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恐るべき執着心
113 正妻
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カルタ視点
ブレイブ家に閉じ込められ、数時間。
敵陣だから飲む気なんて微塵もないけど、お茶の一つくらいだしたらどうなんだ?と待たされ過ぎて思ってしまうくらいだった。
まぁ、エサ基レイス親子をブレイブ家につれてくるための人質なのだから、そんなことする理由なんてないんだろうけど。
暇して事が動き出すのを待っていると真備らの向こう側から、いつか聞いた声が聞こえてきた。
「なに、この魔法でガチガチに固めた部屋は?まさか、あの女狐がいるんじゃ……」
その言葉が聞こえたと共に勢いよく扉が開く。
好機と見て部屋から飛び出そうとしたところ、弾き返された。
「何!?」
「いった……。やっぱり駄目か……」
使用人が開いた瞬間に逃げる可能性があるんだから対策はするよな……。
「お、男の方?」
顔を上げて、扉の向こう側を見ると、そこにはパーティー会場でみたことのあるブレイブ婦人、ローザベッラ・ブレイブがいた。
「貴方……主人がパーティーに呼んだ子ね?なんでここにいるのかしら?」
「この部屋に入らない方がいいですよ」
「は?」
「僕はローシュテール様が張ろうとしなかったのでね。ローシュテール様に呼ばれてここに来たんですが、エサだとか言われて、ここに閉じ込められたんです」
窓も空かない、開いた扉からも出られない。
脱出は現状は無理だと判断して、さっきまで座ってたソファに座り直す。
僕の言葉を聞いたローザベッラ婦人は思い切り僕を睨み付け、憎らしいものを見る目でこちらを見てきた。
「まさか、あの女狐を呼び戻すためのエサなのかしら?」
「女狐が誰か知りませんので、なんとも言えませんね」
「しらばっくれないでちょうだい!全く、十四年前にやっとの思いで追い出したと思ったら連れ戻そうとしているの!?」
ローザベッラ婦人は髪を振り乱し、ヒステリックにわめく。
十四年前?確かスクラップでブレイブ家の使用人がいなくなったのと言われていたのが、同じ年だったような気が……。
「ただの平民のようなくせして、貴族に嫁入りして、貴族の私よりも優先されて、貴族の私よりも先に長男を生むなんて愚行をおかして……。正妻は私だと言うのに……」
カルタは覚めた目で聞いてもいないお家事情をツラツラと語っていくローザベッラを見る。
「確かに何年も子供を産めなかった私が悪いのかもしれないけど、ウザったいから母子ともに虐めてやったら消えたから満足していたのに、あの人はいつまでも卑しい平民と、その子供に固執して長男になるはずの子供を産んだ私に労いの言葉すらない!」
……。
「いつまでも、いつまでも、この十四年間ずっっっと!ロンテに、あの卑しい子供を越えろと言っているのに一行に成果を見せないし……。いつも平民と平民の子ばかり構って……。あぁ!イライラする!」
ローザベッラは、八つ当たりで扉の枠を殴り付ける。
「あの時、追い出すなんて生易しい真似するんじゃなかった!母子ともに殺しておけばよかった!」
大きな声で、息をつくまもなく言い続け、息をきらせた婦人は息を整えるとふらふらと扉から離れて、天井を仰ぐ。
深く息を吐いて、髪を整えて、正面を向く。
「取り乱しましたわ。どうも、あの親子のことになると正気ではいられませんの」
「そうですか」
一言しか返答を返さないカルタにローザベッラは先の発言になにか言って欲しかったのか、何か言いたげなの表情になるがカルタが自分をどう見てるのか悟ったらしい。
顔を歪め、片手を上げて部屋に入ってこようとして立ち止まる。
恐らくはカルタのことを打とうとしたんだろうけど、部屋にやってきた当初のカルタの言い分を思いだし立ち止まった。
その代わりと言わんばかりにキッと目をつり上げて、怒鳴り散らす。
「ただの平民無勢が、その目はなんですか!・?」
「いえ、僕が言うことなんてなにもないです」
僕はローザベッラ婦人から目をそらし、ため息を吐いて、椅子に深く座る。
「っ!!貴方ねえ__」
ローザベッラが続きの言葉を言おうとしたとき、玄関がある方角から扉が開閉する音がした。
「主人ね……」
ローザベッラはカルタを一瞥すると、強い力で部屋の扉を閉めていった。
足音が完全に遠退いたのを確認してから、カルタは深いため息を吐いて、いつのまにか入っていた体の力を抜く。
ローシュテールは色々とおかしいと思ってはいたが、その嫁も嫁だった。
あまりのやばさに頭が痛くなってくる。
本人に言ったら怒られてしまいそうだが、ロンテが哀れに思えてきた。
貴族としてのプライドを優先させて、幼い親子を虐め、追い出し、路頭に迷わせた。
その挙げ句、ロンテ先輩に、いなくなったローレスをこえろと子供の精神を省みず、気にしないような素振りを__いや、卑下する姿勢を見せた。
確かに産後の恨みは一生ものだと言う。それがローシュテールに向かうのならばわかるが、レイス親子にも向かっているように見えた。
貴族の娘、貴族の嫁ならば、そういった考えがあるのはわかる。
時代が時代だ。そうなるのも無理はないし、子供が産まれないのならば側室だってとるだろう。
そうでもしなければお家断絶だろうからだ。養子をとるって言う選択しもあるんだろうが、貴族や王族なんかは血を優先させる嫌いがあるから側室と言う手段になったんだろう。
それで、どういうわけが平民、しかももとは使用人だったろうアーネチカさんを嫁にした。
側室をとるのなら、ローザベッラ婦人と同じ貴族の方がいいだろう。トラブルを起こさないためにも。
そうしないから、今こうなっている。
当主の方も、理解しがたい。
そもそも僕は一夫多妻だとかするやつの心理を理解したくないし、する気もないが、この世界の状態的に仕方がないのでそこは飲み込む。
一夫多妻になるのならば軋轢が起こらないようにするのが勤めの一つなんじゃないだろうか?
プライドの高い貴族の間なら確実に苛めの対象になるだろう平民を側室に向かえて、その上に産後の扱いと、扱いに差を作り出した。
ローザベッラ婦人が不満を持ち、レイス親子を目の敵にするのも、ある意味では納得がいく。
それもで、殺そうとするのはやりすぎだが。
それにレイス親子が出ていったのを見るにローシュテールは双方のケアも、仲裁も、守ろうとすることも然程していなかったみたいだし……。
ローシュテールの対応が違ったら、現状も違ったのかもしれない。
時代背景を考えてもローシュテールがやらかしすぎている。
「はぁ、これだから色恋に現を抜かして道理も通さない馬鹿は嫌いなんだ……」
あーいうのは結局回りを傷つけて振り回して、好きかったやった結果の代償は放り投げて、そのくせ自分達だけは幸せになろうとするのだから。
……。
「すぅ……はぁ……」
深呼吸して落ち着く。
……いつまでも理解できないバカのことを考えてる暇もない。
さっき、ローザベッラ婦人がローシュテールが帰ってきたと言っていた。
確認はとれないが十中八九、事実だろう。
となればレイス親子の両方、それか片方をこの屋敷に連れて帰ってきたんだろう。
しまったな。
こうなる前にしか怪我発動して、戌井達が先生か騎士辺りを引き連れてくるのだと思ったんだが……。
今向かっている途中なのを願おう。
それと片方しか捕まっていないと言うのもだ。
捕まった方、酷いことされないといいんだが……。
ブレイブ家に閉じ込められ、数時間。
敵陣だから飲む気なんて微塵もないけど、お茶の一つくらいだしたらどうなんだ?と待たされ過ぎて思ってしまうくらいだった。
まぁ、エサ基レイス親子をブレイブ家につれてくるための人質なのだから、そんなことする理由なんてないんだろうけど。
暇して事が動き出すのを待っていると真備らの向こう側から、いつか聞いた声が聞こえてきた。
「なに、この魔法でガチガチに固めた部屋は?まさか、あの女狐がいるんじゃ……」
その言葉が聞こえたと共に勢いよく扉が開く。
好機と見て部屋から飛び出そうとしたところ、弾き返された。
「何!?」
「いった……。やっぱり駄目か……」
使用人が開いた瞬間に逃げる可能性があるんだから対策はするよな……。
「お、男の方?」
顔を上げて、扉の向こう側を見ると、そこにはパーティー会場でみたことのあるブレイブ婦人、ローザベッラ・ブレイブがいた。
「貴方……主人がパーティーに呼んだ子ね?なんでここにいるのかしら?」
「この部屋に入らない方がいいですよ」
「は?」
「僕はローシュテール様が張ろうとしなかったのでね。ローシュテール様に呼ばれてここに来たんですが、エサだとか言われて、ここに閉じ込められたんです」
窓も空かない、開いた扉からも出られない。
脱出は現状は無理だと判断して、さっきまで座ってたソファに座り直す。
僕の言葉を聞いたローザベッラ婦人は思い切り僕を睨み付け、憎らしいものを見る目でこちらを見てきた。
「まさか、あの女狐を呼び戻すためのエサなのかしら?」
「女狐が誰か知りませんので、なんとも言えませんね」
「しらばっくれないでちょうだい!全く、十四年前にやっとの思いで追い出したと思ったら連れ戻そうとしているの!?」
ローザベッラ婦人は髪を振り乱し、ヒステリックにわめく。
十四年前?確かスクラップでブレイブ家の使用人がいなくなったのと言われていたのが、同じ年だったような気が……。
「ただの平民のようなくせして、貴族に嫁入りして、貴族の私よりも優先されて、貴族の私よりも先に長男を生むなんて愚行をおかして……。正妻は私だと言うのに……」
カルタは覚めた目で聞いてもいないお家事情をツラツラと語っていくローザベッラを見る。
「確かに何年も子供を産めなかった私が悪いのかもしれないけど、ウザったいから母子ともに虐めてやったら消えたから満足していたのに、あの人はいつまでも卑しい平民と、その子供に固執して長男になるはずの子供を産んだ私に労いの言葉すらない!」
……。
「いつまでも、いつまでも、この十四年間ずっっっと!ロンテに、あの卑しい子供を越えろと言っているのに一行に成果を見せないし……。いつも平民と平民の子ばかり構って……。あぁ!イライラする!」
ローザベッラは、八つ当たりで扉の枠を殴り付ける。
「あの時、追い出すなんて生易しい真似するんじゃなかった!母子ともに殺しておけばよかった!」
大きな声で、息をつくまもなく言い続け、息をきらせた婦人は息を整えるとふらふらと扉から離れて、天井を仰ぐ。
深く息を吐いて、髪を整えて、正面を向く。
「取り乱しましたわ。どうも、あの親子のことになると正気ではいられませんの」
「そうですか」
一言しか返答を返さないカルタにローザベッラは先の発言になにか言って欲しかったのか、何か言いたげなの表情になるがカルタが自分をどう見てるのか悟ったらしい。
顔を歪め、片手を上げて部屋に入ってこようとして立ち止まる。
恐らくはカルタのことを打とうとしたんだろうけど、部屋にやってきた当初のカルタの言い分を思いだし立ち止まった。
その代わりと言わんばかりにキッと目をつり上げて、怒鳴り散らす。
「ただの平民無勢が、その目はなんですか!・?」
「いえ、僕が言うことなんてなにもないです」
僕はローザベッラ婦人から目をそらし、ため息を吐いて、椅子に深く座る。
「っ!!貴方ねえ__」
ローザベッラが続きの言葉を言おうとしたとき、玄関がある方角から扉が開閉する音がした。
「主人ね……」
ローザベッラはカルタを一瞥すると、強い力で部屋の扉を閉めていった。
足音が完全に遠退いたのを確認してから、カルタは深いため息を吐いて、いつのまにか入っていた体の力を抜く。
ローシュテールは色々とおかしいと思ってはいたが、その嫁も嫁だった。
あまりのやばさに頭が痛くなってくる。
本人に言ったら怒られてしまいそうだが、ロンテが哀れに思えてきた。
貴族としてのプライドを優先させて、幼い親子を虐め、追い出し、路頭に迷わせた。
その挙げ句、ロンテ先輩に、いなくなったローレスをこえろと子供の精神を省みず、気にしないような素振りを__いや、卑下する姿勢を見せた。
確かに産後の恨みは一生ものだと言う。それがローシュテールに向かうのならばわかるが、レイス親子にも向かっているように見えた。
貴族の娘、貴族の嫁ならば、そういった考えがあるのはわかる。
時代が時代だ。そうなるのも無理はないし、子供が産まれないのならば側室だってとるだろう。
そうでもしなければお家断絶だろうからだ。養子をとるって言う選択しもあるんだろうが、貴族や王族なんかは血を優先させる嫌いがあるから側室と言う手段になったんだろう。
それで、どういうわけが平民、しかももとは使用人だったろうアーネチカさんを嫁にした。
側室をとるのなら、ローザベッラ婦人と同じ貴族の方がいいだろう。トラブルを起こさないためにも。
そうしないから、今こうなっている。
当主の方も、理解しがたい。
そもそも僕は一夫多妻だとかするやつの心理を理解したくないし、する気もないが、この世界の状態的に仕方がないのでそこは飲み込む。
一夫多妻になるのならば軋轢が起こらないようにするのが勤めの一つなんじゃないだろうか?
プライドの高い貴族の間なら確実に苛めの対象になるだろう平民を側室に向かえて、その上に産後の扱いと、扱いに差を作り出した。
ローザベッラ婦人が不満を持ち、レイス親子を目の敵にするのも、ある意味では納得がいく。
それもで、殺そうとするのはやりすぎだが。
それにレイス親子が出ていったのを見るにローシュテールは双方のケアも、仲裁も、守ろうとすることも然程していなかったみたいだし……。
ローシュテールの対応が違ったら、現状も違ったのかもしれない。
時代背景を考えてもローシュテールがやらかしすぎている。
「はぁ、これだから色恋に現を抜かして道理も通さない馬鹿は嫌いなんだ……」
あーいうのは結局回りを傷つけて振り回して、好きかったやった結果の代償は放り投げて、そのくせ自分達だけは幸せになろうとするのだから。
……。
「すぅ……はぁ……」
深呼吸して落ち着く。
……いつまでも理解できないバカのことを考えてる暇もない。
さっき、ローザベッラ婦人がローシュテールが帰ってきたと言っていた。
確認はとれないが十中八九、事実だろう。
となればレイス親子の両方、それか片方をこの屋敷に連れて帰ってきたんだろう。
しまったな。
こうなる前にしか怪我発動して、戌井達が先生か騎士辺りを引き連れてくるのだと思ったんだが……。
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