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繋がる記憶 3
しおりを挟む津香咲はこの親睦会でそれなりに皆の会話に入ったり何とかこの場を乗り越えた。
親睦会が解散する中、六田は数名残った男女と二次会へと向かい、津香咲と健太に手を振り別れた。
「健太、坂梨さんちゃんと家まで送るんだぞ?」
「うん。」
健太は口数少なく頷くと津香咲と歩き始めた。
津香咲はあの場では聞けなかった事が気になりながらも、聞いたらいけないけない事だと考え、それ以上考える事を放棄しようと、脳内は必死に葛藤していた。
そう、辛くなるといけないから聞いちゃだめ。いくら私の中で人を助けたんだと、傷痕を誇らしく思っても…身近に悲しむ人がいるんだもの。
私のエゴで思い出させた…
傷痕を可哀想だと思わせたら…
責任を感じさせデモしたら…
ダメダメ!これ以上考えたら余計に口を滑らせちゃう。
「坂梨さん?」
津香咲は脳内で葛藤しながら口をへの字にしていたら、心配そうに顔を覗き込む健太の顔を間近にし、男性に免疫の無い津香咲は口元を隠して顔を赤くした。
「ひゃい。」
「ふふふ、ごめん。覗き込見すぎたね…」
津香咲は口を両手で隠したまま首を横に振った。
「妹がいない時じゃないと聞けない事だから…今聞くんだけど…坂梨さん小学校の頃小さい子助けてくれたよね?小学生の兄を迎えに母親と来た小さい女の子。」
(私、何も言ってないよ?どうしよう。でも…嘘はつきたくない…)
津香咲は目をパチクリとさせ、ゆっくりと頷き、恐る恐る健太を見つめた。
「どうして知ってるんですか?」
「やっぱり。カフェの帰り道でとおった…ある場所で大きな音に反応したときの姿をみて確信したんだ。あそこは昔工事現場で、妹をかばった女の子が怪我をした場所だったから。」
「サトちゃんはその事は…?」
「妹は多分覚えてない。だから思い出したらどうなるか心配だし、いないときに坂梨さんと話がしたかったんだ。あの時はありがとう。妹は昔甘えん坊で手を焼かされてて、君がいなかったら多分死んでいたかもしれないんだ。いつか会えたらお礼が話したかった。」
私はその言葉にほっとした。
(あっ、もう一つ彼は私を振ったこと覚えてるのかな?はるか昔の事だから…覚えていないかもね。私は思い出してから、健太くんが気になっているなんて恥ずかしくて言えないけど…元気そうでよかった。)
私は昔を懐かしみながら彼と別れて帰路についた。
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