16 / 16
最終話 宮下恵理と言う女性――決断の時
しおりを挟む
遠い世界。
日本のとある地方都市の病院のベッドで。
憧れていた――
『ねえ、今日退院する山口さん、来月結婚するらしいわよ』
『へえ。じゃあ毎日お見舞いに来ていたあの子?』
『そうらしいね。はあ。羨ましい』
耳に届く看護師の会話。
リアルなその内容に、私の心が軋み出す。
でも――
(…私には…関係の無い話だ…)
私は沸き上がるそんな思いに蓋をする。
見慣れた点滴台。
クリーム色の天井。
鼻を衝く薬品の匂い――
私、宮下恵理の世界だ。
※※※※※
「恵理、この本でいいの?…もう、お母さん、恥ずかしいのだけれど?」
いつも仕事帰りに、私の様子を見に来てくれるお母さん。
恥ずかしそうに差し出す紙袋。
中には今日発売されたライトBLの本。
「えっと…ごめん…あ、あの…あ、ありがと」
「っ!?…ふふ。…いいよ。…絶対に治るから…ねっ」
「…うん」
――知っていた。
もう――残された時間が少ない事を。
※※※※※
「心拍数、低下です――心臓マッサージを!」
「行きます――1,2,3――1,2,3――」
「恵理!…目を、目を開けてっ!」
「…恵理…ぐすっ…恵理ッ!!」
すすり泣く声――
蘇生を試みる、看護師さんたちの必死の声――
「ピ――――」
「……17時32分――ご臨終です――」
暗転する視界。
私は。
宮下恵理は。
16歳でその生涯を閉じた。
※※※※※
目に入る見慣れた自室の天井。
懐かしい夢――心振るえる悲しい夢――
でも。
私は愛されていた。
起き上がりベッドに腰を掛ける。
どうやら私は――泣き疲れてそのまま眠ってしまったらしい。
『……エリ?…大丈夫?』
何気に優しい元魔王。
その気遣いに、迂闊にも涙が滲む。
「うん…大丈夫」
『そっか…もう、暗いよ?…あんたは最強でチートの魔王なんだから。しゃっきりしなさい』
「ふふっ。そうだね…考えよっか」
まだ何も解決していない。
この世界ノーズイルド、残された時間。
およそあと1年と3か月。
この星の盟主として。
責任ある立場として。
私は決断する必要があるんだ。
大きく伸びをする私。
そして。
『ねえ。どうせ消えちゃうならさ。…もう一度違う男探す?』
「却下」
何気にとんでもない事を宣う元魔王。
すでに私は恋を自覚した。
今更違う男なんて――そんなの絶対に無理だ。
「とにかく。この世界の摂理――とことん調べるよ」
『はあ。それしかないよね』
私は前を向く。
病弱で。
弱くて。
意気地なしだった宮下恵理。
もうそんな弱かった自分はもういない。
「私は最強の魔王――我はエリルギード・ルデラ・イスガイヤなのだから」
※※※※※
「フン貴様、よもや忘れてはおるまいな。誰が最強か、今一度その魂に焼き付けてくれようぞ!!」
「ぐうっ、ぐぎゃああああああああああ――――――」
あれから5年が経過していた。
未だエリルギードは結婚していない。
最強の魔王としてこの星を管理していた。
でも……
※※※※※
「エリ、相変わらず君は強いな」
「うん。お疲れ様だねラギ」
自然に抱き合う二人。
すでに彼らは絶対の信頼で結ばれていた。
「ねえ、エリ。そろそろ結婚しない?もう待ちくたびれちゃうよ?」
「うーん。でもね、もうちょっと待って。……もう少しでね、この星安定するから」
魔王エリルギード。
最強無敵のとんでも魔王は、新たな星を創造していた。
あのアホ神。
彼の世界には大きな欠点が見つかっていた。
いずれ消えゆく運命だったノーズイルド。
魔王エリルギードは愛に目覚めたことで新たな力を得ていた。
「創造」
とんでもないチートスキル。
何よりあの星の摂理だと、救ったとしても愛する人、ラギドは神になってしまう。
そうすれば一緒にはいられないのだ。
だから彼女、最強の魔王は考え抜いた。
ダメなら作ればいい。
あり得ないほどのチートの彼女は最後までチートのままだった。
愛と言う感情を理解し。
そしてそれを守り抜く決意。
最強でチートのとんでも魔王。
彼女の愛の選択はまだまだ続いていく。
愛するラギド、その体温を感じながら。
FIN
