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6話【旅人の記録書】*
しおりを挟む地下に行く際に用意したランプに火を灯し手に持ち先導者の騎士が恐る恐る階段を降りて行く。後に続く彼らの後方を、ヨナはルーを連れて降りていき、奥に進めば祭壇と、その上に虹色に輝く水でできた球体が宙に浮いていた。
「なんだこれは。」
「…はあ…」
「綺麗だ…」
輝く球体を目にした騎士たちは恍惚になり、球体を求めてふらつきながら祭壇へと進む。 祭壇前はくりぬかれたように深い穴があり祭壇下だけが土の柱となり、祭壇を支えている。ヨナはいちはやくそれに気づいて、結界を作った。穴へ落ちかけた騎士たちは結界の壁にぶつかり尻餅をついて正気に戻る。
「はっ。」
「今のは?」
「何していたんだ!」
倒れこむ騎士たちは球体を追った覚えもなく呆然とするなか、ヨナはルーと前へと進めば自分の作った結界をすりぬかけ祭壇前へ立ち止まる。
ヨナは両手を伸ばし掌から光の無数の矢を放つと、球体はぐにゃぐにゃと歪み初めた。
「ヨナ!どうするつもりだ!」
結界の中では中将ルイスが剣を今にも抜くように剣の柄を掴み構えて叫んだ。
「私とルーは魅了が効かないように魔法をかけています。今、球体に刺激を与えて私に興味を向かせてるんです。球体が魔物を呼ぶようなら助けてくださいね。」
前へと進むヨナは横を向き、中将ルイスに向いて笑顔を向け、理由を説明すると、再び前を向き、騎士達に背を向け歩みを進めた。球体がぐにゃぐにゃ歪みヨナとルーをのみこめば、球体の中央に浮遊する古い本とヨナは対面をした。ルーは丸くなってヨナと書物のやり取りを見守り地上の騎士たちも見守っていた。
・ * ・* ・ * ・
ヨナと古書はいまだに球体の中に浮遊するなか、下では古書の異変に気づいた何かが辺りに出現していた。神殿の書物が奪われると困る者達はかつて神殿に関わった近隣の村人達だった。
結界は魔法避けのもの。結界に魔法からは守られ地上への入り口がある反対側に向いた騎士たちは地上から現れた剣や斧を持つ村人に立ち向かい、戦いがはじまった。
「相手は村人だ、命は奪うな!」
「「はい!」」
中将の掛け声で、先導役が先陣を切り号令をかけて駆け込んでいった。
「突撃!!」
* ・* ・ * ・ * ・* ・ *
古書の記憶がヨナの前に映像となり現れていた。
一人の青年と巫女の記憶だった。
白く輝く太い柱がいくつも伸び、神殿の天井を支えていた。壁一面に石像が並び、祈りを捧げる広い部屋と地下に続く入り口があった。地下には巫女だけが入る祭壇があり、若い巫女が祈りを捧げていた。
巫女が地上に現れるのは限られた日だけ。巫女はその容姿と魔力を守るために閉じ込められていた。ある神殿の特別な日、巫女は神殿に祈りに集まった民の前に姿を見せれば彼女に祈りを捧げる。
良いことがあったと、感謝の金銀財宝が集り、神官たちはそれを隠し溜め込んでいった。そんな日に、旅人の魔法使いの青年が神殿にたちより巫女とであった。
巫女を人目みて惚れてしまった青年魔法使いは近くの村に滞在し神殿の様子を記録し始めた。
1日目、2日目、3、4、5記録をして気づいたのは、神官の行動だった。貢ぎ物を運び出して、地下へと運ぶところ。巫女は特定の日しか地上には出ることなく青年はある日地下にいる巫女はどうしているのか会いたい気持ちが膨らみ神官の目を盗み地下へと通った。初めて地下に行くと、目にしたのは巫女の姿。
食事は貢ぎ物から摂っているのを目にしその後はひたすら祈りを捧げる。毎日顔をのぞかせば優しい巫女は徐々に青年と言葉を交わす仲となり、そんなある日。神官に青年の行動が見つかってしまう。地下で巫女と親しげに話をする青年に危害を加えた神官は驚愕する巫女が、青年を庇い負傷してしまったのだ。
「いつかあなたを外へ連れ出して差し上げます。」
「ええ。外の世界は何があるのか楽しみですね。」
巫女は目をキラキラ輝かせるなか、青年は巫女の手を取り彼女に告げた。
「連れ出したなら、あなたを妻に迎えたいです。」
「はい。よろしくお願いいたします」
いつのまにか、心が惹かれ会うようになり、巫女と青年は抱き締めあい口づけを交わした。
そして見つかり、神官の振り上げた剣は青年を庇った巫女の少女に刺さってしまい青年の腕の中で巫女は命つきる。
青年は激高。魔法使いの彼は破滅の魔法を唱えてしまう。神殿は崩壊、青年は自ら命をたち魂は彼の身に付けた日記に宿った。
それは神殿がなくなるまでの記憶。深い悲しみから生きた本となり地下にとどまる巫女がいた場所にとどまり続けている。彼女を忘れないために。
・ * ・* ・ * ・
自分の恋人をなくした悲しみに、違う意味ではあるが失った悲しみを持つヨナはごく自然に目からホロホロと涙を流し涙の一部は球体内で浮遊する本にパラパラと落ち染み込んで行き本は光り初めた。
「私があなたの思い出を守ります。私はあなたのように命を宿した本の集まる図書室の管理をする魔女。どうか私についてきてくれませんか?」
球体は閃光を放つとぱさりとヨナのてに収まり、ヨナは球体が消えたことで地面へと落下、従魔のルーの背にポフンと座ったヨナは本を抱えたまま村人と戦う騎士達の元へとむかった。
光の中から現れた白い狼の聖獣にまたがる白銀の髪を靡かせ現れたヨナに村人も騎士も目を奪われた。
「本はついてきてくれるそうです。」
中将ルイスの前に着地したヨナは本を大事に抱えて笑顔を向けた。
「撤収するぞ…」
中将の声に先導役が掛け声を上げる。
「はい。撤収!!」
村人を掻き分け騎士たちは地上へと向かい、ヨナはすれ違う村人たちに声をかけていった。
「私たちは本に用があるだけですからこれで帰ります。今までどうり、この神殿をお守りください。」
ヨナは頭を下げ、彼らに背を向けると騎士達の後を追って地上へとむかった。
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