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異世界転移
8 これから
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お風呂に入ってからわかったことだけど、この世界ってドライヤー無いんだね。
毛先からポタポタと水滴が落ちてくる。そうならないようにタオルを貸して貰ったはいいが、タオルドライはなかなか乾かないものである。
それはさておき、イザベラさんとイルゼさんの話し合いの結果、永華達はマーキュリー・ベーカリーで働きマーキュリー宅の余っている部屋に住むことになった。とてもありがたいことだ。
薄暗い廊下に、床が鳴る。窓からは月が見えて、森にいたときに見た位置よりも大分変わっていた。
今、何時なんだろうか。
ふとそう思ったが携帯は永華に宛がわれた部屋の中で、この廊下には時計はない。これから行く部屋にあるかもしれない、そうやって自分の部屋によってから目的地に向かっていく。
扉の前に来て、ノックをしつつ声をかければす「どうぞ」と言う返事が帰ってきた。
「失礼しまーす」
挨拶は適当に、早々に白紙のノートと筆記用具を備えつけの小さな机に置き、セットの椅子に腰かけた。
「一言、断りくらいしてもいいんじゃないか?」
「あ~、ごめん。疲れてるから勘弁して」
「……はぁ、それは僕もだが。まぁいい」
整えられている真っ白なベッドに腰を掛けているのは髪が湿気っている、カルタだった。ここはカルタに宛がわれた部屋だ。
眉毛一つ動かすこと無く淡々と言葉を放つ、その姿に嫌なものを思い出し背中がゾワゾワと寒くなる。
「で?なんだっけ?事態の確認?」
「ああ、忘れないように。その日のうちにしておこう、って言う話だ」
「ああ、だから残せるノートね」
「とりあえずだ。あの森に……移動させられるまでの出来事の確認だ。僕は一旦帰ったあと。シャーペンが壊れたから近くにあったコンビニに買いに行ったんだ。そして気がついたら地面で寝ていた。持ち物は財布だけだな」
「お使いの帰りに気がついたら、だね。まばたきしたら、あそこだった。教科書とノート数冊、筆記用具、使いかけの醤油、音楽プレイヤー、スピーカー、イヤホン、ライター、スマホ、モバイルバッテリー、折り畳み傘とか、まぁ色々」
カチカチとシャーペンの芯を出し、ノートへ書き込んでいく。書き込んで改めて訳のわからない状態だな、という感想を抱いた。
「その前になにか無かったか?僕はなにも心当たりはないんだ」
「なにか、ねえ」
記憶を辿って昼のことを思い返す。
学校が昼に終わって、それからお願いされたお使いを遂行するためにスーパーに向かっていた。それから醤油を買って帰ろうとした。
それから……。
__ぐす……ひっく……早く起きてよ。⬛⬛⬛⬛__
「……あ、誰かの泣いてる声が聞こえたね。子供じゃなかった、男の子の声かな?誰かの名前を呼んでたような気がするんだけど、誰のことだったんだろ?」
「どこかの誰かが喧嘩でもしてたんじゃないのか?」
「いや、絶対ない。なんか変に響いてたから、こう……水の中?みたいな?でも、なんか既視感あったんだよな」
「ふむ、戌井に起きて僕にはなにも無しか。その違いが気絶していた僕と、瞬間移動したような状態になってた君、という違いを生んだのかな?」
「かもね」
あの既視感のある弱々しく、誰かの名前を呼ぶ泣き声。篠野部に言われてなにがあったか意識して思い出さなければ存在事態忘れていたかもしれない。
既視感を抱くのもさっきまでのように過去の自分が忘れていたからなのではないか?そう考えるとあり得る気がしてきた。寝ている間に見る夢のようだな。
声の特徴をノートの端に書き込んでいく。と言っても、青年以上の男の子くらい、という曖昧な情報しかないけれども。
「それからはお互いわかるよね?」
「シマシマベアーに追いかけられ、どうにか正気に戻してナノンと共に町に、運良く働き口も見つかり住む場所も見つかった。だろ?」
「たったこれだけか」
「これだけだが、その声の者が何かした可能性が高いな」
「魔法があることも確定したし、私たち召喚されったっぽいよね」
ポケットの中にいれていたスマホをとりだし、切っていた電源を入れる。そこからギャラリーを開き、赤い陣を撮ったものをうつした。
「それで“入り口”と思われるのはこれ、と」
「む、撮ってたのか」
「うん、あの後どうなるか分かんなかったからね」
携帯の充電は80程度、電源を切ってたからこれだがいつダメになるか何てわからない。ささっとノートの最後のページに図形を模写していく。
「赤である理由は?なんであの森でこんなものを書いた?これの詳しい意味は?シマシマベアーの一件との関連性は?仮に召喚したとして、なんであの場に誰もいなかった?」
篠野部がこぼす疑問の言葉も図形の上に書き込んでいく。
「一番の謎が僕たちが選ばれてたことだな。特段すごいなにかがあるわけでもないのに」
「それは、魔法的な何かとか?そうすると見えないしわからないじゃん」
「それが一番あるな」
その辺りもどうやって探るべきか。
「あと気になるのが魔法学校だよね、手がかりを探すなら行くべきじゃない?お金も時間もかかるけどさ」
「王宮も追加しといてくれ、召喚なんてこと一般人がそうそうできるわけがない。あとは力の強いものと権力者だな」
「おっけー」
よくよく考えてみれば人の召喚なんて、外から未確認のウイルスを入れるようなものだ。そんなことをするとなれば管理できる、何かあれば対処できる力がいる。ならば自然とするであろうう人物は絞られてくる。
「軍学校はどうだろ?」
「優先順位は低いな、君の意見は?」
「同じく、実物見てみないと何とも言えないけどね」
「ああ、それは同感だ」
あれから一時間ほどして話し合いは終わり、部屋に戻ることになった
「当分は図書館で調べものだな」
「そうだね」
相槌をうって、篠野部の顔を気づかれないように盗み見る。やっぱり一ミリも表情が変わってない、多少しかめたり眉間にシワがよったりしてはいたがたったそれだけだった。
「魔法学校。魔法が使えなきゃ意味がない。いつか、そこら辺も考えなきゃな」
「そーね」
相変わらず冷たい目だな。それはそうと、すぐに視線をそらした。
「いつ帰れるかね?」
「さあな」
「わりと直ぐに帰れたりして」
もし、本当にそうなったらありがたいんだけどな。
「さて、明日は五時半に出勤だったけ」
「ああ、今は……ちょうど零時か。僕はもう寝る」
「うん、じゃあ帰るね」
使ったものをささった片付けて扉に手をかけたところで振り返る。
「また明日」
笑顔でそういえば顔をしかめられ、布団に潜っていってしまった。いったいなにが気に入らなかったんだか、皆目検討もつかないがとりあえず自分に与えられた部屋に戻ることにした。
電気はないが月がでている何時もの夜より明るく感じる。月を見上げていると、あの篠野部の目と似た冷たい目を思い出してしまった。
「寒い……」
寒気がして、自分のことを抱き締めても一つも暖かくならない。
この世界の唯一の技術の結晶のスマホを取り出す。そこには昔撮った家族写真が写っていた、時期は永華がまだ小学生の頃のものだ。
写っているのは両親と四つ下の弟が一人、どこかの観光地に言ったときに他の観光客に撮って貰ったものがこれだ。
「確か、この後で遊園地に行ったんだったっけか。ああ、もう記憶がぼやけてきてるや」
思い出そうとしても詳しいことはなにも思い出せない、大雑把になにが起きたかくらいしか分からなかった。
「……はぁ、だめだ。私も寝よ」
