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しおりを挟むリシアは、シアンに私室を案内された。室内は思っていたよりも広く、マナ国のリシアの部屋と近いもので、髪色に近い空色のレースのカーテンの天秤付きベッド。ベッドの枕は3つ。白いレースのテーブルクロスのかかった丸いテーブル。その上にはピンク色の革張りのアクセサリーケースが置かれていた。
「シアン、もしかしてあなたが部屋を用意したの?」
「ええ。記憶にある姫様のお部屋に近い内装にしてもらいました。姫様は大人たちの事情でここにいるのですから、生活エリアぐらいゆっくり過ごせなくては。」
「ありがとう。」
「いえ、いえ、当然のことをしたまでです。お荷物はお部屋に片付け、箱はベッドの下の収納スペースに収まっております。」
リシアは部屋をくるくるとまわるとシアンの手を取り再び感謝の言葉を述べたのだった。
「シアン、本当にありがとう。それと…聞いてもいいのかしら…2年前のこと…」
リシアは、2年前に…シアンのスカートから見えていた長い尻尾が今は見えないことを気にしていると、シアンはリシアの手を握り返し笑顔で頷き話し始めた。
「私は伝書鳥を使いマナ国の情報をこの国へ流していました。ある日、マナ国の宮殿の庭を巡回していた近衛騎士に捕まり…すきをみて逃げ出しました。あとは…潜入していた仲間の荷馬車に隠れてクラ国へと帰ってきたんです。」
シアンはリシアから手を離すと侍女の黒いワンピースのスカートをめくり短くなった尻尾を見せた。
「脱走で負傷したのは尻尾だけで済んだんです。奇跡ですよね?ふふふ。こうしてリシア様に再会でき…またお世話ができるのですから。ですが、マナ国を裏切ったことは変わりないので…リシア様に嫌われてしまったかもしれませんね…。」
「シアンを嫌いになんてならない。事情は知らなくても私は伝書鳥の事をずっと知っていたんだもの。」
「姫様。」
「シアン、もう急に消えないでね?」
「勿論ですとも!」
二人は手を取り合い笑っていると、部屋の扉を叩く音がした。
トントン。
「リシアお嬢様、お食事の用意ができました。」
「今行きます。」
扉の外から聞こえる執事の声に答えたリシアは、シアンの案内で、部屋の1番奥のダイニングルームへと向かった。
羊の獣人の料理人がテーブルに、食事を並べ、執事は椅子を引いてリシアを椅子に座らせ、シアンは飲み物をリシアの前に置かれたコップへと注いでその後は皆壁に整列した。
「皆さんは食事は済んでるのかしら?」
「私達はリシア様のお食事のあとに厨房で食事をしますのでお気になさらずに。」
シアンの言葉にリシアは食事の手を止めた。広いテーブルは4人は余裕で座れる。一人では広すぎるテーブルに、リシアは息が詰まる思いがした。
「普段は家族で食事をしていたから…1人は寂しいかな。ねえシアン、皆で一緒に、ここで食事したい。賑やかが良いの…だめかな?」
シアンは壁に整列する3人に目を向け潤んだ瞳で懇願すれば、皆小さなため息を漏らした。
「「「良いのですか?」」」
皆同時に、答えシアンは、嬉しそうにコクリと頷いた。
こうして同じ屋根の下で暮らす者たちと、リシアは距離を縮めたのだった。
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