持ってきました」

 無言で伸ばされた天野の手に、2-Bの学級委員3人の名前が書かれた用紙を渡す。
 俺をジッと見つめたまま、江藤がフッと息を吐いた。

「この前はすまなかったね。きみにも迷惑かけちゃって」

 金曜の出来事を一気に思い出して身を硬くする俺に、江藤がふんわりとした笑みを浮かべる。

「俺のこと、かいくんから聞いたんだろ? とおるもきみに話したって言ってたから、弁解はしない。俺はどうしようもない淫乱で、きみの友達をレイプしようとした男だ」

 声をひそめるでもない江藤の言葉に反応してか。大テーブルで何やら作業中の書記の加賀谷が、こっちにチラリと視線を向ける。
 目が合った俺に、やれやれってふうに両肩と口角を上げて見せた。

 知ってるんだ。江藤の本性……ここでは公然の秘密だったりするのか?

「そ……」

 んなことありません、とは言えず。

「そうですね」

 肯定した。

「二人に聞いた話が事実なら。はじめから相手が合意してれば、好きなだけセックスするのはかまわないと思います。でも、レイプは……やめてください」

「うん。ああいうことはもうしない」

 ちょっとエラそうに意見した俺に素直に頷いて、江藤が天野を見る。

「セージも謝って」

「俺も同罪だ……てより、脅しと噂は俺がやった。そっちのが悪い。すまなかった」

 天野が俺を見据える。

じゅんの噂、そのままにしてくれるんだってな」

「これ以上、被害者が増えなければ……です」

「ああ、増やさない。感謝する」

「礼は俺じゃなく、凱と上沢にしてください。江藤さんを凱が許して、上沢が本気で思ってる……だからです」

「そうだな。柏葉にあらためて詫び入れに行ったが……あれはどういう男だ?」

「凱は何て……?」

 天野が表情を緩めた。

「『じゃあ、俺がやりたくなった時に1回抱かせて』。そう言いやがった」

「あーそれは……」

 普通に。素で思って言ったんだろうけど……出来ればやめてほしい。上沢に悪いだろ。

「江藤さんが拒否すれば、じゃあいいやってなると思うので……お詫びに相手するとかは、しなくても大丈夫です」

「俺は凱くん気に入ってるから、いいんだけどね」

「ダメだ。お前には透がいる。柏葉の件でハッキリわかったはずだ。もうほかの男は必要ない」

「そうかな」

「そうだ」

「透は俺にやさしいからね。無理してほしいモノくれてるんだよ」

「それでお前がムチャしねぇなら、無理する価値があるんだろ」

「あの……俺、もう行きます」

 江藤と天野の会話がディープな域に入る前に、退散したい。

「待って。將梧くん」

 軽くお辞儀して去ろうとして、呼び止められた。

「きみとあの動画の杉原。つき合ってるの内緒だって透に言われたけど、3年に知ってるヤツらがいる」

「それはもういいです。隠さないことにしました」

「そう。よかったよ。きみ、全校集会のあとに会った時より色気増してるから。フリーでいないほうがいい」

 え……アナタに忠告されるほど……!?

 怪訝な顔をする俺を見て。

「無自覚なのは厄介だね」

 クスリと笑う江藤に、天野が手に持った紙を渡す。俺の名前が書かれた届け出だ。

「お前の男は気が気じゃねぇな、早瀬」

 天野の笑みはちょい暗め。

「おまけに、水本とやり合ってんじゃ……この先も大変だぜ」

「動画の件は解決しましたから」

「將梧くん、生徒会なんかやりたいの? 重労働だよ?」

 江藤に意外そうに尋ねられ。

「いえ。うちのクラス、立候補がいなかったので」

 現役員の前で申し訳ないと思いつつ。

「役員にはなりたくないです。どうにか、棄権とか……出来ませんか?」

 僅かな希望を込めて聞いてみた。

 無理なら、万が一にも当選しないように裏操作をしてほしいけど……。

「ごめんね。俺は色狂いでも、生徒会の仕事は手を抜かずにやってるから。きみのクラスだけ候補者なしを認めたり、選挙の不正はしないよ」

「諦めろ」

 ニッコリ笑顔でノーを告げる江藤に続き、天野も容赦ないひとことを加える。

「その代りってわけじゃないけど。俺からの謝意として、淳志あつし……水本のことを教えてあげる」

「は……? 水本……?」

「きみたち、あいつに何かした?」

 あー……した……かな。玲史とキスしてる画像……撮らせてもらった。

「怒ってるんだよね。何故か理由は言わない。でも、あの動画のことで反撃されたと思うんだ。外傷はなくても」

 黙ってた……無言は肯定。

「だから、水本が今度また、きみたちに何か悪さしようとしてたら。教えるよ」

 え……本当に!?

「詳細は知ってても話さない。何か企んでるから気をつけろって言うだけ。もちろん、水本を止めはしないし、きみたちを助けもしない」

 江藤を見つめる。

 強く冴えた、狡猾そうな瞳。この瞳が怯えて欲情に濡れるのは、確かにそそられるかもしれない……って。

 何うっかり攻め思考で観察しちゃってんだ俺!

「ありがとうございます。十分助かります」

 気を取り直して、善意に感謝して。

「選挙、楽しみにしてるよ」

 ブルーな気分に戻って、生徒会室を出た。



感想 5

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。