苦手な人と共に異世界に呼ばれたらしいです。……これ、大丈夫?

猪瀬

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蛇令嬢

68 平和に微妙な距離とられている気がする

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永華視点

「立場をわきまえてくれるかしら?平民さん」

 えぇっと、騎士を追いかけていたとき私を轢いていった令嬢に絡まれています。絡まれているのは私だけじゃなくていつメンもです。

 ひとまず、こうなった経緯を説明しようと思う。



 時間は遡って私達が教室にはいってすぐ。

 私達はいつも通り挨拶していたり、わからない課題を教えあっていたり、下らない話をしていたり、普段通り過ごしていた。

 いつもと違うことといえばミューとベイノットが私と篠野部を良く構うようになったことだ。

 まあ、それだけなんだけど。

「あ~、なんか面白い話しねえの?」

「ベイノットくんキラーパス過ぎない?」

 ベイノットの唐突な無茶振りに近くにいたクラスメイトが突っ込む。

「あ、じゃあ、僕の家が全焼しかけた話しますう?」

「え……」

「家が、全焼しかける?」

 レーピオの言葉に聞こえていたであろう生徒達の時間が止まり、一気に教室と教室の前の廊下が静まり返っていた。

「な、なにが……」

 バンッ!!__

 唐突にぶっこまれた話を追求すべく、さっきベイノットに突っ込みをいれていたクラスメイトが口を開いたとき大きな音を立てて教室の扉が開いた。

 不意打ちの大きな音に、その場にいたもの達の方が大きく跳ねる。

「レーピオ・アスクス様とメイメア・ファーレンテイン様、ララ・アリス様はいらっしゃいますか?」

 突如として現れた令嬢が友人達の名前を呼んだ。

 いきなりなんなんだ?

 そう思って振り替えると、そこには一年前に私を轢いていった令嬢がいた。

 いやあ、どこかの誰かが関わろうとしなければ大丈夫だといっていたから気にしてなかったんだけど向こうがから来ちゃったよ。

「いますよう」

「なにかご用でしょうか?」

「……」

 メメとレーピオが名乗り上げると令嬢はゆっくりとこちらに近づいてくる。

 ララに関しては兄の追っかけと言うこともあってか、静かに近くにいた私の後ろに隠れた。

「私、カリヤ・ベイベルツと申しますわ」

 令嬢は綺麗なカーテシーをする。

 ザワザワとクラスメイト達が驚きの声を上げる。

「あれって二年の?」

「“風魔法の天才”だよな?十五才で無詠唱魔法を使ったって言う……」

「貴族至上主義者……」

 色々な話が聞こえてくる。

 話を聞く限り、令嬢がこの教室に来る理由がないように思うのだけ呼んだのは貴族に関係がある三人だし、それ関連だろうか。

「三方にお話がございますの。少々よろしいでしょうか?」

 レーピオとメメはなんだろうと不思議に思いつつも了承する。ララは未だに永華の後ろに隠れており、警戒の姿勢だ。

 偏見だが貴族特有の腹の探りあいでもするのだろうか。

「では、移動いたしましょう?」

「何故ですか?」

 メメは心底不思議と言いたげに首をかしげる。

「なぜって……」

「あと十分ほどで私達は授業が始まってしまいます。貴女がどうかはわかりませんが私達は授業に遅れたくありませんので」

「……」

「ここで言っていただける内容でしたら、お願いいたします」

 ニッコリと笑って言いきった。

「僕もそうして欲しいですねえ。ララさん、永華さんから離れたくないようですし」

 う~ん、ここで私の名前を出さないで欲しかった。

 それはそうとミューとベイノットが静かに私の両脇を固めたのは何でですか?

 なにもしてないのに私を見る令嬢の目が冷たいよお。どちらかと言うと私された側なんですけれどもね。

 ていうか視界のはしでめんどくさいことが起こりそうなのを察知した篠野部が逃げようとしてる。あ、ローレスに捕まった。

「一応、配慮したつもりだったんですが……。そちらがそういうのなら、ここでお話しさせていただきますわ」

 まるで駄々をこねる子供に向けるような、仕方がないとでも言いたげな表情をしている。

「そちらの方々と、関わるのをやめた方がよろしいかと」

 メメとレーピオ、ララの眉間に皺がよる。

 視界の端でローレスに抵抗していた篠野部が大人しくなった。

「あ~……。誰の事を言っているのか教えてらもっても良いですかあ?」

 レーピオ、表情事態は笑顔だが目が笑っていない。

「そちらのララ・アリス様の前にいらっしゃる平民さん達と、そこで騒いでいた方達のことですわ」

 私とベイノット、ミュー、篠野部、ローレス、いつも一緒にいるメンバーだった。

「立場をわきまえてくれるかしら?平民さん」

 そういって私達を見る目は明らかに見下した目だった。

「……不愉快です。理由をのべなさい」

 メメは抱えていた人形をキツく抱きしめ、さっきから変わらない警戒心の滲む表情のまま令嬢に言う。

「簡単なことですわ。貴族は貴族といるべきです。たとえそれが、海の貴族でも継承権の低いものでも、例え元々平民であったとしても」

「それは、この学校の校則ですか?それともこの国の法律ですか?何か、必要なルール何ですか?」

「いいえ、校則でも法律でもルールでもありませんわ」

「それならば、私達が誰とか変わろうとも貴女に関係ないはずです」

「持つ者は、持たざる者といるべきではありません」

「言葉に気を付けていただきたいですわ」

 メメの雰囲気が今までに見たこと無いくらい攻撃的なものになっている。これは一旦落ち着かせるべきだろうが、私が間にはいってもこじれる気しかしないな……。

「私、事実しかいていないと思うのですが……。あぁ、事実ばかり言うのも酷なものですわね。失礼しました」

 ナチュラルに煽りおって……。

「……」

「メメさん、落ち着いてくださいなあ」

「……はい」

 だんだんと攻撃的な雰囲気が増していくなか、レーピオがメメに落ち着くように諭す。

「この学校は様々な種族、階級、国籍の者と交流が推奨されていますう。僕達が彼ら彼女らといることは、むしろオススメされてることなんですけどお……それでも関わるのをやめるべきだと言いますかあ?」

「はい」

 ぶれない令嬢に笑顔のままだったレーピオは笑みを崩して息を吐く。

「平行線ですねえ……」 

 本人達じゃあ平行線でずっと険悪な空気、私達や他の生徒が介入したところでこじれる未来は見えている。

 ……まともに収拾がつくのは、もしかしたら担任であるザベル先生が来てくれたときかもしれない。

 先生早く来てくれないかなと、一応は当事者の癖に他人事のように思っていると私の後ろに隠れていたララが声を上げた。

「貴女、アタシの兄の追っかけで一年前の九月頃、バイスの町にいたでしょう」

「そうですが、それがどうかしましたか?」

「そこで、一人の女の子に怪我をさせたそうですね」

「お、おい……!」

 慌てて止めようとするが、それも遅い。

 ララの言葉にさっきまで静かだった教室がざわつく。

「覚えがありませんわ?」

「とぼけたって無駄です。アタシが、この嘘を言う利点もさほどありませんし、怪我をした女の子と一緒にいた子が嘘を言う理由もないでしょう」

「私を陥れようとしてるだけではありませんか?」

「あの二人には貴女よりも優先すべきことがある。何よりも兄が、その光景を見ています」

「!?」

 あのとき騎士みてたの!?

「“言い訳にしかならないが、お忍びだったのと自分が介入する前に二人が行ってしまったから何も言えなかった。せめて注意はすべきだった”と、言っていましたよ。それでも否定するのならば兄を呼びましょうか?」

「結構ですわ……」

 令嬢の視線が私をとらえた。

 その目に濁っていて苛立ちと軽蔑が見えかくれしていた。

「お久しぶりですわね」

「……まさか、会えるとは努々思っていませんでしたよ」

「私もです」

 なんだ、きっちり覚えているじゃないか。

「で、どうするおつもりですか?教員の方に言いつけますか?」

「その発言は認めたと受け取りますがあ、よろしいですかあ?」

 レーピオがまるで私を隠すかのように前に立つ。

「えぇ、でも彼女は許してくれましたわ。今まで何も言わなかったんですもの、お世話になってる人に迷惑かけたくないって」

 お前が脅したくせに……!

「あ、ザベル先生……」

 苛立ちをおぼえ眉間に皺を寄せていると誰かがポツリとこぼした。

「それは、事実ですか?」

 令嬢が入ってきた教室の扉、そこにはザベル先生が立っていた。
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