リアルBL!不安な俺の恋愛ハードルート

Kinon

文字の大きさ
141 / 246

34-3 ごめん……

しおりを挟む
 涼弥がジムに来なかった。



『6時までに行ければ寄る』



 補習が長引いて遅くなったから、は普通にあり得る。

 無理なら連絡入れといてってのにも、ちゃんと連絡入ってる。



『今日は行けない』



 シンプルだけどさ。



 ただそれだけなら、心配しない。
 なのに、今心配してるのは……。



 電話しても出ないから!



「出られない状況なんじゃない?」

 ジムからの帰り道。
 隣を歩く沙羅が言った。

「どんな? 補習はとっくに終わってる時間だし、満員電車ってのもないし。コールはしてる」

 時間は7時20分頃。
 家まであと4、5分のところ。

「誰かそばにいるとか?」

「人がいたって出るだろ」

 沙羅が首を傾げて俺を見る。

「その人と一緒にいるって、將梧そうごに知られたくなかったら出ないかもね」

「は? そんなこと……」

 あるわけないじゃん?

 そう思うのに。
 さっき、いろいろ沙羅に吹き込まれたせいか……。

「心配?」

「ほかの男のか? 心配じゃない……少なくとも、涼弥からどうのってのはない」

 言いながら、ちょっぴり不安が。

 浮気系のじゃないよ?
 ただ、俺に内緒にしたい交友関係って……あるのか?
 いや。あってもいい……か。

 あ!

「あいつ、するなって言ってるのにケンカしたのかも。電話出たら、俺に何してたって聞かれるだろ。ケンカって言えないし、嘘つきたくないしで」

「本当のこと言えないからって、心配かけるのはいいんだ」

「お前が言ったんじゃん。心配されたい心理もあるってさ」

「ケガや安全の話はまた違うんだけどね」

 それはわかってる。
 でも……。

「將梧がそう納得したいならいいわよ」

「よくない。納得してない。でも……」

 目を合わせた沙羅に、からかう気配がないことにホッとする。

「変な心配したくない」

「してもいいじゃない。心配って、そうなったら嫌だからするものでしょ」

 暫く無言で歩いた。



「どっちも嫌だ」

 溜息まじりで気持ちを口にする。

「危ない目にあってるのも……俺に言えないヤツと会ってるのも」

 今の心情は、とにかく心配ってこと。

「恋してたら、それは当然」

 沙羅がやさしい表情で頷く。

「ただし。悪い想像した分、ハッピーな想像もするのよ」

「ん。前向きにな。もう一回電話してみる」

 もうすぐ。
 角を曲がればうちが見えるところで、涼弥にコールする。

 静かな住宅街に、呼び出し音が……。

 え……?

 あれ? ケータイから耳に聞こえるコール音と、直に空中から届くこの音……って!



 涼弥……!?



 家の前に立つデカい人影が、こっちを向いた。

「どうした……!?」

 駆け寄った。間違いなく涼弥だ。どこも何ともなく元気そうだ。

「ここで待ってたのか? つーか! 何で電話出ないんだよ?」

「將梧」

 俺を見て。
 嬉しそうではあるけど……おかしな表情してる涼弥が、伸ばしかけた手を下ろす。

「気にしないで続けて。邪魔者は消えるわ。あ、ディープなのは、せめて庭のベンチに移動してからね」

 追いついた沙羅が俺たちの横を通り、言いながら家の敷地に入る前に。

「沙羅。ここにいてくれ。俺はすぐ帰る」

「え……?」

 驚く沙羅に負けないクエスチョンが、俺の頭にも浮かびまくり。



 すぐ帰る……のはまだわかる。
 ちょっと顔見に寄っただけだからとか。
 腹減ってるとか。

 けどさ。
 沙羅にいてほしいって何?
 俺と二人きりになっちゃマズいのか?
 エロい気分にならないように?
 自宅の敷地内は、公園よりプライベート空間なのに?

 てか。
 エロいっていうよりも。



 つらい苦しい悲しい困った、どうしていいかわかんない……!



