『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん

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第81話 ガルデス領攻防戦と遂に補足できた敵

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翌朝。
ガルデス領第2砦。

領主であるノイド・ガルデスの檄が飛ぶ。


※※※※※


バルイルドさんやリョダと話し合いを行った後すぐ。
突然出現したダンジョンから多くの魔物があふれ出していた。

スタンピード。

いまだかつてないその規模に、僕は結界を構築し抑えたのだけれど。
どうやら『結界破壊特化の個体』がいるようで。

今朝になって僕の故郷であるガルデス辺境伯領にとんでもない数の魔物が押し寄せていた。


※※※※※


「全軍傾聴――絶対にこの砦で押さえろ。…領民を、領地を守るぞ!!」
「「「「「おうっ!!」」」」」

指示を出す父上。
そんな父上が僕に視線を向ける。

「ライト」
「はい」

何故か難しい顔をし、ため息をつく父上。
そして苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ僕に問いかけた。

「…これは例の“異星の神”の仕業なのか」
「…おそらくは」
「ふむ」

腕を組み考える父上。
実は今回溢れた魔物の群れ、基本的には元々いた魔物で構築されていた。
しかし所どころに『見たことの無い魔物』も。

『マスター、次元の融合を確認しました…違う摂理のモノ…紛れ込んでいます』
(っ!?…異星の魔物?…強いの?)

『通常ではない耐性を持っているものがおります…この世界の属性魔術、効かない可能性が高いです』

(っ!?…それはまずいね…ねえセイ)
『…はい』

(僕の“雷撃”は効果ありそうかな?)

『…もともとこの世界に“雷撃の概念”はありません。…メチャクチャ効果ありそうですよ?』

(よし!)


「父上」
「どうした、ライト?」

「僕の作った武具の使用許可くださいませんか?どうやらあの見たことない魔物、通常の4属性魔術、効果が得られないようです。…雷撃を込めた幾つかの武器、特に隊長クラスに使わせたいのですが…」

「…雷撃?…あ、あの、“ビリっ”とするやつか?」
「ええ…ティア、非常事態だ…良いよね?」

雷撃魔術――
この世界の摂理に無い、ほぼすべての生き物に適応する魔術。
正直この武器についてはティアに怒られて封印していた、まさに規格外の代物。

はっきり言うと隊長クラスだけでなく、全員分あるのだけれど…
取り敢えず見たことの無い魔物については隊長クラスに対応してもらおう。

「…ふう。仕方ありませんわね…ノイド卿」
「はっ」
「許可します。どうかお使いいただきたく」
「…承知いたしました。…ライト、武器はどこにある…っ!?なあっ?!!」

僕はインベントリから大量の武器を取り出した。
城壁を埋め尽くす膨大な鈍く光る剣の山。

隣で固唾を呑んでいたグラドールさんがごくりとつばを飲み込んだ。

「…まったく。ライトは本当に規格外だな…だが、これで対抗できる、そうなのだな?」
「ええ。セイの見立てです。間違いはないかと」

「よし、分かった。…伝令!」
「はっ!」
「小隊長クラス以上を集めろ。すぐにだ!」
「承知いたしました!」


こうして対抗手段を得た僕たち。
それじゃあチャチャッと片づけますかね?

僕はティアと二人、おそらく敵の主力であろう場所へと転移したんだ。


※※※※※


南の大森林。
今ここでは次元が交錯し、様々な世界線が混在していた。

新たに顕現した禍々しいダンジョンの奥深く――
異様な様相、まさに“邪神の居城”のような神殿の奥深くは混乱に包まれていた。


「…フェレネルト様…予定より早いのでは?」

「うるさいな。問題ないでしょ?大体この星じゃせいぜいレベル100くらいで頭打ち。私の可愛いペット『ナー君』の敵じゃないわ…ていうか早く安定させなさい?!…これじゃリュガリール様に怒られちゃうじゃない!」

