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第8章 ギルド長の任務は大変だ
第110話 その真実は、残酷すぎる
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『サラ様。いくつか端的に真実と要望をお伝えします。まず、私が魔王です。なので私はこれから姿をくらまし、数多のモンスターとともに侵攻を開始しようと考えています。今までありがとうございました。完成した至高のコーヒーの味、ぜひ大陸に、そして世界中に広げていってください』
──どういうことだ? 新手のジョークか? いや、チハヤがそんなことを言うわけがない。だったら、どういうことだ?
「いったいぜんたい、どういうことですの!? サラ! 答えなさい!!」
マリーが立ち上がった拍子に、音を立ててイスが倒れた。座っていた私は胸倉をつかまれる。
「チハヤが魔王ってどういうこと!? 知っていたんですの!? まったく意味がわかりません!!」
「落ち着くんだ、マリー! サラから手を離して!」
強くつかまれた手をフランチェスカさんがほどく。それでもマリーは、大声でわめき立てた。
「チハヤはなんなんですの!? どこへ行き、なにをしようとしているのか、なんのためにギルドをつくってコーヒーまでつくっていたのか──これじゃなにも、なにもわかりませんわ!!」
盛大な舌打ちがトーヴァから聞こえる。バンッ、とみんなが座るテーブルが叩かれた。
「くっそ、なんで気がつかなかったんだ! あいつの強さは異常だ! どんな強敵にも余裕で勝てるやつの強さ──魔王そのものじゃねぇか!」
「……たしかに、あの執事の強さは異常だった。うちのヤマトも軽く凌駕する魔法──確か時空魔法と言っていたけど、あれは一人間が持っていい魔法じゃないよ」
「ただ強いだけでは、魔王だと断定できないですわ! もっと確たる証拠はありませんの!?」
静まり返るギルド。少ししておずおずと話し始めたのは、リリアだった。
「あの、チハヤさんは回復魔法が使えないんですよね? いろんな魔法が使えるのに、回復魔法が使えないのは変な気がするんです……関係ないかもしれないですけど」
「いや、それは関係大ありだ! 回復魔法やスペシャルヒーラーは神聖魔法に連なる魔法。神聖魔法は魔王には使えない!」
「だったら、確定ですわね! つまりはチハヤが魔王だと──聞いているのですか、サラ!?」
マリーの問いかけに私は顔を上げた。みんなが私を見ている。マリーにフランチェスカさんに、レオンさん。トーヴァにリリア。
だけど──エルサさんは唇を噛みしめ、グレースはすすり泣きをし、クリスさんは組んだ手のひらに頭をつけて視線を落としていた。
「チハヤが、魔王だって言うのか?」
マリーは即座にうなずいた。
「現状では、そう考えざるを得ません」
「そっか……そういうことらしいぞ、チハヤ」
チハヤからの返事はなかった。私はクローバーの髪留めに指を触れた。
「チハヤ……聞こえてんだろ? みんながお前のことを魔王だって言ってる。本当のところはどうなんだ?」
なにも言葉は返ってこない。なんの音もしない。髪留めを外して、直接言葉をぶつける。
「なあ、返事をしろよ……返事をしてくれ! チハヤ! ウソだって言って、冗談だと言ってくれ! お願い……だから──」
「サラ、あなた……」
歯を食いしばる。クローバーに力を込める。
机を思い切り叩いて私は立ち上がった。
「なんでこんなことになってんだよ!? どこに消えたんだ!? 説明しろよ!」
「サラちゃん、もうやめて──」
「魔王を倒すためにギルドをつくったんじゃないのか!? それなのにお前が魔王って──意味わかんないだろうが!!」
最後の期待を込めて返事を待ってみるが、それでもなにも返ってこなかった。
「……クリスさん。どうしよう? これ、ただのブローチになっちゃったよ……」
「サラ──」
クリスさんの声は震えていた。涙を我慢しているように。
「ギルドが上手くいかなかったら、このブローチを売ろうと思ってたのに。天使みたいな超絶イケメン執事と話せる魔法のアイテムだって……それなのに、さ。こんなのってないよ……」
クローバーのブローチは、なにも知らずにきれいに輝いていた。
『私の世界で幸運の意味がある四葉のクローバーです。お守りがわりに、どうぞ綺麗な赤髪にお付けください』
ふざけるなよ、チハヤ。やっぱりお前は天使じゃなくて悪魔だ。
「なにが幸運のお守りだよ! こんなの、こんなの!! なんの意味もないじゃねぇか!!」
私は髪留めを握りしめると、床に向かって思い切り投げつけた。クローバーはテン、テン、テン、テンとギルドの入口まで転がっていく。
そこにはいつの間にか来訪者が立っていた。
「四葉のクローバー。そうか、これはチハヤさんのプレゼントだったんですね」
ランタンの灯りが顔を浮かび上がらせる。
「ヤマトさん……?」
「はい。お久しぶりです。そろそろみなさんのお手伝いにと来たところなんですが、タイミング的には逆にちょうどよかったみたいですね」
ヤマトさんはクローバーの髪留めを拾った。でも。
「いらないです。それはもうなんの役にも立たないんで」
「いや、そういうわけにはいかない──」
ヤマトさんはいきなり私の手を引っ張ると、無理やり手のひらの上にクローバーを置いた。
「いらないって! やめてください! 私にはもう必要ないんです!!」
「希望」
「えっ?」
ヤマトさんの真剣な瞳がクローバーに落とされる。
「花言葉です。異世界にはクローバーの葉の一つ一つに意味があります。『希望』『信仰』『愛情』『幸福』──そして、四葉のクローバーには幸運とともにもう一つ『私のものになって』という意味があるんです」
トクン、とこんなときなのに胸が高鳴る。
「チハヤさんの事情はわかりません。ですが、あの人はいつもサラを守ってきた。そうですよね?」
それは、そうかもしれない──だけど、今さらなんの意味があるって言うの?
「そして、サラもあの人のことを、チハヤさんのことを想っている。好き……なんでしょう?」
好き……? 私はぼんやりと顔を上げた。ヤマトさんはどこか哀しげに微笑んでいた。
好き。わからない、だけど。手のひらにあるクローバーは温かかった。
「オレは、本気で戦ってあの人の強さを知りました。だからこそ思うんです。心の底からチハヤさんが魔王であるなら、こんなムダなことをするとは思えない。敵の戦力を強くするようなことはしないって」
──どういうことだ? 新手のジョークか? いや、チハヤがそんなことを言うわけがない。だったら、どういうことだ?
「いったいぜんたい、どういうことですの!? サラ! 答えなさい!!」
マリーが立ち上がった拍子に、音を立ててイスが倒れた。座っていた私は胸倉をつかまれる。
「チハヤが魔王ってどういうこと!? 知っていたんですの!? まったく意味がわかりません!!」
「落ち着くんだ、マリー! サラから手を離して!」
強くつかまれた手をフランチェスカさんがほどく。それでもマリーは、大声でわめき立てた。
「チハヤはなんなんですの!? どこへ行き、なにをしようとしているのか、なんのためにギルドをつくってコーヒーまでつくっていたのか──これじゃなにも、なにもわかりませんわ!!」
盛大な舌打ちがトーヴァから聞こえる。バンッ、とみんなが座るテーブルが叩かれた。
「くっそ、なんで気がつかなかったんだ! あいつの強さは異常だ! どんな強敵にも余裕で勝てるやつの強さ──魔王そのものじゃねぇか!」
「……たしかに、あの執事の強さは異常だった。うちのヤマトも軽く凌駕する魔法──確か時空魔法と言っていたけど、あれは一人間が持っていい魔法じゃないよ」
「ただ強いだけでは、魔王だと断定できないですわ! もっと確たる証拠はありませんの!?」
静まり返るギルド。少ししておずおずと話し始めたのは、リリアだった。
「あの、チハヤさんは回復魔法が使えないんですよね? いろんな魔法が使えるのに、回復魔法が使えないのは変な気がするんです……関係ないかもしれないですけど」
「いや、それは関係大ありだ! 回復魔法やスペシャルヒーラーは神聖魔法に連なる魔法。神聖魔法は魔王には使えない!」
「だったら、確定ですわね! つまりはチハヤが魔王だと──聞いているのですか、サラ!?」
