【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

文字の大きさ
168 / 176
湖畔の孤児、祓魔師の愛を悟る

6.私の気持ち

しおりを挟む



「じゃ、いただこう」

「……はい」

向かい合って席に着く。それはそれは豪華な料理の数々に、私は空いた口が塞がらなかった。

茹でパンは今朝出来上がったばかりのようにふんわりしっとりしていて、いつも食べているのとは明らかに違う。しかも切れ目が入っていて、中にはお肉みたいなのやお野菜みたいなのが挟まっている。

孤児院でもこういうのが出たことがあって、美味しかったのを覚えてる。でも種類の多さが孤児院とは比べ物にならない。どれが何かわからないけど、とにかく美味しそうだ。

ポットに入っていたスープも器に注いで用意をしてくれていた。
透き通ったスープに、たくさんの具が入っている。

そのほかにも大きなお肉の塊や、お野菜を酢漬けにしたもの、こんがりと揚がった何か、等々……

味の想像ができないものまで、色々な料理が並んでいる。

「す、すごい……、これ、全部ニエルドさんが持ってきてくださったんですか?」

「そうだ。どれが好きだ?」

「どれ……えっと、パン、とか?」

かろうじて知っている料理名を口にすると、ニエルドさんは私のお皿に次々と取り分けてくれた。

「このサンドイッチはうちの執事の好物だ。確かアイツはお前と同い年だったな。どれがいい?  肉と葉野菜を挟んだものと、卵のペーストを挟んだやつと……まあいい、全部食え。それからこれは肉を炭火で焼いてある。根菜の酢漬けと一緒に食べると美味い。こっちの揚げ物も中々だぞ」

「あっ、そ、そんなにたくさん……」

「いいから一通りつまんでみろ、苦手だったら残せばいい、俺が食うから」

「いえ、残すだなんて!  全部いただきます!」

「無理するなよ」

ニエルドさんに感謝を述べ、料理にお辞儀をしてサンドイッチに手を伸ばす。

柔らかい……。表面が乾燥していないパンを食べるのは孤児院ぶりで、少し緊張してしまう。お肉の挟まった部分を一口食べると、あまりの美味しさに頬っぺたがぴりぴりと歓喜している。

「お、美味しい…!!」

「お、そうか?  んじゃ俺もそれを食おう」

ニエルドさんがサンドイッチに手を伸ばす。
私は、彼よりも先に自分が頬張ってしまったことに気づいて焦った。

「ごめんなさい、おいしそうだったから、つい先にいただいてしまいました」

肩を落として謝ると、大きな手のひらで豪快に頭を撫でられ、「謝るな」と言われた。

「先だ後だのと、そんなことをいちいち気にすんな、神経質か。美味けりゃいいんだ、ほらもっと食え」

「あ……ありがとうございます!」

私は言葉に甘えて、彼が取り分けてくれたお肉も一口食べる。

「っ! こんなに柔らかいお肉……はじめて……」

「うまいか?」

「はいっ!  それに、風味もなんだか食べたことない感じ」

「炭火で焼いてあるからな、香ばしいだろ」

「とってもこうばしいです!  あの……もっとたべても、いいですか?」

「当たり前だろ、俺の了承なんかいちいち得なくていい。全部食うんだろ?」

「はい、いただきます!」

私は目の前の豪華な料理に夢中になっていた。
孤児院でもしっかりと栄養のあるものが出ていたけれど、こんなにも食べ物を美味しいと感じたのは初めてだ。

どれもこれも体に染み渡って、生命を鼓舞してくれる、活力が漲ってくる。

気がつけば、彼の取り分けてくれたお皿は空っぽになっていた。

「良い食いっぷりだな、まだいけるか?」

「ま、まだいただいてもいいのですか?」

「ああ。見てみろ、こんなにあるんだ。遠慮するな」

「はい!」

食べたものが血となり肉となり、私の活力となる。それは当然のことだけれど、生きてきた中でこれほどまでその摂理を身をもって実感したことは無かった。食べ物に元気をもらって…いや、それだけじゃない、ニエルドさんと一緒に同じものを食べるのが楽しい。

食事が楽しい。

私の中に、また初めての感覚が生まれた。

「ニエルドさん……」

呼びかけると、彼は私のお皿に再び料理を取り分けながら返事をした。

「どうした?」

「わたし、ニエルドさんと一緒にご飯をたべることができて、とても楽しくて、うれしいです、心と体が、よろこんでいます」

「それが今のお前の気持ちか?」

「はい」

「ははっ、そりゃいいな。俺も最高の気分だ」

「ニエルドさんもですか?」

「ああ。お前のうまそうに食う顔がたまらなく良い。ほら、おかわりだ」

またいっぱいに盛り付けられたお皿が差し出される。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。

おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。 ✻✻✻ 2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

処理中です...