扇子のような物で仰ぎ、苛立ちを隠さない少女。
彼等の絶対的支配者である創世神リュガリール。
彼の無言の圧力――フェレネルトは怯えていた。

あふれ出す魔力に従者たちは思わず身震いをしてしまう。

「…そう言われましても…だから申したでしょうに。…次元の安定には時間がかかると――それなのに勝手にちょっかいをかけるとか…」

ふくれっ面をし、従者であるボナイレイドを睨み付けるフェレネルト。
彼女の使命はこの星、ミラリルスを支配するための『調査と掃討』だったのだが…

『いきなり攻め込めば面白いんじゃないのかな♡…きっと褒めていただける♡』

とか言って、周りが反対する中強硬的に禁忌に触れるアーティーファクトを発動させていた。
そして解き放つ自身の眷属たち。

――その結果。

確かに星に干渉することはできたが…
まったくコントロールが効かずに、従者の皆が四苦八苦しながらどうにか安定化を図っているところだった。

何しろ安定のしない今、彼女たちの力は制限されていた。

「…フェレ嬢ちゃん」
「っ!?…な、な、何かしら?…ヒョナ婆」

そんな中。
奥から顔を出す、従者筆頭で唯一頭の上がらない相手であるヒョナイニダ・デイナ・ビステリナがしかめっ面でフェレネルトを睨み付けた。

「…あんたは確かに女神さまじゃ。あんたの指示には従おう。じゃがね…これはいったいどういう事なんだい?」
「ひうっ。…ど、ど、どうって?」

いきなりフェレネルトのこめかみ辺りを鷲づかむヒョナイニダ。
ギリギリと『してはいけない音』が響き渡る。

「痛いっ!痛い、痛い~!!」
「ふん。お仕置きさね。…あんた、他に隠していることないだろうね?」

次元が交錯している今の状況。
数段上の技術を持つ異星の神、そして眷族たちにとって、この状況での“移動自体”には問題がない。

しかし幾つもの禁忌。
『十全たる力のまま顕現することができない』――そんな状況。

「…確かにこの星を攻めるのは数千年前からの悲願じゃ。何よりあの女神の力、復活しておる。…じゃが…なんだい?この包み込む魔力は…あたしゃこんなすごい魔力見たことがないよ?!」

「ぐぎぎ…と、取り敢えず…は、放して!!」
「ふん」

いきなり手を離され、しりもちをつく女神様。
その様子に何故か皆の生暖かい視線が彼女に集中する。

「ぐぬ、あ、あんたたち!ふ、不敬よ、不敬!!」

「…不敬じゃと?…誰が?誰に?」
「うぐう」

圧を増すヒョナイニダ。
完全なる敗北。
フェレネルトは既に涙目だ。

「報告いたします。…どうやらここから漏れた魔力、そしてフェレネルト様の眷属。世界各地に影響を及ぼしております…探知系の者がいると仮定した場合――ここが特定される、かと」
「っ!?」

そんな中、もたらされた報告。
ヒョナイニダは苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべた。

「…撤退も視野に入れた方がいいねえ。…フェレ嬢ちゃん、ちなみにあんた、力はどの程度なんだい?」
「っ!?て、撤退?…えっと。…レベルは550程度、かな。7割くらい?…秘術も使えない…かも…っ!?あっ、でもでも“強制覚醒”は使えるよ?!…色々問題はあるけど…」

明らかな準備不足。
さらには先走ってしまっていた女神によるちょっかい。

ヒョナイニダは大きくため息をついた。

「撤退じゃ。…早くしな!ここを捨てる…っ!?むうっ?!」

刹那、交錯していた次元、突然安定してしまう。
既に交錯時におけるゲート、使用すら不可能になっていた。

実は干渉していたダンジョンコアである『セイ』がついに掌握に成功したのだ。

「…やられた…おい、ボナイレイド」
「…はっ」
「緊急避難ポッドは使えるね?」
「…3名分のみです。…今ここには8名がおります。…別動隊を待つのが賢明かと」

慌てふためく侵略者一行。
その瞬間、身を引き裂かれそうな濃密な魔力に包まれる。

「ひうっ?!」
「むうっ!?」
「ぐあっ?!」

ゆらりと目の前に出現する『仮面のような物』をつけたおそらく少年。
仮面の目のところから残念なものを見るような瞳を彼らに向けた。

「…ふーん。君たちが侵略者?…思ったよりも弱そうだ…ねえ、提案があるんだけど?」

揺らいでいるその姿。
実体ではなくどうやら魔力の投影――。

「て、提案じゃと?」

「そ。提案。…こんな知らない遠くの星で――死にたくはないでしょ?」
「…話を聞かせてくれるのか?」

「まあね。…うん?時間切れ、かな。…今君たちのおかげで僕の暮らすこの星に混乱が起きている。正直イラつく。…でもさ、きっと話し合いも出来ると僕は思うんだよね…だからさ…」

突然彼らの居る場所、何かの結界で封じられる。
完全な封印術。

もう出ることすら叶わない。

「しばらくおとなしくしていてくれる?…もしそれすら守れないのなら…分かるよね?…おっと、本当に時間がないや。じゃあね」

突然掻き消える、おそらく超絶者。
リフレインするいら立ちを含む冷静な声――
ヒョナイニダは膝から崩れ落ちた。

「…な、何だい?アレは…だめだ…戦うとかそういうレベルではない…」
「ヒョ、ヒョナ婆?…えっ、で、でも…あの魔力ならきっとレベル1000程度じゃ…」
「バカをお言い…確かにこの世界の上限は1000のはずじゃ…じゃが…あやつの術練度…底が見えぬ…リュガリール様でも…敵わぬぞ…」

「っ!?…ま、まさか…そ、そんな…」

絶望に包まれる異星の女神たち。
さらには認識阻害も発動していたのだろう。

すでに先ほどの『おそらく少年』
その力と魔力、そして存在。

すでに彼らの脳裏からその情報は悉く消えていた。
警告のみ、頭に刻まれて。


邂逅はもう間近に迫っていた。
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