炎竜の小さな許嫁

yu-kie

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5 *習慣と世話役*

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 馬車は王都を抜けて、休むことなく走りました。馬車の中にはと向かい合って座る初老の女性が一人、私のお世話役の女性だと言うことです。名前はイロハ・クラド。子育てを終え、息子さんが結婚して山脈の端の砦へ夫婦で旅立ち、今は夫と二人暮らしをしているそうです。騎士のリーラスさんと違う柔らかい表情で常に笑顔を向ける、白銀の髪を結い上げた黒いワンピースを身に付けた人。

「花嫁様、向こうにつく前に心構えをいくつか。まずは、炎竜一族直系のカイ様のご両親は近親者同士でございます。長老様も同じでございます。」
「…私は異例と言うことですか?」
「ええ。炎竜一族、族長であるカイ様のお父上様は、キーラル国の王家の血筋を引くヒリイス家との縁を結ぶ事で、キーラル国の一部のものが抱く炎竜一族が『国の侵略を企てている』と噂を打ち消す事ができるとお考えです。花嫁様はいてくださるだけで抑止力になるのです。ですから、決して逃げ出すことは無いようお願いいたします。」

「はい。」

私は世話役の女性の目を見て返事をすると、彼女は再び話を続けました。

「あなた様は人間。子を成せば血は薄れ竜体になれるお子は難しくなります。場合によってはカイ様に第2婦人を迎えることもあり得ることをお察しくださいませ。」

「えっ…」

 私は言葉が詰り返事なんてできなかった。どう答えてよいのか考えていると世話役の女性はもうひとつ、大事なことを教えてくれた。

「今話した事は今日こんにちに至るまでの炎竜一族に伝わる習慣でございます。異例な事から始まるのですから、この先の事は誰にもわかりません。あくまでも、過去の話として覚えておいてくださいませ。」

 私は何もわからないまま『お嫁に行く。』訳ではない。私なりに炎竜一族を学んできたのです。魔導士になり、強くなろうと努力したこともその為。異例から始まるのだからぶつかりながら前に進むだけ。

「イロハさんのお話はよくわかりました。花嫁として役目を果たせるよう頑張ります!」

 私は自分の中での満点笑顔で両手に拳を作りイロハさんに頑張ることをお伝えしたら、目に涙をためながら笑われました。

「本当に可愛らしい花嫁様ですね。人伝ですが、花嫁様は強くなろうと努力されているとか、花嫁様の勇姿を早くみたいものです。」
「う~ん、勇姿ですか。ふふふ。しおらしくいられませんよ?」
「まあ、お転婆なので?」
「よく言われます。ですが、今は内緒ですよ?」
「まあ、二人だけの秘密ですか、」
「そうですね。イロハさん、よろしくお願いいたします。」
「はい花嫁様、よろしくお願いいたします。」

<< 馬車内は途中から和やかに、時折笑い声が漏れ出て、護衛につく騎士たちは何を話しているのかとそわそわと時折り耳を澄ませた。>>

 途中馬車を止め休憩をしながら夜が明け、早朝には山脈の麓にあるお爺様の治める領地に到着、馬車はそこからスピードを増し、あっとゆうまに、連なる山脈の中央辺りの、山脈を統治する炎竜城へと到着しました。

 沢山揺れ、馬車に酔ったり。ふらふら身体中が軽い筋肉痛になってしまったのでした。

 私の花嫁修業はもうすぐです。緊張します!

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