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コイノハジマリ
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しおりを挟む〈ミュウラ〉
「ミュウラ、お淑やかにね。」
「はい、お父様」
私は今日カエン様の職場に父と向かっています。父の職場はお城なので、騎士団施設から近く、私のお見合いを見届けてからお城に向かうとの事。
私は見合いが終われば馬車で帰るように言われていて…馬車はあっと言う間に騎士団の施設へと到着しました。
「お父様、ここが騎士団の!」
「ミュウラ、わかっているだろうが、お前はもう騎士団候補生じゃないのだからね。」
「はい…」
(お父様、騎士養成所を卒業生は騎士の称号をいただけるのですよ)
と、思わず心の中で父に突っ込みを入れてみた。
施設内は養成所と同じあまり良い匂いがする場所じゃありませんでした。でも、とっても懐かしい匂い。
「施設の管理人をしております、リアと申します。副団長様のお客様でございますね?応接室にご案内いたします。どうぞこちらへ。」
出迎えた人間の種族である白髪の壮年管理人の案内で応接室に入りました。
夢にまで見た騎士団の施設。違う未来があったなら、私も騎士としてここに務めていたかもしれない。想像を膨らませるほどワクワクが増長して、応接室のソファーに父と並んで座っても、興奮は収まらず、落ち着きなくあたりを見回してしまった。
扉が開き、現れたカエン様は鬼神と呼ばれていて…その呼び名のとうりに鉄壁な無表情に鋭い目をしていました。
思わず目が合い、私は目を輝かせれば…カエン様は少し立ち止まり、後ろから現れた騎士団長のお父様に背中に拳を受けた。
「カエン、いつまで待たせるんだ!」
カエン様は、少し痛がりながらも私達に挨拶をされた。
「カエン・レッド・リシュアです。本日はお時間をいただきありがとうございます。」
私もそれに答えるために挨拶をした。だけど尊敬するカエン様を前に私は緊張していた。
「ミュウラ・レッド・ライーズと申します。この度は、お忙しい中、会って下さりありがとうございます!私、私、カエン様をお慕いしております!ぜひ手合わせをねが…っ」
「ミュウラ、」
私は父の声に遮られ、やってしまったと思った。今日は見合いに来たのだ。騎士団に入団したわけじゃない…残念だけど。
そして父と騎士団長様は席を立ち私は対面するように置かれたソファーに座るカエン様と二人きりになって…しばし沈黙のあと、カエン様は、私に言いました。
「ここは、男臭い。あなたをこんな場所へお迎えしてしまい申し訳ない。俺はこのとうり、女性と無縁な生活をしている。あなたを特別扱いできるほど器用じゃないんだ。」
「そうですか…」
私は鬼神と呼ばれるほど強くて怖い事で有名なカエン様に尊敬している。騎士のお役目に熱心であるから鬼神と呼ばれるほどに自分や周りに厳しいのです。
カエン様が私に気遣ってこんな事を言われるなんて。大丈夫だとお伝えしなくては!
「お気になさらず。私は大丈夫です。それより、またお会いできますか?迷惑じゃなければここにまた来ますが?」
私はこの施設に来れるだけでも貴重で…カエン様とお話しできるなら最高。手合わせは無理かもしれないけど…私に興味を持ってくれたなら…よい返事がもらえるはずよね?
私の言葉に…カエン様は私を直視。目は泳いでいて、なんとなく動揺して見えたのでした。
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