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続編その①〜初めての発情期編〜
5.※重たい目覚め※
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———パチッ
「!……、はぁ…寝ちゃった…」
フレイヤさんは隣にいない。
もう午後の仕事に行ったのだろう。
もうちょっとくっついてフレイヤさんをしっかり癒してあげたかったな……まぁ、僕がくっついていたかっただけなんだけど。
グゥーっと伸びをしたり、立ち上がって屈伸をしたりして体を起こすも、なんだかスッキリしない。
顔でも洗おうと洗面台の方を向いた時、目の端に時計が映った。
「え。うそ、3時間も寝ちゃってたの?」
どうりでスッキリもしないわけだ。これが「寝すぎ」ってやつだ。生まれてから今まで長い不眠症歴を重ねてきた人間が3時間も昼寝したら、そりゃ体も重たくなるだろう。
いやでも、ここに来たばかりの頃フレイヤさんの香りにうっとりして誘われるがままに眠りに落ちていた時は、結構スッキリしたんだけどな。
「考えてても仕方ないや、早く起きなきゃ」
もう一度伸びをしてみると、節々がなんだかギコギコとスムーズに動かない感じがした。
その違和感に気づいた途端、だんだんと自分の体が思い通りにいかないような不快な感覚がじわじわ増してくる。
体もちょっと熱い感じがするし。
「もしかして、風邪ひいたかな」
そう自覚してしまえば、もうそんな感じしかしない。ずっと眠いし、体重いし、なんかあついし。
「うわ、どうしよう、もっと早く気づけばよかった。ムニルさんにうつってないかな? 一緒に作った料理食べちゃったし、イザベラとパネースさんも…みんなが風邪ひいちゃったら僕のせいだ。フレイヤさんともキスしちゃ……まぁフレイヤさんは大丈夫か」
とにかく、今日濃厚接触したみんなのことが気になる。
ムニルさん、お店もあるのに。
イザベラとパネースさんも大丈夫かな。フレイヤさんが帰って来たら体調崩してないか聞いてもらおう。
「寝てたら治るかな……」
再びベッドへと逆戻り。
風邪だと自覚した途端、なんだか胸がギュッと締め付けられるように切なくなった。こんなすぐに心細くなっちゃうなんて、まだまだ僕は子供なんだな。仕方ないよ、10代だもの。
こんな弱い僕がフレイヤさんと釣り合うのか、なんてことは考えないようにしなきゃって思うけど、弱くなった僕の心はどんどんネガティブになっていく。
「やだな、こういう気持ち。こんなふうに考えちゃだめなのに」
本当にフレイヤさんの番にふさわしいのか、きちんとフレイヤさんを癒せているのか、側仕えとして役目を果たせているのか。
そんなの考えなくたって、自分の中では分かってる。僕が一番フレイヤさんを好き。彼の隣にいるのはいつだって僕でありたい。
分かってるのに。
一旦ネガティブになったら自分の力では思考を戻せなくなる。
「ゆるしてフレイヤさん……」
頭まで布団をかぶって、寂しさと自己嫌悪に耐える。
意図せず涙が浮かんでくる。
頭もぼーっとしてくる。
本格的に風邪だ。体が熱い。熱くてたまらない。
寝る前に中途半端にフレイヤさんに触れていたからか、体の中心まで熱が湧き上がっている。
「もう、さいあく、こんなときまで。ぼくって変態なのかな」
熱出た時って、こんなになっちゃうっけ?
「もぅぜんぶ、フレイヤさんのせいにしてやる」
思ってもないことが口から出る。
彼の名前を呟くごとに、さっきまで嗅いでいた匂いが目の前で漂っているようにクラクラする。
だめだ、一回触っておかないと眠れっこない。
「ん、」
モゾ、モゾ、と布団から這い出てお手洗いを目指すも、足が思うように動かない。弱っている時まで下半身は元気だなんて、恥ずかしすぎるったらありゃしない。
自分でするのはいつぶりだろう、元の世界でもそれなりに生理現象として反応していたので、自分で処理する時はあった。
でもそういうことに興味はなかったし、むしろ嫌悪感すら感じていた。父親がいろんな女性を家にあげて、一つ屋根の下で父親と知らない女の情事が鳴り響く腐ったような生活は、僕の健全な性的欲求をどんどんと衰退させた。
もたつく足でなんとか数歩歩くも、お手洗いへの道のりは今の僕にとっては遠い。意識は自然と、あるところへ向いていた。
「フレイヤさんの、匂い……」
僕が寝ていたベッドの隣には、先ほどまでフレイヤさんが横になっていた。そこからとてつもなく艶かしい匂いがするのだ。
さっきまではこんなに感じなかったのに。
嗅覚や触覚など、身体中の感覚が敏感になったみたい。太ももに巻いている印章が肌に擦れる感覚だけで、腰が揺れてしまいそうになる。
「フレイヤさん…、」
ベッドに這い寄ってシーツを掴み、フレイヤさんの触れていた部分に顔を埋めると、ありえない刺激と痙攣が僕の腰を襲った。
——ビクビクビクッ!!
「っ…っっっ!!? 」
体を駆け抜ける雷のような衝撃。生暖かく湿った股間の感触。
「……はぁ、っはぁ、え……なんで……」
触ってすらいないのに、彼の匂いを嗅いだだけで果ててしまったのである。
それだけならまだしも、すでに放った僕の陰茎は再びゆっくりと硬度を取り戻しつつあった。
「フレイヤさんっ……」
また彼の匂いがするところへ顔を埋めるも、それだけじゃ足りなくて、僕は自分のものを扱きながら中々達することのできないもどかしさにしばらく悶えていた。
「フレイヤさんが、いぃ…のに……」
切なくなって、また涙が出てくる。おかしい。なんでこうなっちゃったんだ。
彼の香りを追い求めて布団に擦り付けていた顔を一旦離す。ベッドの横に目をやると、彼が毎朝着替えをするクローゼットが目に入った。
「フレイヤさんっ……もっと、」
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