苦手な人と共に異世界に呼ばれたらしいです。……これ、大丈夫?

猪瀬

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メルリス魔法学校

53 偶然か必然か

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教員言われるがまま並び、入学式が行われる予定の大きな空間をとっている教室らしき場所についた。

 メルリス魔法学校の入学式は組分け用の帽子とかわなく私達の知っている、よくあるタイプの入学式だった。

 長ったらしい校長らしき人物の話と教員の紹介、途中からあくびをしていた。

 校長の話は大事そうでもなかったので聞き流した。

 誰がよく知りもしない校長の孫自慢を真剣に聞くよ……。

 それから寮に戻って、張り出されているクラス表をみるように言われた。

 わりと使用が変わらないんだなあ。何て変なところで感心しつつ、同じクラスに割り振られていた同室のメンバーと配布された地図を片手に学校内を進んでいく。

 ついた教室には既に数人の生徒がおり、一人で過ごしていたり知り合いと過ごしていたりと各々好きに過ごしていた。

「こっこだ~!」

「やっぱり、この学校って広いわね」

「陸の学校は初めてです」

「名門なだけあるわ」

 回りを見渡す。

 クラス分けには篠野部や見知った名前がいくつかあったから探しているのだ。

「ん~……っと。あ、いた。しのの……べ?」

 椅子に座って教師が来るのを待つ篠野部と、その篠野部に話しかけフル無視されて嬉しそうな少年。

 その少年と特に反応がない篠野部にドン引きしているベイノットとローレン……いや、ローレスだ。なんなら周囲も少年と篠野部にたいしてドン引きしていた。

「え、なにあれ?なんで無視されて恍惚の表情浮かべてるの?なんで篠野部は隣で無視されて恍惚の表情浮かべてる子を放置できんの?怖っ……」

 隣にいた同室メンバーもドン引きだ。

「え、ど、どうしよう?」

 声かけたいけど、知り合いだって思われたくないような……。

「ん?あ、永華ちゃ~ん、ミューちゃ~ん、メメちゃ~ん」

 どうしたら良いかわからず立ち往生していた私に気がついたローレスがこちらに来る。

「あ、ローレス久しぶり」

「あんたも合格してたのね」

「一ヶ月ぶりですね」

「知り合い?向こうも?」

「ローレスと、無視してる方と引いてる短髪は同じ箱庭で実践試験を受けたんだ。恍惚としてる子は知らないけど、ね」

「そうなの」

 この子、とてもクールだな。

「そちらのお嬢さん、お名前をうかがっても良いですか?」

「アタシ、ナンパな人は嫌よ」

「ぐはっ!!」

 ローレスがララにふられているのを背景にベイノットもこちらにやって来た。

「永華、篠野部のやつさっきっからずっとあれなんだ。最初は普通って言うか、まあ受け答えはちゃんとしてたんだが、今はずっとあれで……」

「ん~……でもあれが通常って言うか、なんていうか」

「はあ、どういうことだよ」

「篠野部って喋るの苦手だし、あんまり自分から喋ろうとしないんだよね」

「えぇ……」

 しかも元の世界でもわりとみてた光景なんだよ。

 男子が本を呼んでる篠野部に話しかけてスルーされて、怒りもしなかったことは良いんだけど勝手に肩を組んで心底鬱陶しそうにされてたことがあった。

 あれ多分だけど篠野部に集まる女の子が目当てだったんだよね。しかもお目当ての子と付き合えたのか、少しして篠野部のまわりじゃ見なくなったし。

 そういうおこぼれ狙いの取り巻きがちらほらいたんだよねえ。だからかしらないけど、無視がデフォルトっていうか……。

 ちゃんとした話なら返事くれるんだけどね。

「っていうか。あれに関しては“対応がめんどくさい”とか“変な人に関わらないでおこう”って言うやつだと思う」

「あぁ、確かにまあ……そうなるのも変じゃねえか」

 見た目はララ並みに幼いけど無視されてるのに恍惚とした表情で一方的に話しかけてくるのは変人なんだよねえ。

「変人っていうか、変態?」

「変態だな。無視されて喜んでるし……」

 でーすよねー。

 前々から不審者に遭遇してるっぽい言動をしていたし、変なのに絡まれるのも時間の問題だと思ってたけど王都にきて早々に絡まれちゃうとはなあ。

「あんまり行きたくないけど長い間あの状態で放置もダメか」

 なんか心なしか篠野部の顔色悪い気がするし。

 永華は駆け足でカルタのもとへ行くとカルタの肩を軽く叩いた。

「篠野部~」

「っ!戌井、隣のやつを何とかしてくれ!」

「うへへ~、放置プレイですかあ?僕は罵倒されるもの好きなんで思いっきり罵ってくれても良いんですよう」

「……すぅ」

 これガチもんじゃん。どうしろっての……。

「と、とりあえず、離れような?」

「え~……まぁ、いいですよう。そろそろ先生が来そうですしい。あ、でも先生に怒られるのもありですねえ」

 ……こんなオープン変態みたことないなぁ。はは……。

「戌井、席変わってくれ」

「え?あぁ、いいけど」

 篠野部が小声で話しかけてきた。

 机に視線を動して、次に黒板を見る。特に席の指定はないようなのでいいだろう。

 ……これ席変わっても反対側空いてるから、そっち行かれたら意味ないよね。

 う~ん……あ!