スマホの電源を落とせば、何もうつさない、ただの箱になった。
床が軋む。大きな音が出ないように気をつかいながら来た道を戻っていく。
その後ろ姿はさながら幽鬼のようで、なにか負の感情をにじませていた。
毛先からポタポタと水滴が落ちてくる。そうならないようにタオルを貸して貰ったはいいが、タオルドライはなかなか乾かないものである。
それはさておき、イザベラさんとイルゼさんの話し合いの結果、永華達はマーキュリー・ベーカリーで働きマーキュリー宅の余っている部屋に住むことになった。とてもありがたいことだ。
薄暗い廊下に、床が鳴る。窓からは月が見えて、森にいたときに見た位置よりも大分変わっていた。
今、何時なんだろうか。
ふとそう思ったが携帯は永華に宛がわれた部屋の中で、この廊下には時計はない。これから行く部屋にあるかもしれない、そうやって自分の部屋によってから目的地に向かっていく。
扉の前に来て、ノックをしつつ声をかければす「どうぞ」と言う返事が帰ってきた。
「失礼しまーす」
挨拶は適当に、早々に白紙のノートと筆記用具を備えつけの小さな机に置き、セットの椅子に腰かけた。
「一言、断りくらいしてもいいんじゃないか?」
「あ~、ごめん。疲れてるから勘弁して」
「……はぁ、それは僕もだが。まぁいい」
整えられている真っ白なベッドに腰を掛けているのは髪が湿気っている、カルタだった。ここはカルタに宛がわれた部屋だ。
眉毛一つ動かすこと無く淡々と言葉を放つ、その姿に嫌なものを思い出し背中がゾワゾワと寒くなる。
「で?なんだっけ?事態の確認?」
「ああ、忘れないように。その日のうちにしておこう、って言う話だ」
「ああ、だから残せるノートね」
「とりあえずだ。あの森に……移動させられるまでの出来事の確認だ。僕は一旦帰ったあと。シャーペンが壊れたから近くにあったコンビニに買いに行ったんだ。そして気がついたら地面で寝ていた。持ち物は財布だけだな」
「お使いの帰りに気がついたら、だね。まばたきしたら、あそこだった。教科書とノート数冊、筆記用具、使いかけの醤油、音楽プレイヤー、スピーカー、イヤホン、ライター、スマホ、モバイルバッテリー、折り畳み傘とか、まぁ色々」
カチカチとシャーペンの芯を出し、ノートへ書き込んでいく。書き込んで改めて訳のわからない状態だな、という感想を抱いた。
「その前になにか無かったか?僕はなにも心当たりはないんだ」
「なにか、ねえ」
記憶を辿って昼のことを思い返す。
学校が昼に終わって、それからお願いされたお使いを遂行するためにスーパーに向かっていた。それから醤油を買って帰ろうとした。
それから……。
__ぐす……ひっく……早く起きてよ。⬛⬛⬛⬛__
「……あ、誰かの泣いてる声が聞こえたね。子供じゃなかった、男の子の声かな?誰かの名前を呼んでたような気がするんだけど、誰のことだったんだろ?」
「どこかの誰かが喧嘩でもしてたんじゃないのか?」
「いや、絶対ない。なんか変に響いてたから、こう……水の中?みたいな?でも、なんか既視感あったんだよな」
「ふむ、戌井に起きて僕にはなにも無しか。その違いが気絶していた僕と、瞬間移動したような状態になってた君、という違いを生んだのかな?」
「かもね」
あの既視感のある弱々しく、誰かの名前を呼ぶ泣き声。篠野部に言われてなにがあったか意識して思い出さなければ存在事態忘れていたかもしれない。
既視感を抱くのもさっきまでのように過去の自分が忘れていたからなのではないか?そう考えるとあり得る気がしてきた。寝ている間に見る夢のようだな。
声の特徴をノートの端に書き込んでいく。と言っても、青年以上の男の子くらい、という曖昧な情報しかないけれども。
「それからはお互いわかるよね?」
「シマシマベアーに追いかけられ、どうにか正気に戻してナノンと共に町に、運良く働き口も見つかり住む場所も見つかった。だろ?」
「たったこれだけか」
「これだけだが、その声の者が何かした可能性が高いな」
「魔法があることも確定したし、私たち召喚されったっぽいよね」
ポケットの中にいれていたスマホをとりだし、切っていた電源を入れる。そこからギャラリーを開き、赤い陣を撮ったものをうつした。
「それで“入り口”と思われるのはこれ、と」
「む、撮ってたのか」
「うん、あの後どうなるか分かんなかったからね」
携帯の充電は80程度、電源を切ってたからこれだがいつダメになるか何てわからない。ささっとノートの最後のページに図形を模写していく。
「赤である理由は?なんであの森でこんなものを書いた?これの詳しい意味は?シマシマベアーの一件との関連性は?仮に召喚したとして、なんであの場に誰もいなかった?」
篠野部がこぼす疑問の言葉も図形の上に書き込んでいく。
「一番の謎が僕たちが選ばれてたことだな。特段すごいなにかがあるわけでもないのに」
「それは、魔法的な何かとか?そうすると見えないしわからないじゃん」
「それが一番あるな」
その辺りもどうやって探るべきか。
「あと気になるのが魔法学校だよね、手がかりを探すなら行くべきじゃない?お金も時間もかかるけどさ」
「王宮も追加しといてくれ、召喚なんてこと一般人がそうそうできるわけがない。あとは力の強いものと権力者だな」
「おっけー」
よくよく考えてみれば人の召喚なんて、外から未確認のウイルスを入れるようなものだ。そんなことをするとなれば管理できる、何かあれば対処できる力がいる。ならば自然とするであろうう人物は絞られてくる。
「軍学校はどうだろ?」
「優先順位は低いな、君の意見は?」
「同じく、実物見てみないと何とも言えないけどね」
「ああ、それは同感だ」
あれから一時間ほどして話し合いは終わり、部屋に戻ることになった
「当分は図書館で調べものだな」
「そうだね」
相槌をうって、篠野部の顔を気づかれないように盗み見る。やっぱり一ミリも表情が変わってない、多少しかめたり眉間にシワがよったりしてはいたがたったそれだけだった。
「魔法学校。魔法が使えなきゃ意味がない。いつか、そこら辺も考えなきゃな」
「そーね」
相変わらず冷たい目だな。それはそうと、すぐに視線をそらした。
「いつ帰れるかね?」
「さあな」
「わりと直ぐに帰れたりして」
もし、本当にそうなったらありがたいんだけどな。
「さて、明日は五時半に出勤だったけ」
「ああ、今は……ちょうど零時か。僕はもう寝る」
「うん、じゃあ帰るね」
使ったものをささった片付けて扉に手をかけたところで振り返る。
「また明日」
笑顔でそういえば顔をしかめられ、布団に潜っていってしまった。いったいなにが気に入らなかったんだか、皆目検討もつかないがとりあえず自分に与えられた部屋に戻ることにした。
電気はないが月がでている何時もの夜より明るく感じる。月を見上げていると、あの篠野部の目と似た冷たい目を思い出してしまった。
「寒い……」
寒気がして、自分のことを抱き締めても一つも暖かくならない。
この世界の唯一の技術の結晶のスマホを取り出す。そこには昔撮った家族写真が写っていた、時期は永華がまだ小学生の頃のものだ。
写っているのは両親と四つ下の弟が一人、どこかの観光地に言ったときに他の観光客に撮って貰ったものがこれだ。
「確か、この後で遊園地に行ったんだったっけか。ああ、もう記憶がぼやけてきてるや」
思い出そうとしても詳しいことはなにも思い出せない、大雑把になにが起きたかくらいしか分からなかった。
「……はぁ、だめだ。私も寝よ」
スマホの電源を落とせば、何もうつさない、ただの箱になった。
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