 みたいな。
 助けを求める顔してる。
 プラス……向ける瞳が、俺を責めてる感じが……する。



「何かあったのか?」

「いや、何もない」

 即答されて。立ち止ってる沙羅に視線をやると、微かに眉を寄せて小さく首を横に振った。

 テレパシー会話はきっとこう。



『ほんとかな?』

『何もない、わけないでしょ』



「とりあえず。ちょっとだけこっち来い」

 腕を掴んで、涼弥を庭へ。
 おとなしく引っ張られた涼弥が、玄関先まで行かずに足を止める。 

「何があった?」

「何もない」

 振り向いて聞いた俺を見つめ、涼弥が答える。

「遅くなってジムに行けなかったからな。顔見たくて来ただけだ」

 今のセリフにそぐわない、切羽詰まった感。
 責めるような瞳が熱を帯びる。


「嘘つくなよ」

 涼弥は何も言わず。チラリと沙羅を見やってから、俺を抱き寄せた。

「会いたかっただけだ」

 耳元で囁かれるその言葉に嘘はない。
『何もない』のが本当とも思えない……けど。

 涼弥の体温。胸の鼓動。抱きしめる腕。みんな本物で、今ここにある。
 だからもう、心配じゃない。
 たとえ……何かを言わずに隠してるんだとしてもな。

「俺も会いたかった」

 右腕を強引に上げて。額を俺の肩に乗せた涼弥の頭を撫でる。

「大丈夫だ。俺、ここにいるだろ?」

「將梧……」

 涼弥の腕の力が強まった。

「ごめん……」

「何で謝る?」

 間が空いた。

「ごめん……」

 もう一度繰り返し、涼弥が顔を上げる。

「お前のこと話してるヤツらがいた。信じてるのに、不安になった」

 感情を抑えてるのか、用意した理由なのか。
 事実を伝えるだけみたいな棒読みのあと。涼弥が盛大な溜息をついた。

「嫉妬深い自分にうんざりだ。悪かったな」

「謝んなくていいけどさ。いちいち気にしてたら、お前がキツくなるだろ」

 至近距離で、涼弥を見上げる。

「誰もお前に敵わないんだから。そんなの聞き流せ」

「……そうだな」

 俺から逸らされない涼弥の瞳が僅かに揺れた。

「これからはそうする」

 涼弥が、俺に回した腕を解く。

「電話に出なくて悪かった」

 謝ってばっかだなと思いながら、微笑んだ。

「ん。何もなくてよかった」

「また……明日な」

「もう帰るのか?」

「ああ。今日は……お前といたら、何するかわからねぇ」

「え……?」

「何もしねぇうちに帰りたい。じゃあな」

 涼弥が踵を返す。

「おい。待てよ」

 道に出る直前で、涼弥の腕を掴んで止めた。
 ほんの数秒、天を仰いだ涼弥が振り返り。大きく一歩戻って頭を屈め、俺に唇を重ねた。
 ぶつけるようなそのキスは一瞬で。

「ごめん……」

 そう言って走り去る涼弥を、ただ見つめるだけの俺。


 
 涼弥……どうしたんだ?
 不安のせいか? 嫉妬? ライバルなんかいないだろ? ひとりで誰と闘ってる?



 肩に手を置かれて我に返る。

「入りましょ」

「沙羅……」

 ゆっくりと玄関に向かいながら、息をつく。

「涼弥……変だったよな」

「ちょっとね。言った通り、不安だったんじゃない?」

「にしてもさ」

「大丈夫よ」

「悪い。お前いるとこで」

「いいの」

 家の鍵を手に、沙羅が輝く瞳で笑みを浮かべた。

「萌えたわ」

 あー……そうだね。
 キミにとって、今のはちっとも居心地悪くない。むしろエンタメ。



 楽しげな沙羅に続いて家に入り。部屋でひとりになって、ふと考えた。

 BLワールドだったら。

 『ごめん』を繰り返す理由は……罪悪感か?
 言えない秘密。心変わり。
 あとは……浮気とか。



 リアルに重ねて頭を振った俺。
 まさかな。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】

まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

処理中です...