マリーの問いかけに私は顔を上げた。みんなが私を見ている。マリーにフランチェスカさんに、レオンさん。トーヴァにリリア。
だけど──エルサさんは唇を噛みしめ、グレースはすすり泣きをし、クリスさんは組んだ手のひらに頭をつけて視線を落としていた。
「チハヤが、魔王だって言うのか?」
マリーは即座にうなずいた。
「現状では、そう考えざるを得ません」
「そっか……そういうことらしいぞ、チハヤ」
チハヤからの返事はなかった。私はクローバーの髪留めに指を触れた。
「チハヤ……聞こえてんだろ? みんながお前のことを魔王だって言ってる。本当のところはどうなんだ?」
なにも言葉は返ってこない。なんの音もしない。髪留めを外して、直接言葉をぶつける。
「なあ、返事をしろよ……返事をしてくれ! チハヤ! ウソだって言って、冗談だと言ってくれ! お願い……だから──」
「サラ、あなた……」
歯を食いしばる。クローバーに力を込める。
机を思い切り叩いて私は立ち上がった。
「なんでこんなことになってんだよ!? どこに消えたんだ!? 説明しろよ!」
「サラちゃん、もうやめて──」
「魔王を倒すためにギルドをつくったんじゃないのか!? それなのにお前が魔王って──意味わかんないだろうが!!」
最後の期待を込めて返事を待ってみるが、それでもなにも返ってこなかった。
「……クリスさん。どうしよう? これ、ただのブローチになっちゃったよ……」
「サラ──」
クリスさんの声は震えていた。涙を我慢しているように。
「ギルドが上手くいかなかったら、このブローチを売ろうと思ってたのに。天使みたいな超絶イケメン執事と話せる魔法のアイテムだって……それなのに、さ。こんなのってないよ……」
クローバーのブローチは、なにも知らずにきれいに輝いていた。
『私の世界で幸運の意味がある四葉のクローバーです。お守りがわりに、どうぞ綺麗な赤髪にお付けください』
ふざけるなよ、チハヤ。やっぱりお前は天使じゃなくて悪魔だ。
「なにが幸運のお守りだよ! こんなの、こんなの!! なんの意味もないじゃねぇか!!」
私は髪留めを握りしめると、床に向かって思い切り投げつけた。クローバーはテン、テン、テン、テンとギルドの入口まで転がっていく。
そこにはいつの間にか来訪者が立っていた。
「四葉のクローバー。そうか、これはチハヤさんのプレゼントだったんですね」
ランタンの灯りが顔を浮かび上がらせる。
「ヤマトさん……?」
「はい。お久しぶりです。そろそろみなさんのお手伝いにと来たところなんですが、タイミング的には逆にちょうどよかったみたいですね」
ヤマトさんはクローバーの髪留めを拾った。でも。
「いらないです。それはもうなんの役にも立たないんで」
「いや、そういうわけにはいかない──」
ヤマトさんはいきなり私の手を引っ張ると、無理やり手のひらの上にクローバーを置いた。
「いらないって! やめてください! 私にはもう必要ないんです!!」
「希望」
「えっ?」
ヤマトさんの真剣な瞳がクローバーに落とされる。
「花言葉です。異世界にはクローバーの葉の一つ一つに意味があります。『希望』『信仰』『愛情』『幸福』──そして、四葉のクローバーには幸運とともにもう一つ『私のものになって』という意味があるんです」
トクン、とこんなときなのに胸が高鳴る。
「チハヤさんの事情はわかりません。ですが、あの人はいつもサラを守ってきた。そうですよね?」
それは、そうかもしれない──だけど、今さらなんの意味があるって言うの?
「そして、サラもあの人のことを、チハヤさんのことを想っている。好き……なんでしょう?」
好き……? 私はぼんやりと顔を上げた。ヤマトさんはどこか哀しげに微笑んでいた。
好き。わからない、だけど。手のひらにあるクローバーは温かかった。
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どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
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