27 / 27
第25話
しおりを挟む
「ええっと......アイちゃんの覚り妖怪疑惑についての話だったよね?」
「ノーです辰子ちゃん。そもそもアレの目は三つ、私では二つほど足りません」
「肯定、話題、宇野超能力者疑惑」
「違います違います、火野さんも読心から離れてください」
「そうだよ、宇野さんがモノローグを読んでる件についての話だよ」
「あってますけど違います、立て続けにボケないでください......」
突っ込む方の身にもなってくれと嘆息する宇野さん。正直もうちょっとふざけたかったが、辰子からやんわりつつかれて止められたので自重する。
「あー、僕の企画は無しにするって話だったよね?文化祭は異種族のことをよく知らない人もたくさんくるわけだから差別思想に繋がらないよう普段以上に気を使うべき場面なんだ。もっと別の出し物を......」
「えいっ♪」
デコピン。そう聞けば可愛らしいように感じるが、人とドラゴンには体格差というものがある。自分の身長と同じ程に大きい指で弾かれた結果、物理にまつわる諸力に従った僕は当然椅子ごと床にひっくり返った。
「いっつ~......」
「ちょつ、大丈夫ですか!?」
「竜宮、何思考!?」
視界がチカチカしている、受け身は間に合ったので頭は打っていないが、尻と背中が痛い。どうにか上体を起こして状況確認、宇野さんは心配そうな顔でこちらをみていて、突飛な行動をした辰子の方を向いているのが火野さん。
幸いと言えるかわからないが、ひとまず出血や眩暈などの危険な兆候は出ていない。
「加減が上手になったな……昔のままなら教室の端まで飛んでったろうし」
「えっへへ~、でしょ?どう、冷静になれたんじゃない?」
「うん、おかげで落ち着いた。ありがとう」
「フフン、どーいたしまして!」
「だが許さん」
立ち上がって椅子を元の位置に戻した僕は、それに座らないで筆箱に手を伸ばし、手早くボールペンを取り出して辰子の指先に突き刺した。
「ピャンッ!?」
痛覚の鈍いものが多い大型の種族だが、意外と体の末端は痛みに弱い。今回は丁度爪と肉の隙間にボールペンの先端が当たったようなので、タンスの角に小指をぶつけた程度の痛みではないだろう。
「ひ、酷い!女の子に乱暴するなんて!」
「男相手でも乱暴しない!今のだって大怪我してもおかしくなかったぞ!」
「俊哉だったら大丈夫じゃん!」
「僕だって痛いもんは痛い!」
「だって俊哉が私が気にしないって言ったのに同じ話を蒸し返そうとするから……」
「元はと言えば辰子が馬鹿力の癖にだな……」
売り言葉に買い言葉、とはこういうことだろう。僕と辰子が不毛と言い争いをし始めたところで、僕の後ろから声がかかった。
「おい鈴木。犬も食わない夫婦喧嘩をしているぐらいなら任せたい仕事はいくらでもあるんだが?」
「あ、ごめん倉田くん……誰が夫婦だ!」
「落ち着け、情緒不安定か?」
「この状況で落ち着きがあるのもそれはそれでおかしいのでは……」
宇野さんの言葉にちょっと冷静になって周囲を見回すと、皆驚いたような怯えたような顔でこちらを見ている。騒ぎすぎただろうか。
「違う、さっきから取っ組み合ったり椅子ごと倒れたり、総じて物騒なんだよ」
「あ、そっちか」
言われるまで気づかなかった辺り僕は宇野さんの毒舌や辰子との激しめスキンシップが日常になっていたせいか、どうやら攻撃的な雰囲気に慣れすぎてしまったらしい。
「全く……宇野のようにモノローグを読めとまでは言わんが、周りの空気ぐらいは読んでもらいたい物だ」
「待って下さい、私が人の心を読めるかのように言うのは……」
「うん……ちょっと頭に血が上ってたみたいだ。落ち着いたよ、ごめん」
「私も……驚かしてごめんなさい」
「右同、謝意提示。御免」
自分たちがクラスメイトに迷惑をかけていたことに気付いた僕たちは呆れた顔の倉田くんと皆に頭を下げた。こちらを見ていた皆は気にしなくて良いと言うように軽く手を振ったり頷いたりと、それぞれの仕草で返答してくれる。
種族の違いなど関係ない、この学校ならではの暖かい返事だった。
「ほら、お前らいい加減作業に戻るぞ。時間は無限に在る訳じゃないんだ」
「「ハーイ」」
倉田くんがパンパンと手を打って、クラスメイト達に作業を再開するよう促した。皆がそれぞれ担当の仕事に戻っていく中、僕らも座り直して改めて話を再開する。
「さて……宇野さんのサードアイのことだけど」
「議題は辰子ちゃんを安全に文化祭に参加させることでしょうが!」
あれ、そうだっけ?
「ノーです辰子ちゃん。そもそもアレの目は三つ、私では二つほど足りません」
「肯定、話題、宇野超能力者疑惑」
「違います違います、火野さんも読心から離れてください」
「そうだよ、宇野さんがモノローグを読んでる件についての話だよ」
「あってますけど違います、立て続けにボケないでください......」
突っ込む方の身にもなってくれと嘆息する宇野さん。正直もうちょっとふざけたかったが、辰子からやんわりつつかれて止められたので自重する。
「あー、僕の企画は無しにするって話だったよね?文化祭は異種族のことをよく知らない人もたくさんくるわけだから差別思想に繋がらないよう普段以上に気を使うべき場面なんだ。もっと別の出し物を......」
「えいっ♪」
デコピン。そう聞けば可愛らしいように感じるが、人とドラゴンには体格差というものがある。自分の身長と同じ程に大きい指で弾かれた結果、物理にまつわる諸力に従った僕は当然椅子ごと床にひっくり返った。
「いっつ~......」
「ちょつ、大丈夫ですか!?」
「竜宮、何思考!?」
視界がチカチカしている、受け身は間に合ったので頭は打っていないが、尻と背中が痛い。どうにか上体を起こして状況確認、宇野さんは心配そうな顔でこちらをみていて、突飛な行動をした辰子の方を向いているのが火野さん。
幸いと言えるかわからないが、ひとまず出血や眩暈などの危険な兆候は出ていない。
「加減が上手になったな……昔のままなら教室の端まで飛んでったろうし」
「えっへへ~、でしょ?どう、冷静になれたんじゃない?」
「うん、おかげで落ち着いた。ありがとう」
「フフン、どーいたしまして!」
「だが許さん」
立ち上がって椅子を元の位置に戻した僕は、それに座らないで筆箱に手を伸ばし、手早くボールペンを取り出して辰子の指先に突き刺した。
「ピャンッ!?」
痛覚の鈍いものが多い大型の種族だが、意外と体の末端は痛みに弱い。今回は丁度爪と肉の隙間にボールペンの先端が当たったようなので、タンスの角に小指をぶつけた程度の痛みではないだろう。
「ひ、酷い!女の子に乱暴するなんて!」
「男相手でも乱暴しない!今のだって大怪我してもおかしくなかったぞ!」
「俊哉だったら大丈夫じゃん!」
「僕だって痛いもんは痛い!」
「だって俊哉が私が気にしないって言ったのに同じ話を蒸し返そうとするから……」
「元はと言えば辰子が馬鹿力の癖にだな……」
売り言葉に買い言葉、とはこういうことだろう。僕と辰子が不毛と言い争いをし始めたところで、僕の後ろから声がかかった。
「おい鈴木。犬も食わない夫婦喧嘩をしているぐらいなら任せたい仕事はいくらでもあるんだが?」
「あ、ごめん倉田くん……誰が夫婦だ!」
「落ち着け、情緒不安定か?」
「この状況で落ち着きがあるのもそれはそれでおかしいのでは……」
宇野さんの言葉にちょっと冷静になって周囲を見回すと、皆驚いたような怯えたような顔でこちらを見ている。騒ぎすぎただろうか。
「違う、さっきから取っ組み合ったり椅子ごと倒れたり、総じて物騒なんだよ」
「あ、そっちか」
言われるまで気づかなかった辺り僕は宇野さんの毒舌や辰子との激しめスキンシップが日常になっていたせいか、どうやら攻撃的な雰囲気に慣れすぎてしまったらしい。
「全く……宇野のようにモノローグを読めとまでは言わんが、周りの空気ぐらいは読んでもらいたい物だ」
「待って下さい、私が人の心を読めるかのように言うのは……」
「うん……ちょっと頭に血が上ってたみたいだ。落ち着いたよ、ごめん」
「私も……驚かしてごめんなさい」
「右同、謝意提示。御免」
自分たちがクラスメイトに迷惑をかけていたことに気付いた僕たちは呆れた顔の倉田くんと皆に頭を下げた。こちらを見ていた皆は気にしなくて良いと言うように軽く手を振ったり頷いたりと、それぞれの仕草で返答してくれる。
種族の違いなど関係ない、この学校ならではの暖かい返事だった。
「ほら、お前らいい加減作業に戻るぞ。時間は無限に在る訳じゃないんだ」
「「ハーイ」」
倉田くんがパンパンと手を打って、クラスメイト達に作業を再開するよう促した。皆がそれぞれ担当の仕事に戻っていく中、僕らも座り直して改めて話を再開する。
「さて……宇野さんのサードアイのことだけど」
「議題は辰子ちゃんを安全に文化祭に参加させることでしょうが!」
あれ、そうだっけ?
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる