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恐るべき執着心
106 猫かぶり
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挨拶が終わった頃を見計らい、レーピオ達に先輩達を見つけたことを伝える。
「先輩達見つけたよ。あそこの隅」
「そうですかあ。では、そっちも挨拶にいきましょうかあ。何か気になることがないかも聞きたいですしい」
三人とも、事前に合流していたのか、会場の隅に固まっている。
流石貴族なだけあって三人とも様になっている。けれどなんと言うか、ビーグル先輩の正装は何か……意外の一言である。
それからネレーオさんなんだけど、今はお手洗いにいっているらしい。話している間にもとってきた。
軽い挨拶をすましたあと、小さい声で本題にはいった。
「で、会いましたの?」
「会いましたよお」
今、ブレイブ家の三人はだいぶんはなれたところにいる。
人の多い会場で何でわかるのかっていうと、回りに貴族達が露骨とまではいかなくても避けているからだ。近くにいる人たちは何かされるのではないかと、不安に思っているのか顔色が悪い。
なるべく隠そうとはしているんだろうけど、あんな大人数が似たようなことをしているといやでもバレるような気がする……。
ローシュテール・ブレイブは特に気にしていない様子、ギャグに妻のローザベッラ・ブレイブは周囲の雰囲気を感じ取っているのか不機嫌気味だ。ロンテ・ブレイブはなれているのか平然としている。
告発や噂は先輩達が生まれるよりも前から世の中に出ているものだ。
親のせいか、周囲のせいか、あぁ言うのに慣れてるとは……。
いや、そこら辺考え出したらキリがないからやめておこう。
「感想とかある?」
いきなりネレーオさんがいきなり聞いてきた。一拍おいて、それぞれが答え出す。
「ヤバイ気がする」
「少なくとも、妻の方は関わらないほうが心は豊かでいれそうだ」
「顔を知りたくなかったわ」
「帰りてえ……」
「怪しさ満点ですわ」
「底が見えませんねえ」
「兄さんが苦手そうなタイプね」
上から順に、永華、カルタ、ミュー、ベイノット、メメ。レーピオ、ララである。
総評、怪しすぎる。
もっと言えば噂や告発の件がなくても手紙の件と私たち七人をここに呼び出したことを考えれば、ほぼ黒のグレーと言っても良いほどに怪しい。
私たちの意見を聞いた先輩達は苦笑いしながらも頷いていた。
「挨拶も軽い世間話もしましたがあ、僕たちを呼んだ理由やローレスの事はなにも言いませんでしたねえ。まあ、それとなく聞こうとも思ったんですけどお……どうも、ロンテ先輩がこっちを見てくるのでやめておいたんですう」
あの時のロンテ・ブレイブの目はやめろと言ってるように見えた。
あの人、なんなんだろうか。
「それは、懸命だろうね。探ってると判断されたらなにされるかわかったもんじゃないし……」
あんな強引な誘いかたしてる以上、向こうも、それくらい覚悟してると思うんだが……。
「会場、見てまわったけどローレス君っぽいのはいなかったな。魔法はないとして、古典的な手の込んだ変装してるって言うんなら、わからないのも変じゃないけど」
この会場、出入り口で幻覚魔法で顔や体格を変えていないか確認される。
レーピオや先輩達曰く、これは暗殺者や情報を盗みにくる間者をいれないようにするための対策なんだとか。
これを聞いたとき、なんと物騒な世の中だと思ったことか……。
私たちの元いた世界ほど、倫理観や道徳観が発達していないからっていうのが理由なんだろうけど、元の世界に戻ったときに支障が出そうでちょっと怖い。
「古典的な、っていうとなんになるんですの?」
「メイクとか整形だな。流石にこんな短時間で整形はできねェだろうからあるんならメイクか?」
「最近はゴムのマスクで顔を覆って、っていうのもあるらしい」
大泥棒が使ってる手口かな。
とはいえ、獣人が相手になると匂いでバレるケースが多いんだとか。
「ローレスくん、詳しくは知らないけど、自分が見た限りそんな技術はないように感じたし、何より下手に原因には近寄ろうとしないだろうから会場には来てなさそうだけどね」
確かに、自分から早々危ないことはしない、と思う。
アーネチカさんを誘拐した犯人はローシュテール・ブレイブと関わりがあるのでは?と言う仮説をたてて“レイス親子失踪の原因の最有力候補”と言ってるが手紙だけだして無関係の可能性もなきにしもあらず……。
まあ、可能性は低そうだけど。
どっちにせよ、消えてなさそうだ。
話すのもほどほどにして、情報収集とあんまり固まって不自然に思われたくないので二人か三人辺りでわかれることになった。
組み合わせは永華とカルタ、ミューとレーピオ、ララとベイノット、メメとビーグル先輩、カリヤ先輩とナーズビアとネレーオさんと言った感じ。
なるべくペアからは慣れないこと、と貴族組に言われた。
それぞれ別れ、会場に散る。
主催者が医療関係者であり、そもそもこのパーティーが研究成功と医療技術が発達したことの祝いの席なので、私たちがほしいと思っているような話をしている参加者は見当たらない。
まあ、ここでローレスの情報が手に入ると思ってなかったし、別にそれは良いんだけど別にそれは良いんだけど……。
それはそれとして、私たちがここに呼ばれた理由とかわからないかなって思ってたから空振りした気分だ。
「欲しいもの、無いね」
「元より、そこまで期待していなかっただろう」
「いや、呼ばれた理由の方」
「……まあ、間違いなくパーティー開催の理由は関係ないだろうね」
「だよね」
周囲に言葉を取りこぼさないように注意しつつ、パーティー会場を歩いている。
「ん?」
「どうしたの?」
内心、早く終わらないかと思いつつ永華とエスコートする体をとっているカルタは窓の外で何かが光ったのを視界の端でとらえていた。
「今何かが光った」
「え?」
永華はカルタに釣られて窓の方に視線を向ける。
次の瞬間、窓が粉々に砕け散って黒ずくめの何者かがあちこちから侵入してきた。
「!?」
「チッ!」
何かが起こる可能性があると言う話だったが、まさかこんな派手な襲撃を起こすとは……。
会場のあちこちから悲鳴が上がり、阿鼻叫喚の地獄絵図に早変わりした。
入ってきた黒服の一人が明確な殺意をもって永華に短剣を投げつける。
カルタは事前に服の下に隠していた杖を取り出し、自己魔法で短剣を弾いた。
「ボサッとするな」
「わかってるし」
昨日、なにはあっては正装姿じゃ対応できないだろうからと、それぞれの下着やインナーに仕込んでいた魔方陣を発動させる。
瞬きの間に、永華達の服は着なれている普段着に変わった。
「ふぅ……」
「これなら、きちんと動ける」
パーティー会場で参加者達を囲むように黒服達が入ってきている。
見回せば、動乱のなか良い感じに散っていた友人達も魔方陣を発動させていた。
参加者達は警備の者により中心に集められている。警備員は参加者の周囲に点在し、応援がくるまでの持久戦をしようとしているようだ。
後ろから、こっちに来いと言う声が聞こえるが、さっきの短剣がまぐれでないなら狙いは私たち。行くわけにはいかない。
杖を構え、目の前にいる黒服を見据える。
「何が目的なわけ?」
聞いても答えない。
答えない変わりに、すっと剣を構えた。
木刀は隠せないし、目立つ。入るところで没収される可能性が高いからとおいてきたが、今更ながらに不安になってきた。
魔法で作る余裕あるだろうか……。
「はあ……」
最初に動いたのは黒服達だ。
剣や斧等の近接武器をもつ黒服が前に出て、魔導師は後方支援にまわっている。
これが本来の、というか定番の戦い方なんだろう。
魔導師は近接戦が弱い。相手もそう思いきってるのか、迷わずに突っ込んでくる。
振り下ろされた攻撃を交わして、鳩尾に拳を叩き込んだ。
「魔導師が近接弱いって認識、捨てた方がいいよ」
少しはなれたところで篠野部が飛んでくる魔法を避け、別の黒服を転がしていた。
後ろにいる参加者を狙っていない辺り、やっぱり私たちのことを狙っているようだ。
私は元の世界にいた頃から剣道とか、武術を習ってきたのもあるが、いつものメンバー最近、ベイノットから体術を学んでいる。
良いのが入ったのか、悶える黒服を自己魔法で縛り上げ、ついでにパパッと木刀もどきを作り、杖を柄にくくりつけてしまう。
想定外のことに驚いていたのか、固まっていた黒服達ははっとして攻撃の体制になる。
「次は誰?」
「先輩達見つけたよ。あそこの隅」
「そうですかあ。では、そっちも挨拶にいきましょうかあ。何か気になることがないかも聞きたいですしい」
三人とも、事前に合流していたのか、会場の隅に固まっている。
流石貴族なだけあって三人とも様になっている。けれどなんと言うか、ビーグル先輩の正装は何か……意外の一言である。
それからネレーオさんなんだけど、今はお手洗いにいっているらしい。話している間にもとってきた。
軽い挨拶をすましたあと、小さい声で本題にはいった。
「で、会いましたの?」
「会いましたよお」
今、ブレイブ家の三人はだいぶんはなれたところにいる。
人の多い会場で何でわかるのかっていうと、回りに貴族達が露骨とまではいかなくても避けているからだ。近くにいる人たちは何かされるのではないかと、不安に思っているのか顔色が悪い。
なるべく隠そうとはしているんだろうけど、あんな大人数が似たようなことをしているといやでもバレるような気がする……。
ローシュテール・ブレイブは特に気にしていない様子、ギャグに妻のローザベッラ・ブレイブは周囲の雰囲気を感じ取っているのか不機嫌気味だ。ロンテ・ブレイブはなれているのか平然としている。
告発や噂は先輩達が生まれるよりも前から世の中に出ているものだ。
親のせいか、周囲のせいか、あぁ言うのに慣れてるとは……。
いや、そこら辺考え出したらキリがないからやめておこう。
「感想とかある?」
いきなりネレーオさんがいきなり聞いてきた。一拍おいて、それぞれが答え出す。
「ヤバイ気がする」
「少なくとも、妻の方は関わらないほうが心は豊かでいれそうだ」
「顔を知りたくなかったわ」
「帰りてえ……」
「怪しさ満点ですわ」
「底が見えませんねえ」
「兄さんが苦手そうなタイプね」
上から順に、永華、カルタ、ミュー、ベイノット、メメ。レーピオ、ララである。
総評、怪しすぎる。
もっと言えば噂や告発の件がなくても手紙の件と私たち七人をここに呼び出したことを考えれば、ほぼ黒のグレーと言っても良いほどに怪しい。
私たちの意見を聞いた先輩達は苦笑いしながらも頷いていた。
「挨拶も軽い世間話もしましたがあ、僕たちを呼んだ理由やローレスの事はなにも言いませんでしたねえ。まあ、それとなく聞こうとも思ったんですけどお……どうも、ロンテ先輩がこっちを見てくるのでやめておいたんですう」
あの時のロンテ・ブレイブの目はやめろと言ってるように見えた。
あの人、なんなんだろうか。
「それは、懸命だろうね。探ってると判断されたらなにされるかわかったもんじゃないし……」
あんな強引な誘いかたしてる以上、向こうも、それくらい覚悟してると思うんだが……。
「会場、見てまわったけどローレス君っぽいのはいなかったな。魔法はないとして、古典的な手の込んだ変装してるって言うんなら、わからないのも変じゃないけど」
この会場、出入り口で幻覚魔法で顔や体格を変えていないか確認される。
レーピオや先輩達曰く、これは暗殺者や情報を盗みにくる間者をいれないようにするための対策なんだとか。
これを聞いたとき、なんと物騒な世の中だと思ったことか……。
私たちの元いた世界ほど、倫理観や道徳観が発達していないからっていうのが理由なんだろうけど、元の世界に戻ったときに支障が出そうでちょっと怖い。
「古典的な、っていうとなんになるんですの?」
「メイクとか整形だな。流石にこんな短時間で整形はできねェだろうからあるんならメイクか?」
「最近はゴムのマスクで顔を覆って、っていうのもあるらしい」
大泥棒が使ってる手口かな。
とはいえ、獣人が相手になると匂いでバレるケースが多いんだとか。
「ローレスくん、詳しくは知らないけど、自分が見た限りそんな技術はないように感じたし、何より下手に原因には近寄ろうとしないだろうから会場には来てなさそうだけどね」
確かに、自分から早々危ないことはしない、と思う。
アーネチカさんを誘拐した犯人はローシュテール・ブレイブと関わりがあるのでは?と言う仮説をたてて“レイス親子失踪の原因の最有力候補”と言ってるが手紙だけだして無関係の可能性もなきにしもあらず……。
まあ、可能性は低そうだけど。
どっちにせよ、消えてなさそうだ。
話すのもほどほどにして、情報収集とあんまり固まって不自然に思われたくないので二人か三人辺りでわかれることになった。
組み合わせは永華とカルタ、ミューとレーピオ、ララとベイノット、メメとビーグル先輩、カリヤ先輩とナーズビアとネレーオさんと言った感じ。
なるべくペアからは慣れないこと、と貴族組に言われた。
それぞれ別れ、会場に散る。
主催者が医療関係者であり、そもそもこのパーティーが研究成功と医療技術が発達したことの祝いの席なので、私たちがほしいと思っているような話をしている参加者は見当たらない。
まあ、ここでローレスの情報が手に入ると思ってなかったし、別にそれは良いんだけど別にそれは良いんだけど……。
それはそれとして、私たちがここに呼ばれた理由とかわからないかなって思ってたから空振りした気分だ。
「欲しいもの、無いね」
「元より、そこまで期待していなかっただろう」
「いや、呼ばれた理由の方」
「……まあ、間違いなくパーティー開催の理由は関係ないだろうね」
「だよね」
周囲に言葉を取りこぼさないように注意しつつ、パーティー会場を歩いている。
「ん?」
「どうしたの?」
内心、早く終わらないかと思いつつ永華とエスコートする体をとっているカルタは窓の外で何かが光ったのを視界の端でとらえていた。
「今何かが光った」
「え?」
永華はカルタに釣られて窓の方に視線を向ける。
次の瞬間、窓が粉々に砕け散って黒ずくめの何者かがあちこちから侵入してきた。
「!?」
「チッ!」
何かが起こる可能性があると言う話だったが、まさかこんな派手な襲撃を起こすとは……。
会場のあちこちから悲鳴が上がり、阿鼻叫喚の地獄絵図に早変わりした。
入ってきた黒服の一人が明確な殺意をもって永華に短剣を投げつける。
カルタは事前に服の下に隠していた杖を取り出し、自己魔法で短剣を弾いた。
「ボサッとするな」
「わかってるし」
昨日、なにはあっては正装姿じゃ対応できないだろうからと、それぞれの下着やインナーに仕込んでいた魔方陣を発動させる。
瞬きの間に、永華達の服は着なれている普段着に変わった。
「ふぅ……」
「これなら、きちんと動ける」
パーティー会場で参加者達を囲むように黒服達が入ってきている。
見回せば、動乱のなか良い感じに散っていた友人達も魔方陣を発動させていた。
参加者達は警備の者により中心に集められている。警備員は参加者の周囲に点在し、応援がくるまでの持久戦をしようとしているようだ。
後ろから、こっちに来いと言う声が聞こえるが、さっきの短剣がまぐれでないなら狙いは私たち。行くわけにはいかない。
杖を構え、目の前にいる黒服を見据える。
「何が目的なわけ?」
聞いても答えない。
答えない変わりに、すっと剣を構えた。
木刀は隠せないし、目立つ。入るところで没収される可能性が高いからとおいてきたが、今更ながらに不安になってきた。
魔法で作る余裕あるだろうか……。
「はあ……」
最初に動いたのは黒服達だ。
剣や斧等の近接武器をもつ黒服が前に出て、魔導師は後方支援にまわっている。
これが本来の、というか定番の戦い方なんだろう。
魔導師は近接戦が弱い。相手もそう思いきってるのか、迷わずに突っ込んでくる。
振り下ろされた攻撃を交わして、鳩尾に拳を叩き込んだ。
「魔導師が近接弱いって認識、捨てた方がいいよ」
少しはなれたところで篠野部が飛んでくる魔法を避け、別の黒服を転がしていた。
後ろにいる参加者を狙っていない辺り、やっぱり私たちのことを狙っているようだ。
私は元の世界にいた頃から剣道とか、武術を習ってきたのもあるが、いつものメンバー最近、ベイノットから体術を学んでいる。
良いのが入ったのか、悶える黒服を自己魔法で縛り上げ、ついでにパパッと木刀もどきを作り、杖を柄にくくりつけてしまう。
想定外のことに驚いていたのか、固まっていた黒服達ははっとして攻撃の体制になる。
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