日本のとある地方都市の病院のベッドで。
憧れていた――
『ねえ、今日退院する山口さん、来月結婚するらしいわよ』
『へえ。じゃあ毎日お見舞いに来ていたあの子?』
『そうらしいね。はあ。羨ましい』
耳に届く看護師の会話。
リアルなその内容に、私の心が軋み出す。
でも――
(…私には…関係の無い話だ…)
私は沸き上がるそんな思いに蓋をする。
見慣れた点滴台。
クリーム色の天井。
鼻を衝く薬品の匂い――
私、宮下恵理の世界だ。
※※※※※
「恵理、この本でいいの?…もう、お母さん、恥ずかしいのだけれど?」
いつも仕事帰りに、私の様子を見に来てくれるお母さん。
恥ずかしそうに差し出す紙袋。
中には今日発売されたライトBLの本。
「えっと…ごめん…あ、あの…あ、ありがと」
「っ!?…ふふ。…いいよ。…絶対に治るから…ねっ」
「…うん」
――知っていた。
もう――残された時間が少ない事を。
※※※※※
「心拍数、低下です――心臓マッサージを!」
「行きます――1,2,3――1,2,3――」
「恵理!…目を、目を開けてっ!」
「…恵理…ぐすっ…恵理ッ!!」
すすり泣く声――
蘇生を試みる、看護師さんたちの必死の声――
「ピ――――」
「……17時32分――ご臨終です――」
暗転する視界。
私は。
宮下恵理は。
16歳でその生涯を閉じた。
※※※※※
目に入る見慣れた自室の天井。
懐かしい夢――心振るえる悲しい夢――
でも。
私は愛されていた。
起き上がりベッドに腰を掛ける。
どうやら私は――泣き疲れてそのまま眠ってしまったらしい。
『……エリ?…大丈夫?』
何気に優しい元魔王。
その気遣いに、迂闊にも涙が滲む。
「うん…大丈夫」
『そっか…もう、暗いよ?…あんたは最強でチートの魔王なんだから。しゃっきりしなさい』
「ふふっ。そうだね…考えよっか」
まだ何も解決していない。
この世界ノーズイルド、残された時間。
およそあと1年と3か月。
この星の盟主として。
責任ある立場として。
私は決断する必要があるんだ。
大きく伸びをする私。
そして。
『ねえ。どうせ消えちゃうならさ。…もう一度違う男探す?』
「却下」
何気にとんでもない事を宣う元魔王。
すでに私は恋を自覚した。
今更違う男なんて――そんなの絶対に無理だ。
「とにかく。この世界の摂理――とことん調べるよ」
『はあ。それしかないよね』
私は前を向く。
病弱で。
弱くて。
意気地なしだった宮下恵理。
もうそんな弱かった自分はもういない。
「私は最強の魔王――我はエリルギード・ルデラ・イスガイヤなのだから」
※※※※※
「フン貴様、よもや忘れてはおるまいな。誰が最強か、今一度その魂に焼き付けてくれようぞ!!」
「ぐうっ、ぐぎゃああああああああああ――――――」
あれから5年が経過していた。
未だエリルギードは結婚していない。
最強の魔王としてこの星を管理していた。
でも……
※※※※※
「エリ、相変わらず君は強いな」
「うん。お疲れ様だねラギ」
自然に抱き合う二人。
すでに彼らは絶対の信頼で結ばれていた。
「ねえ、エリ。そろそろ結婚しない?もう待ちくたびれちゃうよ?」
「うーん。でもね、もうちょっと待って。……もう少しでね、この星安定するから」
魔王エリルギード。
最強無敵のとんでも魔王は、新たな星を創造していた。
あのアホ神。
彼の世界には大きな欠点が見つかっていた。
いずれ消えゆく運命だったノーズイルド。
魔王エリルギードは愛に目覚めたことで新たな力を得ていた。
「創造」
とんでもないチートスキル。
何よりあの星の摂理だと、救ったとしても愛する人、ラギドは神になってしまう。
そうすれば一緒にはいられないのだ。
だから彼女、最強の魔王は考え抜いた。
ダメなら作ればいい。
あり得ないほどのチートの彼女は最後までチートのままだった。
愛と言う感情を理解し。
そしてそれを守り抜く決意。
最強でチートのとんでも魔王。
彼女の愛の選択はまだまだ続いていく。
愛するラギド、その体温を感じながら。
FIN
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる