209 / 246
51-3 ゾンビ屋敷を行く
脳天に斧が食い込んだゾンビ……のマネキンが、角にいる。
白目剥いてて、人が通るとそこからライトが光るのに。
深音たち、気づかないで走ってったな。
「將悟!」
角を曲がった途端に呼ばれた。
板塀に囲まれたこの通りは、御札や提灯とかで装飾されてる。和モノの不気味さを演出してるところだ。
すぐそこに、さっき俺が隠れて動かしてた倒れたゾンビ。その向こうに深音と和沙がいる。
「早く来て」
前に進まず。
俺のほうにも戻って来ず、立ち往生してるのは……。
床のゾンビ3体が動き出したら嫌ってのと。
次の角らへんに、ブラブラ歩いてるゾンビが2体いるからか。
でもさ。
向こうのは歩いてるんだから。明らかに、ゾンビの格好した人じゃん!?
それわかってて。
突然動き出す……みたいな、驚き要素はないだろ。
アレ、血糊ベッタリで顔半分腐ってるっぽいメイクしてるけど。普通の高2男子だから。
襲ってきて噛みつたりしないよ?
「大丈夫か?」
二人のとこに着いた。
「私は平気だけど……」
自分の腕をシッカリと掴んでる和沙を見やり、深音が薄く笑む。
「和沙はゾンビ、ダメみたい」
「そっか……んーと。棄権っていうか、途中で外出れるけど……どうする?」
和沙に尋ねると。
「平気。最後まで、ちゃんと行く」
気丈な答え。
「深音は楽しんでるから」
「無理しないでって言ったでしょ?」
「してない」
「大丈夫。私が守る」
「ありがと」
「まかせて」
「でも……頼んでいい?」
二人を微笑ましく見てた俺に、和沙が言った。
「何?」
「……掴んでて。私の手。逃げないように」
和沙から、深音へと視線を移す。
「いいの。將悟なら、信用してる」
当然! 俺が和沙に邪な気を起こすって、あり得ないけど……。
「そんなに怖いのか?」
不安そうな瞳で、和沙が頷いた。
「グロいのがダメなの。偽物ってわかってても」
正直……意外だ。
和沙をよく知らないくせに、そう思いつつ。
「わかった」
差し出された和沙の手を握る。
「じゃあ、進むね」
歩き出した深音の横に、ピッタリ寄り添って行く和沙。その手を取ったまま、すぐ後ろに俺が続いた。
ブラつくゾンビをかわして、ヒント2のカードをゲット。
3つ目の仕掛けも越え。
俺も手を加えた4つ目の仕掛け……角に設置されたベッドが見えてきた。
目印のビックリマーク4が描かれてるのは、ベッドのサイド部分だ。ヒントカードは枕元にあるカゴの中。
ベッドに横たわる人間と、その首らへんに顔を寄せ身を屈めて立つもうひとり。
ほとんど動いてない二人に近づいてくと……。
「うッあッ……ツ……!」
いきなりの悲鳴。
ゾンビの呻き声と違って、生きた人間の……本当に苦痛を感じてるみたいな声だ。
身構えるように足を止める俺たち。
俺の手を掴む和沙の手が震えてる。痛いくらい強く握られたまま。
「う……ッ、はっ……はぁ……」
荒い息づかい。
そして。
屈んでた人物がガバッと身を起こして振り向いて、笑った。
声なく。静かに。
かわいい顔は半分血にまみれ。
青いライトがあたって……目と傷痕が冷たく光ってる。
玲史だって知ってても、ゾッとする……!
スッとこっちに向かってくる玲史。いや、ゾンビ。
その向こう。起き上がってベッドから下りる、もう一体のゾンビ。
「あ……」
「逃げよう!」
口を開けて固まる和沙を見て、深音がそう言うやいなや……駆け出した。
「おい!」
手を繋いでる俺も引っ張られ、行くしかない。
首を傾げる玲史たちの前を通り過ぎる。
磔にされたゾンビの列に目もくれず。
5つ目の仕掛けのジグザグの道に入った。
「和沙……?」
歩く速度になってから、心配そうに深音が聞く。
「ごめん……ヒント、取れなかった……」
大きく息を吐いて答える和沙。
パニック状態とかになってなくて、とりあえずよかった。
「もう! そんなのはいいの! 大丈夫?」
「うん……あのゾンビがちょっと……」
「ゾンビっていうより、現場見られた猟奇殺人犯かサタニストみたいで……ヤバかったね」
「あーそうかもな」
言われてるぞ、玲史!
「ありがと。痛かったでしょ。ごめん」
和沙が、笑みを浮かべた俺の手を放した。
「全然平気だ」
「残りどれくらい? まだまだ怖いのある?」
和沙は本気でしんどそうだし。
深音は和沙が心配だろうし、そこそこ楽しんだろうし。
「あと少し。最後のヒントは、ジャンケンで勝ったらもらえるからさ」
この際、ネタばらし。
これ以上かかったら……後ろも詰まってきちゃうしな。
「行こう」
道のところどころにある全身鏡に少しビビりつつ、5つ目のビックリマークが描かれた壁の前に到着。
ポツンと座ってたゾンビがフラリと立ち上がる。
「じゃん、けーん……」
唐突にかけ声をかけられ、反射的に握った拳を出す深音と和沙。
「ぽー……ん」
ゾンビ、パー。
深音、パー。
和沙、チョキ。
「やったね! 和沙の勝ち!」
喜ぶ深音が、左隣にいる和沙に横から抱きついた。
そして。
「やったね」
誰もいないはずの右隣からかけられた声に。
「ひぁッ!」
文字通り、深音が跳ねた。
ゾンビに扮した結都が、俺と目を合わせて口角を上げる。
シンプルな驚かしだけど、ジャンケンで勝って気抜いてる場面ではけっこう効く。
「はい。カード」
「あ……アリガトウ……ゴザイマス」
何故か片言で。ゾンビが差し出したカードを受け取って、深音が息をつく。
「ビックリした……これで終わり? もう出てこない?」
「うん。でも、ゾンビ不足なんだ」
深音に答えたのはゾンビ。
「僕たちの仲間にならない? 咬んであげる」
「え……」
ジャンケンをしたゾンビも、無言でこっちに迫ってきた。
「お断りするよ」
バシッと言って。和沙が深音を守るように引き寄せ、そのまま出口のほうへと歩き出す。
「じゃあ、またな」
ゾンビたちに片手を上げて、二人に続いた。
白目剥いてて、人が通るとそこからライトが光るのに。
深音たち、気づかないで走ってったな。
「將悟!」
角を曲がった途端に呼ばれた。
板塀に囲まれたこの通りは、御札や提灯とかで装飾されてる。和モノの不気味さを演出してるところだ。
すぐそこに、さっき俺が隠れて動かしてた倒れたゾンビ。その向こうに深音と和沙がいる。
「早く来て」
前に進まず。
俺のほうにも戻って来ず、立ち往生してるのは……。
床のゾンビ3体が動き出したら嫌ってのと。
次の角らへんに、ブラブラ歩いてるゾンビが2体いるからか。
でもさ。
向こうのは歩いてるんだから。明らかに、ゾンビの格好した人じゃん!?
それわかってて。
突然動き出す……みたいな、驚き要素はないだろ。
アレ、血糊ベッタリで顔半分腐ってるっぽいメイクしてるけど。普通の高2男子だから。
襲ってきて噛みつたりしないよ?
「大丈夫か?」
二人のとこに着いた。
「私は平気だけど……」
自分の腕をシッカリと掴んでる和沙を見やり、深音が薄く笑む。
「和沙はゾンビ、ダメみたい」
「そっか……んーと。棄権っていうか、途中で外出れるけど……どうする?」
和沙に尋ねると。
「平気。最後まで、ちゃんと行く」
気丈な答え。
「深音は楽しんでるから」
「無理しないでって言ったでしょ?」
「してない」
「大丈夫。私が守る」
「ありがと」
「まかせて」
「でも……頼んでいい?」
二人を微笑ましく見てた俺に、和沙が言った。
「何?」
「……掴んでて。私の手。逃げないように」
和沙から、深音へと視線を移す。
「いいの。將悟なら、信用してる」
当然! 俺が和沙に邪な気を起こすって、あり得ないけど……。
「そんなに怖いのか?」
不安そうな瞳で、和沙が頷いた。
「グロいのがダメなの。偽物ってわかってても」
正直……意外だ。
和沙をよく知らないくせに、そう思いつつ。
「わかった」
差し出された和沙の手を握る。
「じゃあ、進むね」
歩き出した深音の横に、ピッタリ寄り添って行く和沙。その手を取ったまま、すぐ後ろに俺が続いた。
ブラつくゾンビをかわして、ヒント2のカードをゲット。
3つ目の仕掛けも越え。
俺も手を加えた4つ目の仕掛け……角に設置されたベッドが見えてきた。
目印のビックリマーク4が描かれてるのは、ベッドのサイド部分だ。ヒントカードは枕元にあるカゴの中。
ベッドに横たわる人間と、その首らへんに顔を寄せ身を屈めて立つもうひとり。
ほとんど動いてない二人に近づいてくと……。
「うッあッ……ツ……!」
いきなりの悲鳴。
ゾンビの呻き声と違って、生きた人間の……本当に苦痛を感じてるみたいな声だ。
身構えるように足を止める俺たち。
俺の手を掴む和沙の手が震えてる。痛いくらい強く握られたまま。
「う……ッ、はっ……はぁ……」
荒い息づかい。
そして。
屈んでた人物がガバッと身を起こして振り向いて、笑った。
声なく。静かに。
かわいい顔は半分血にまみれ。
青いライトがあたって……目と傷痕が冷たく光ってる。
玲史だって知ってても、ゾッとする……!
スッとこっちに向かってくる玲史。いや、ゾンビ。
その向こう。起き上がってベッドから下りる、もう一体のゾンビ。
「あ……」
「逃げよう!」
口を開けて固まる和沙を見て、深音がそう言うやいなや……駆け出した。
「おい!」
手を繋いでる俺も引っ張られ、行くしかない。
首を傾げる玲史たちの前を通り過ぎる。
磔にされたゾンビの列に目もくれず。
5つ目の仕掛けのジグザグの道に入った。
「和沙……?」
歩く速度になってから、心配そうに深音が聞く。
「ごめん……ヒント、取れなかった……」
大きく息を吐いて答える和沙。
パニック状態とかになってなくて、とりあえずよかった。
「もう! そんなのはいいの! 大丈夫?」
「うん……あのゾンビがちょっと……」
「ゾンビっていうより、現場見られた猟奇殺人犯かサタニストみたいで……ヤバかったね」
「あーそうかもな」
言われてるぞ、玲史!
「ありがと。痛かったでしょ。ごめん」
和沙が、笑みを浮かべた俺の手を放した。
「全然平気だ」
「残りどれくらい? まだまだ怖いのある?」
和沙は本気でしんどそうだし。
深音は和沙が心配だろうし、そこそこ楽しんだろうし。
「あと少し。最後のヒントは、ジャンケンで勝ったらもらえるからさ」
この際、ネタばらし。
これ以上かかったら……後ろも詰まってきちゃうしな。
「行こう」
道のところどころにある全身鏡に少しビビりつつ、5つ目のビックリマークが描かれた壁の前に到着。
ポツンと座ってたゾンビがフラリと立ち上がる。
「じゃん、けーん……」
唐突にかけ声をかけられ、反射的に握った拳を出す深音と和沙。
「ぽー……ん」
ゾンビ、パー。
深音、パー。
和沙、チョキ。
「やったね! 和沙の勝ち!」
喜ぶ深音が、左隣にいる和沙に横から抱きついた。
そして。
「やったね」
誰もいないはずの右隣からかけられた声に。
「ひぁッ!」
文字通り、深音が跳ねた。
ゾンビに扮した結都が、俺と目を合わせて口角を上げる。
シンプルな驚かしだけど、ジャンケンで勝って気抜いてる場面ではけっこう効く。
「はい。カード」
「あ……アリガトウ……ゴザイマス」
何故か片言で。ゾンビが差し出したカードを受け取って、深音が息をつく。
「ビックリした……これで終わり? もう出てこない?」
「うん。でも、ゾンビ不足なんだ」
深音に答えたのはゾンビ。
「僕たちの仲間にならない? 咬んであげる」
「え……」
ジャンケンをしたゾンビも、無言でこっちに迫ってきた。
「お断りするよ」
バシッと言って。和沙が深音を守るように引き寄せ、そのまま出口のほうへと歩き出す。
「じゃあ、またな」
ゾンビたちに片手を上げて、二人に続いた。
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。