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10 *許嫁の反撃*
しおりを挟む目覚めると、そこは砦ではない、麓の小屋だった。
ここは隣の…グラシア帝国側の国の境界線にある小屋。小屋内には地下通路があり、黒装束達が出入りし、ルイは小屋内で黒装束数名の監視の中、袋から出され拘束されていた。
*
この人達、何が目的なのかしら?私が魔法使えることも知らないみたいだし、逃げてもいいけど…彼らにぎゃふんと言わせたい…ここは大人しいふりして様子を見ることにしようかな。
*
人質となったルイ。
人質をとれば、おのずと犯人達は主犯者に報告をするわけで、主犯者は炎竜の『女』に興味を抱くもの?
その日の夕方。ルイは退屈そうに、口をへの字にしてあくびを耐えた。
「将軍が来られた。炎竜の女はいるか?」
小屋を覗きこむ黒装束が小屋のなかでルイを監視する黒装束に声をかければ、「いる」と短く答え、小屋の扉は全開し、黒装束の案内で、黒く輝く鋼の鎧を纏う青年が現れた。
「お前には人質になってもらう。山脈を奪ってやる。」
「……」
「お前は口も聞けないのか?」
「…私の名はルイ・ヒリイス。あなた方は何者ですか?」
「俺はラジア・グラシア。」
「…グラシア帝国の…私はその駒にするんですか?トラップとか?炎竜様助けに来たら返り討ちに合うとか?馬鹿げてる。」
(人質に?帝国なら目的は1つしかない。私を使って侵略をしようとしてるんだ…半日この人達を泳がしていたけど、もう無理。ちょうどグラシア帝国の偉い人みたいだし…)
興奮状態となったルイの回りには風の渦の柱が何本か出現して小屋を崩した。
「何が起きたんだあー」
逃げ惑う黒装束の男達。ルイは手から竜巻をおこし、山脈側の目に見える竜の巣へと飛ばせば、巣を荒らされ怒った竜は逃げ惑う黒装束へめがけて襲撃を始めた。
ルイの体は風の渦に守られラジアの行方を目で追った。
「そろそろ、捕獲してもらおうかな。ふふふ。」
竜の襲撃で黒装束達は逃げ惑うなか、風は突如静まり、ルイはふわふわと宙に浮いたまま、荒れ狂う竜に向け片手をくるくると回すと、催眠魔法により竜達は眠り始めた。
山脈は竜の騒ぎで集まった炎竜達が集まっており、ルイは炎竜の群れに手を振った。
「カイ~!ラジア・グラシアがいるよ!」
「ルイ、そこにいたのか!」
ひときわ大きな炎竜が急降下し、黒装束達は将軍ラジアを逃がそうと盾になるなか、ルイは宙に浮いたまま、突風をおこし操り、黒装束達とラジアをキーラル国側、炎竜の領域側へと吹き飛ばした。
カイは隣国に足を踏み入れる事無くそのまま侵入者としてラジア達を捕獲した。
炎竜達は砦へ捕獲したもの達を運び、ルイはカイの背にのり、砦へと向かった。
砦では、駆けつけたリーラスはカイと手を取り歩くルイに土下座した。
「花嫁様!申し訳ございませんでした!あなた様から一時でも離れたことお許しください!」
「リーラス、君には失望したよ。騎士の職は荷が重すぎたようだね?」
カイは怒り震える声でリーラスを睨み付ければ、女性であるがゆえの苦労を知るルイはリーラスの前に座り込みカイを睨んだ。
「カイ!あなた言ったわよね女は弱い生き物だって!そんな女性が騎士になるのは大変なことよ?砦内なら安全だと思っておかしくないわ!自分のみは自分で守れなくては!リーラスさんのせいじゃない!私の油断からよ?カイが必要ないなら、私の正式な専属護衛騎士にしてもらうから!」
「…わかったよ。だからルイ、もう怒らないで。」
「わかってくれたならいい。」
*
何故だろう。私…あれだけリーラスさんに嫉妬していたのに、カイが時々女性軽視てきな発言は許せないのよね!また興奮して宣言しちゃったけど、力は暴走させなかったから、私にしてはじょうできかな?
さっきの騒動で発散したからかもしれないね。
*
こうして、リーラスは宣言どうりルイの専属護衛騎士になり、砦の牢では、グラシア帝国の侵入者の尋問が始まった。
数ヵ月に渡りグラシア帝国との交渉が行われ、数多くの条件を皇帝はしぶしぶ受け入れ、ラジアは解放された。
皇帝は息子の失態を機に山脈に手出しを一切することはなくなったのだった。
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