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異世界転移
0 終業式
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生徒が集めれば狭く感じる、暑苦しい体育館。今日は終業式だ。
備え付けのスピーカーから校歌が流れて生徒たちが歌いだす。自分の声も混じる歌声をどこか他人事のように聞き流す。
早く終わんないかな。
きっと誰もが思ってることだ。優等生も、ギャルも、不良も、普通の子も、皆。
時間の進むスピードが遅く感じるなか、何とか他人事に思いつつ終業式を乗りこえ帰路に着く。一緒に帰ろうと何度か誘われたがそれも断って足早に進む。
帰ったらエアコンかけた部屋でアイス食べよう。
呑気にそんなこと思っていたらプリーツスカートのポケットにいれているスマホからメッセージが来たことをしらせる音がなった。
少し無視しようかと思ったが学校や家からの連絡ならそのあとが面倒だ。そう考えた私は道のはしによってメッセージの内容を確認した。
送ってきたのは家、内容は醤油買い忘れたから買ってきてほしいと言うものだった。
「……自分で買いにいきなよ、めんどくさいなあ」
誰も知り合いがいないのをいいことに一人文句を吐く。
アイスはもう少しお預けらしい。
仕方なくさっきまでとは違う、重い足取りで駅前のスーパーへと向かった。駅の前にあるせいで人の数は他より多いであろうこのスーパーはいつも通り五月蝿いざわめきが響いている。
「醤油、醤油っと」
一直線に調味料が並ぶ棚に向かっていく。
ふと視界に小学生くらいの子供がはいった。どうも母親と買い物に来ているらしい、幼いその子は随分としっかりしているのか母にお願いされた商品を持ってきて籠にいれて、そして褒められていた。
いつかの私もあんなことしたな。今は一人寂しくお使いだけどさ。
「お姉ちゃん、僕チョコがいい」
「ええ、こんなに暑いと溶けちゃうよお」
耳にはいったのはさっきのこと同じくらいの女の子と、いくつか下の男の子。会話からして姉弟なんだろう。
二人でおやつでも買いに来たのかあーでもない、こーでもないよ思案している。そのうち決まったのか財布を握ったお姉ちゃんにてを引かれ弟くんは満足そうにレジに向かった。
「あんなこともあったなあ」
醤油のある棚の前に着くと先客がいた。抱っこ紐を使って小さい赤ちゃんを抱えているお母さんだ。
赤ちゃんは私のことが気になるのかこっちを見ている。お母さんは調味料の方に気を取られているのか気づいていない。
「あーうぅー?」
「ふふ、ばぁー」
「んふふ、きゃあー」
こちらに声をかけてきたのか定かではないがとりあえず反応を返してみる。すると笑って喜んでくれた、これはなかなか面白かったらしい。
家にもこれくらいの子供はいるし、対応にはなれているけれど、皆が皆同じものを好きじゃない。当たり前だけどね。初対面の子なんか、どんな風に声をかけてると喜ぶのかは未知数だ。
赤ちゃんの反応にいい気分になりながら、いつも使っている醤油を手に取り、赤ちゃんに手を振って、その場を後にする。
ふと思い付きでお菓子売り場を覗く。ポテチ、チョコ、クッキー、一通り目を通してみるご特段心引かれるものはなく、レジに向かう頃にした。
お金を払い終えてスーパーを出る。醤油は学校の鞄にいれているだが、とても重い。
「ふぁあ……ああ、なんか眠たい。そして暑い」
はあ、スーパーの外に出た途端、暑苦しい。これじゃあ、やる気も気力も削がれてしまう。
__ふ………お…て__
「ん?」
どこからか人の声が聞こえた気がしたような……。
__ぐす……__
寂しい、苦しい、悲しい、そんな感情が滲み出ている泣き声だ。回りを見渡せども、その声の主は見当たらない。暑さにやられて幻聴でも聞こえてるのか。
__ぐす……ひっく……早く起きてよ。⬛⬛⬛⬛__
「え?上?」
