滅びろ人間!小児性犯罪者への復讐

Kinon

文字の大きさ
17 / 110
第3章 危険な男

情報

しおりを挟む
 かいとの初対面から丸1日。
 夕食会以来、彼の姿を一度も目にしていない。

 凱のことをもっと知りたかった。



 夕食会の翌日、10月20日。
 朝食後すぐに館を発つラストワを見送ったあと。僕とリージェイク、ショウ、奏子、せきれつの6人で、駅前のショッピングモールに車で買い物に出かけた。

 急にここで生活することを決めた僕とリージェイクには、必要なものがたくさんあったから。土曜日で混み合うモール内をせわしなく買い回った。

 遅めのランチを済ませ、食料品を買って館に戻り。僕と奏子はクロたちのところに遊びに行った。
 そこで、奏子に凱のことを聞いてみた。



「カイはね、あんまりおうちにいないんだよ。いるときはね、シュウおじさんとお庭でオケイコしてる。ケンカみたいなの」

 ケンカ……やっぱり護身術かな。
 それか、空手とか合気道とか。

「あと、アヤおばさんに怒られてる」

「そっか。奏子にはやさしい?」

「うーん。わかんない。遊んでくれないもん。でも、イジワルされたことないよ」

「それならよかった」

「あ! 1回ね、ママに怒られてお庭で泣いてた時……カイがずっと一緒にいてくれたの。でね、一緒によつば探したんだよ。カイが見つけたやつ、あたしにくれたの。いいことあるようにって」

「へぇ……」



 四つ葉を探して奏子にあげた……それだと、普通のやさしいお兄ちゃんみたいに聞こえた。
 とりあえず、奏子を傷つけることはなさそうで僕は安心した。



 この日の夜。僕とリージェイクは昼間買い込んだ荷物とともに、それぞれに用意された自分の部屋へと引っ越した。
 2階に並ぶ個室のひとつで。僕の隣人は烈と、間に一部屋挟んでリージェイク。。

 荷物の片づけが終わって、寝る前にキッチンに行こうとしてドアを開けたら。ちょうど隣のドアから烈が出てきた。

 この時、僕は初めて烈とまともな会話をした。

 買い物の最中もランチ中も夕食中も、なかなか話しかけるチャンスがなくて……というより。
 僕が話しかけようとするたびに。烈は避けるように視線を逸らしたりその場からいなくなっちゃったりして、取りつく島がない状態だったから。



「今夜から隣だね。あらためてよろしく」

「……よろしく」

 挨拶は出来たから、まあいいやって歩き出したら。烈のほうから話しかけてきた。

「ジャルド……」

 振り向くと、烈は緊張した顔で続けた。

「あの……僕のところに、本ならいっぱいあるから……読みたくなったらいつでも言って。今日、本屋に行く暇なかったでしょ」

「ありがと、烈。じゃあ……今夜はもう遅いから明日、借りに行ってもいいかな?」

「いいよ」

「んーと、朝食のあとで」

「待ってる」

 そう言うと、烈は自室に戻った。



 烈は僕にタイミングを合わせて廊下に出てきたんだと思った。
 本のことを伝えるため……僕と話すきっかけを作るために。

 読書は好きだし。烈とも仲良くなりたかったから、彼のオファーは嬉しかった。
 でも、それよりも。
 烈に、凱について聞くチャンスが出来たことに喜んだ。

 なんといっても、烈は凱の弟だ。
 母親のショウとは別の見方で凱を知ってるはず。

 血が繋がってなくて。まだ1年しか一緒に暮らしていない僕とリージェイクだって、お互いのことをそれなりにわかっている。
 親のいない僕たちにとっては、一番近い関係だから。

 そう思っていた……この前日の夜までは。



 リージェイクにも。もちろん、凱のことをもっと詳しく聞いてみた。
 
 個室に移る前の夜。
 夕食会のあと、客室に戻って二人になってから。僕はリージェイクに尋ねた。



「凱と仲悪かったの? ショウが言ってた」

 リージェイクは暫くの間を置いて口を開いた。

「出会ってから1年くらいは、年も同じリシール同士……私たちはお互いにとっていい友人だった。勉強や恋愛の相談なんかもする、親しい関係を築いていたよ」

「それがどうして……?」

「私たちが一緒に過ごしたのは、ほとんどが学校とその寮だ。ここでいう中学から高校かな。凱は以前から学校や社会のルールに刃向かう傾向があったけど、それは厳しい寮生活で徐々にエスカレートして……爆発した」

「何があったの?」

「数人の仲間と、ある教師を暴行したんだ。14、5歳の彼らがやったとは信じられないほどの暴行を」

 短い沈黙。

「その教師に対して、凱やほかの生徒が怒りと憎しみを持っていることは知っていた。その理由も。そして、それは私にも納得のいくものだった」

「……悪い先生だったんだ」

「そうだね。罰せられるだけの罪が、その教師にはあった。だから、暴行した凱たちが警察に通報されることはなかった。学校側が事件を揉み消し、その教師は去った」

「じゃあ、結果としてはよかったんじゃないの?」

 僕の言葉に、リージェイクは溜息をついた。

「その教師の罪が学校側に知れて去ったのは、いい。だけど、学校側がその事実と凱たちの起こした事件を揉み消したのは問題だった。凱の中で権力への反発がより高まったことを除いても」

「でも、おかげで警察沙汰にならなかったんでしょ?」

「……それが悪い」

「え……?」

「凱はその教師を法的に罰するんじゃなく、自分の手で罰を与えることを選んだ。そのほうが自分の怒りを昇華出来るし、正当な人権も無視して苦しめることが可能だからね」

 ドキッとした。
 凱のしたことと、自分のやろうとしてるヤツへの復讐が重なった。

「それを、スキャンダルを恐れた学校側が隠蔽したことで、凱は自分たちの行為は間違っていないと認識した。悪には悪で対抗してもいいんだ、と」

「ダメなの?」

「それは、凱をその教師と同じところまで堕とす行為だ。復讐は……誰も救えない。悪い人間をひとり増やすだけなんだよ」

「違う!」

 つい、口走った。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...