「おーい、こっち空いてるから皆おいでよ」

 私は皆を巻き込むことにした。

 実際、変態と変態加減のお陰で避けられ、周囲のせいが思いっきり空いていた。

「あ、あいつ巻き込みやがった」

「私、あの変態とか変わりたくないわ。絶対めんどくさいもの……」

「アタシ、ナンパな人も嫌だけど変態はもっと嫌よ」

「でも私達が話してる間に、あのあたりの席しかなくなってるみたいですよ」

 メメの発言にローレス以外のメンバーが回りを見渡す。空いてる席はほとんどなかったし、他の生徒からは同情の眼差しが向けられていた。

「は~い、ローレスが今行きま~す」

 ローレスだけが素直に永華達のもとへ向かう。

「……同情するならかわりなさいよって、私思うんだけど、どう?」

「同意ね」

「……」

 席がないのは事実なので四人は大人しく巻き込まれることにした。

「私少年と篠野部の間ね」

「えぇ!?」

「……助かる」

 ささっと席を入れ替わる。

 永華はカルタの隣に行こうとする変態の片腕をつかみ止めた。

「なら俺はミューちゃんかメメちゃんかララちゃんの間に」

「お前、俺と壁の間な」

「なんで!?」

「集中しなさそうだからな」

「やだ!」

「いいからいくぞ」

「うわ~!」

 ローレスがベイノットに引きずられて橋の席に座らせられ、逃げようとしたところを力業で押さえる。

「メメは変態さんとおしゃべりして__」

「やめなさい、教育に悪いわ」

「えぇ……」

 ミューは陸初心者のメメが変態と接触するのは早いと考えたようで、永華の隣に座ろうとするメメを止めた。

「ならアタシが永華さんの隣に行くわ。片田舎の光の魔導師さん、もうひとつずれてくれるかしら?」

「いいが、その呼び方……ヘラクレス?」

「えぇ、妹よ」

「そうか、篠野部だ」

「ララよ。よろしく」

「……」

「あら、冷たいのね」

 ララは通常運転で冷たい篠野部を静かに笑って受け流した。クールビューティーな彼女らしい対応だ・

「うわあ、私より相性良さそう」

「嫉妬ですかあ?」

「うるさい変態」

「うへへ~」

「あ、喜んでる。めんどくさっ」

 私の方が長い間、一緒にいたのになあ。と嫉妬にも似た気持ちが出てきたの見透かされた永華は照れ隠しをするものの変態にとってはご褒美だった。

「篠野部は静かそうだし、ベイノットは面倒見が良さそう……。よし、私とベイノットの間に座りなさい」

「ぶぅ~……わかりました」

 こうして席順が変態、永華、ララ、カルタ、ミュー、メメ、ベイノット、ローレスの順となった。

「君、名前は?私、永華・戌井」

「僕はレーピオ・アスクスですう。さっきみたいに変態で構いませんよう」

「いや私が構うから。それと嫌がる人にくっついていこうとしないの」

「むう、それもそうですね。すみません、篠野部さん」

「……ん」

「フル無視されるなんて初めてだったのでつい興奮してしまいました」

 以外と素直だと思ったけどやっぱり変態だ……。

「にしたって、同じ箱庭で試験受けたメンバーがこうも揃うとはね。しかも女子は皆同室だし」

 永華が話題を変えようと振り分けの話をする。

「え?まじ?俺らんとこも皆同室なんだぜ」

「そこのへん__レーピオもな」

「えぇ」

「え、まじ?」

 変なところで奇跡起きてるな。

「あら、すごいじゃない。アタシのところの人はアタシと一人だけしか残らなかったわよ?」

「僕のところは僕と二人が残ってましたね」

「試験用に調整されたワイバーンなんか余裕だって行って突撃していった一発退場したやつが一番早かったかしら」

「あ、そっちにもいるんですね。慢心する方」

 なるほど、二人の発言を聞くに調整されてるからって油断して慢心して一発K,Oされるやつは一定数いるらしい。

 その台詞を聞いていた六人は微妙な表情になった。

 油断する者も慢心するものもいなかったが、それとは別に黒いドラゴンが出てくるなんてすさまじいトラブルが起きていたからだ。

 もし、誰かが油断と慢心をしていたら揃ってドラゴンに食われていたかもしれない。主にカルタが。

 そう思うと微妙な表情になるのも仕方ないと言うものだ。

 そうこう話していると担任になるだろう教師が入ってきた。
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