思わず空を見上げる。いきなり視界に入った太陽に思わず目を閉じてしまう。
目を閉じた瞬間、何か、空気が変わったような気がした。
備え付けのスピーカーから校歌が流れて生徒たちが歌いだす。自分の声も混じる歌声をどこか他人事のように聞き流す。
早く終わんないかな。
きっと誰もが思ってることだ。優等生も、ギャルも、不良も、普通の子も、皆。
時間の進むスピードが遅く感じるなか、何とか他人事に思いつつ終業式を乗りこえ帰路に着く。一緒に帰ろうと何度か誘われたがそれも断って足早に進む。
帰ったらエアコンかけた部屋でアイス食べよう。
呑気にそんなこと思っていたらプリーツスカートのポケットにいれているスマホからメッセージが来たことをしらせる音がなった。
少し無視しようかと思ったが学校や家からの連絡ならそのあとが面倒だ。そう考えた私は道のはしによってメッセージの内容を確認した。
送ってきたのは家、内容は醤油買い忘れたから買ってきてほしいと言うものだった。
「……自分で買いにいきなよ、めんどくさいなあ」
誰も知り合いがいないのをいいことに一人文句を吐く。
アイスはもう少しお預けらしい。
仕方なくさっきまでとは違う、重い足取りで駅前のスーパーへと向かった。駅の前にあるせいで人の数は他より多いであろうこのスーパーはいつも通り五月蝿いざわめきが響いている。
「醤油、醤油っと」
一直線に調味料が並ぶ棚に向かっていく。
ふと視界に小学生くらいの子供がはいった。どうも母親と買い物に来ているらしい、幼いその子は随分としっかりしているのか母にお願いされた商品を持ってきて籠にいれて、そして褒められていた。
いつかの私もあんなことしたな。今は一人寂しくお使いだけどさ。
「お姉ちゃん、僕チョコがいい」
「ええ、こんなに暑いと溶けちゃうよお」
耳にはいったのはさっきのこと同じくらいの女の子と、いくつか下の男の子。会話からして姉弟なんだろう。
二人でおやつでも買いに来たのかあーでもない、こーでもないよ思案している。そのうち決まったのか財布を握ったお姉ちゃんにてを引かれ弟くんは満足そうにレジに向かった。
「あんなこともあったなあ」
醤油のある棚の前に着くと先客がいた。抱っこ紐を使って小さい赤ちゃんを抱えているお母さんだ。
赤ちゃんは私のことが気になるのかこっちを見ている。お母さんは調味料の方に気を取られているのか気づいていない。
「あーうぅー?」
「ふふ、ばぁー」
「んふふ、きゃあー」
こちらに声をかけてきたのか定かではないがとりあえず反応を返してみる。すると笑って喜んでくれた、これはなかなか面白かったらしい。
家にもこれくらいの子供はいるし、対応にはなれているけれど、皆が皆同じものを好きじゃない。当たり前だけどね。初対面の子なんか、どんな風に声をかけてると喜ぶのかは未知数だ。
赤ちゃんの反応にいい気分になりながら、いつも使っている醤油を手に取り、赤ちゃんに手を振って、その場を後にする。
ふと思い付きでお菓子売り場を覗く。ポテチ、チョコ、クッキー、一通り目を通してみるご特段心引かれるものはなく、レジに向かう頃にした。
お金を払い終えてスーパーを出る。醤油は学校の鞄にいれているだが、とても重い。
「ふぁあ……ああ、なんか眠たい。そして暑い」
はあ、スーパーの外に出た途端、暑苦しい。これじゃあ、やる気も気力も削がれてしまう。
__ふ………お…て__
「ん?」
どこからか人の声が聞こえた気がしたような……。
__ぐす……__
寂しい、苦しい、悲しい、そんな感情が滲み出ている泣き声だ。回りを見渡せども、その声の主は見当たらない。暑さにやられて幻聴でも聞こえてるのか。
__ぐす……ひっく……早く起きてよ。⬛⬛⬛⬛__
「え?上?」
思わず空を見上げる。いきなり視界に入った太陽に思わず目を閉じてしまう。
目を閉じた瞬間、何か、空気が変わったような気がした。
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