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9 初遠征 no.④
しおりを挟むルカは神殿を守る騎士を見つけると…それを囲むように近隣住民が武器を持ち何度も神殿へ攻撃する様子が目に入っていた。
(ん?)
ルカは上空を旋回しながらクトが住民から攻撃を受けずにいる様子に違和感を感じた。
(神殿しか興味ないのかな?クトさん、簡単に騎士団のみんなに合流してる。住民が何かおかしいのかな?)
ルカは急降下し、試しに住民の肩にのってみたり、ツンっとつついてみたりしたが、何の反応も示さなかった。
(術にかかってるというやつかな?神殿の神官さんとか、知ってるのかな?彼らは魔法が使えるよね、もしも、神官さんが気づいてないなら…これ、なんとかなるんじゃないかな?)
ルカは住民の輪から飛び出すと、神殿を守る騎士達のもとへと飛び、その中心にいるライドの側にある石像の頭へと止まった。
「ライド団長、ルカです!今住民の様子を見たんですけど、何かに操られていたりしませんか?」
「あっ!僕も思いました!」
クトは、ルカの言葉に賛同するように声を発した。
「僕、一人でいたのに、領主の屋敷にも追いかけてこないし、彼らは神殿にしか興味が無いみたいです。」
「そうか、神官が奥で祭られている竜を守っているから、彼らの力を借りた方が良さそうだな?」
「僕、行ってきます!」
「ああ、頼んだ。」
クトは、神殿の最上階を目指して階段をかけ上がってゆくなか、住民の目が赤く光ると、また激しい攻撃を始め、騎士たちは必死に剣で応戦をした。
ライドの背後に知らぬ間に現れた敵は住民と同じような服装に黒い布で顔を覆っており、剣を持つうでを息を潜めて振り下ろそうと攻撃を仕掛ける直前、黒鷲の足が敵の腕に爪をたてて動きを防いだ。
「ちっ。」
顔を黒い布で覆われた人物は舌打ちをして必死にうでを振り、ルカを振り落とそうとするがルカは腕を掴む足にさらに力を加え爪が腕にめり込んでいた。
「団長、この人怪しいですよ!周りの住民は目が赤くて虚ろなのに、この人だけ表情が違う!」
ルカの攻撃で術の力が弱まり、操られていた住民は夢から覚めたばかりのように目をぱちくりさせ、辺りをキョロキョロと見渡し、現状を飲み込めずに呆然として、騎士たちが、住民の手から凶器となる農具や剣や包丁を回収して行くなか、神殿内から神官達とクトが現れた。
「お前の仕業か?」
神官達は、ルカが未だに腕に爪を立てる覆面の人物にそう声をかければ、覆面の人物は、諦めたようにその場にペタンと座込み、ルカはようやくそこから離れて、足の爪を引っ込め(もともと魔法で爪を強化させて伸ばしていた。)一番側にいたライドの肩へととまれば、ライドは覆面の人物を取り抑えた。
+ + +
犯人は神官達の元弟子で神官達と揉めて辞め、『神殿を崩壊させようと、お供えものや布施のトラブルを面白おかしく膨らませ、住民の怒りを利用し術をかけた。』と言うものだった。
暗くなった領主の屋敷に繋がる道を騎士の一団は馬を走らせ、ルカは飛び立つことなく、ライドの肩にとまったまま、うとうとと居眠りをしていた。
ライドの馬と並走させる馬に乗るクトは、怨めしそうに、ライドの肩にとまるルカを見上げ、頬を膨らまして睨んでいた。
「ルカずるい!僕だって頑張ったのに!」
そう小さく呟いていた。
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