【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

文字の大きさ
47 / 176
東の祓魔師と側仕えの少年

47.やり残したこと①

しおりを挟む




フレイヤさんの血を啜って、たった今自らが傷つけた首筋を舐める。彼の血が身体中に染み渡るのを感じた。

幸せだ。

生きているうちにこんなに幸せな気持ちになれると思わなかった。もう充分。充分幸せだよ、フレイヤさん。

ありがとう。

僕と出会ってくれてありがとう。


「フレイヤさん……愛、してる……」


僕は深い微睡の中に吸い込まれていった。



ーーーーー



ふわふわと雲の上で惰眠を貪る。そんな夢を見た。

あったかいし気持ちいいしずっとここに居たいな。でも僕には帰る場所があるから、そろそろ行かなきゃ。

でも、どこに帰るんだっけ。


僕の心にはポッカリ穴が空いてる。何かを忘れてる。そんな気分だった。



「———~~~ッ!……~~!」

誰かの声がする。
誰かが僕を呼んでる。

「——は、——……ッ~~」


何?
聞こえない。



「は、———はる…——……晴臣!」





——パチッ



眩しい……



「半間!  目ぇ覚ました!」

「おいお前ら、動かすな!  頭打ってんだから!」

「半目、大丈夫か?」

誰……
半目?  あ、僕のあだ名か。

「いや大丈夫じゃねえだろ、半目くん、血、血ぃ出てるって!」

あ…ラグビー部の、武田君だ。
その素晴らしいガタイでオロオロしてるの面白い。

「保健室っ…いや救急車!!」

みんなの声が大きいから頭に響く。
大丈夫だって。動けるから。動きたく無いけど。

「ん……よい、しょ……」

「お、おい半目くん!  動くなって!  頭打ったんだぞ! 分かるか? あ・た・ま!  上から鉢植え落ちてきて…」

「大丈夫だよ、痛くないもの」

頭より、何だか胸の奥が痛いんだ。

「血ぃ出てるから!  ほら制服も土まみれ」

んー、声が大きいよ。ハンカチハンカチ。
ポケットに入ってた。これで頭をおさえよう。

「血、止まった」

「いやいやいや」

「大丈夫だから。今日は、早く行かなきゃいけないんだ」

「でもお前」

「心配してくれてありがとう。それじゃあ、部活頑張ってね」

「あ、おい………!」


僕はのろのろと急いだ。

みんな優しいなあ。僕を心配してくれるなんて。

でもごめんね、行くところがある。やらなきゃいけないことがある。



まずお花屋さんに行った。

お母さんはリンドウの花が好きだった。
昔はよくお見舞いにも持っていった。綺麗な紫を見てると元気が出るんだって。

お花屋さんのお姉さんは、行ってらっしゃいっていつも言ってくれるんだ。

行ってきますって返事をして、お墓へ急ぐ。


お墓までの道は登り坂がある。
坂は嫌いだけど頑張って登る。
お母さんに早く会いたいから、この道のりだけはいつも頑張る。

足が重たい。
僕はいつも疲れてるんだ。

いつも体が重くて、考えるのも面倒で、半目君なんてニックネームももらっちゃった。でもこれ本当は気に入ってるんだ。響きが可愛いから。

車が通れないくらい細い道を登って、階段を登って、やっと墓地まで辿り着いた。この段の一番奥がお母さんのお墓だ。

あ、今日お掃除道具持ってくるの忘れちゃった。まあこの前も磨いたからいいかな。でもせっかく来たなら墓石を綺麗にしてあげたかったな。

こういうところが僕の悪いところ。もの忘れ激しいし、やろうと思ってたこともすぐ頭から抜けちゃう。

どうしようもない僕だけど、月命日のお墓参りだけは忘れたことない。

今行くからね。お母さん。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。

おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。 ✻✻✻ 2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

処理中です...