【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

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続編その①〜初めての発情期編〜

17.デート

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◆◆◆

「フレイヤさん、これ変じゃない?」

「とても似合っているよ、ハルオミ」

「ほんとに?  あっ、そうだ髪の毛ハネてないかな、もう一回洗面所…」

「そんなに気にしなくてもいつも通り可愛いよ。その白いシャツも、君の透き通るような肌と合っていて素敵だ」

 デート当日、僕は朝からてんやわんやだった。クローゼットの中(服は屋敷に来た当初ににウラーさんが揃えてくれていた)をひっくり返す勢いでああでもないこうでもないと迷う。

いつもはシンプルなシャツとズボンを部屋着のように着てウロウロしているが、今日はそうはいかない。

結局フレイヤさんが選んでくれたものを着て何度も鏡に映った自分の姿を見るも、隣に彼が並んだ途端非常にちんちくりんに見えてしまう現象に先ほどから苛まれている。

「ハルオミは何を着たってどんな髪型だって愛らしいのだから、もっと堂々としていればいい」

「それは嬉しいけど……町中でフレイヤさんの隣を歩くんだから、少しでも変なところがないようにしないと。だってみんなフレイヤさんの事知ってるんだよ?  フレイヤさん偉大な魔祓い師なんだよ?  自覚ある?」

「ふふっ、君は兄上とパネースの祝言でもそうだったね」

フレイヤさんに言われて、あの時もこんなふうにあたふたしていたなと思い出す。

「隣で歩く君がどんな姿であろうと、私にとっては君が君であるというだけで幸せだ。いつも通りに笑顔で楽しんでくれたら嬉しい」

「うん……そうだね。あの時も、ちゃんと背筋伸ばして笑顔で居たらみんな僕とも楽しそうにお話ししてくれたもんね。今日も、堂々とできるように頑張る…!」

「その調子だ。もし髪が跳ねたり釦が外れたりしたらきちんと教えてあげるから、気負わずに、ただ楽しめばいい」

「うん。ありがと、フレイヤさん」


 僕のしつこい身だしなみチェックにも付き合いきってくれた彼は、「では早速行こう」と手を差し出した。

「手、つなぐの?」

「デートだろう?  祖父母はデートの際に手を繋ぐ。そうするのが普通じゃないのかい?」

なんて素敵な祖父母。

「嫌かい?」

「嫌じゃない!  繋ぐ!  デートだもん」

差し出された手を取り、僕たちは意気揚々と屋敷を出た。執事さんたちに微笑ましそうに見られていたのは(ウラーさんには面白そうに笑われていたのは)気のせいじゃないと思う。

門に立つ軍人さんに行ってきますの挨拶をすれば、ここから先は初めて足を踏み入れる領域だ。フレイヤさんが生まれ育った町。イザベラやパネースさんが、屋敷のみんなが育ってきた東の地という町を、僕は初めて見ることができた。


屋敷から出てしばらくは何もない簡素な風景が続いたが、徐々に民家や露店が増えていき、あっという間におとぎの世界のような光景が広がった。

中世ヨーロッパの雰囲気をそのまま残したようなとんがり屋根の丸い建物や、白い壁に朱色の屋根の可愛いお家が、石畳の通りに建ち並んでいる。

建物が増えると自然と人も増えてきて、皆驚いた表情でフレイヤさんを振り返った。

「フレイヤ様が、町中に……!」
「嘘!  ニエルド様とビェラ様はよくいらっしゃるけど、フレイヤ様が町を歩かれるなんて今まで見たことない」
「目に焼き付けよう!」
「おい!  側仕えのお方と一緒だ、邪魔するんじゃねえぞ!  そっと見守るんだ、そっと!」
「お前も声がでけえよ!  御耳に障るだろ!」
「それにしてもお隣の側仕えのお方、噂以上に美しく愛らしい…!」
「見ろよあの黒髪、艶々で綺麗すぎやしねえか?」
「銀髪のフレイヤ様のお隣に並ぶと、こりゃまた映えるなあ、眼福だなあ」

行き交う人が、話しかけるでもなく近付いてくるでもなく、遠巻きに羨望の眼差しをフレイヤさんに向けている。さすが魔祓い師様だ。

「ハルオミ、まずムニルの店で腹ごしらえをして、それから市場に行こうか」

「うん!  そうしよ!  はぁ~楽しいな~フレイヤさんとこうしてお出かけできるなんて夢みたいだ」

「これからたくさん出かけよう」

「やった~!」

完全に浮き足立ってスキップでもしそうな勢いで歩いていると、テンションを上げ過ぎたのか石ころに躓いてしまい一瞬足がよろけた。

「おっと」

あわや転けそうになったところをフレイヤさんがナイスキャッチをしてくれて、命拾いをした。

そして彼は何を思ったのか、受け止めた僕をそのまま抱き上げ、いつものように腕の中にすっぽりおさめた。

公衆の面前でけしからん。

しかもフレイヤさんが抱き上げた瞬間、周りから「わあぁぁぁっ」といつどんな感情かわからない歓声が聞こえてきた。

「なにしてるの…ちょっとフレイヤさん、おろしてよ」

「今転びそうになっただろう?」

「助けてくれたのはありがとうだけど、ここ道の真ん中だよ?」

「分かっているよ。道の真ん中で君が転んでしまっては危ない。大丈夫だ、私がムニルの店まで連れて行ってやろう」

「大丈夫じゃないよ!」

周りの人の視線が痛い。
ごめんなさい。皆さんの町の大切な英雄、にこんな何処の馬の骨ともわからぬ高校生を抱き上げさせて。

「わぁぁっ!  魔祓い師様が側仕えのお方をお抱き上げになられた!」
「仲がよろしいことで、ありがたや…ありがたや…」
「これでヴィーホットも安泰ですなぁ」


結局ムニルさんのお店に到着するまで優雅に運ばれてしまった。町行く皆様の視線が痛すぎて、フレイヤさんの首元に顔を埋めてやり過ごした。

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