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第1章
ニンジャ労働す!3
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「な、え!子供!?」
「き、貴様!いつからそこにいた!?」
一団の狼狽も無理はない。背後から声をかけられるということはつまり、蔵の中にずっといたということなのだから。
「おぬしらが森を抜ける前から一緒におったよ」
だから、解錠魔術師の手元を覗き込めたし、彼が燃える様も正面で眺められた。
単純に隠形の術で姿と気配を隠して、ついてきただけのことだ。
「こ…の、化け物め!貴様は何者だ!?」
「隊長!コイツ、昼に見た怪力のガキです!ここの新入りだ!」
「…ほぅ。やはり覗き見しておったのもおぬしらか」
だとすれば、グスタフならばあの時に侵入を察知していてもおかしくない。
余計な出しゃばりだったかと後悔するが、いまさらの話だ。
「せっかく出来た同僚なんじゃ。気軽に攫わせてやるわけにはいかん」
「くそっ、だったら貴様で十分だ!おい!コイツを連れて行く!全員でかかれ!」
号令に従い、全員が身構え、攻撃する姿勢を見せる。
此の期に及んで、子供と侮ってきたら本当に鍛錬が足りないと怒るところだが、流石にそんなことはなかったらしい、と九郎は安心する。
(だが…もう遅いんじゃよ)
"瞬暫の術"
品定めは済んでいる。もはや彼らを生かしておく、情も理屈もなかった。
隠蔽していた"気"を解き放つと同時に、全身の"気"の循環を加速させる。
視界がスローに、思考は加速していく、身体もそれについて行く。
そして、踏み込み。
全盛期を超えるという九郎の全力の踏み込みはゆうに音を超えた。
ぱぁんっ!という爆音が蔵の中で響き渡る。音の壁を突破したときの音だ。
その衝撃波と音波は天然のパルスグレネードだ。九郎を包囲しようとしていた侵入者たちは一瞬で三半規管を揺さぶられ、立ちくらみを起こす。
(え…)
そして、今まさに魔法の詠唱をしようとしていた魔術師は、目の前に突然現れた少年の小さな掌が砲弾のように自分の胸に突き刺さるのを呆然と見ている羽目になった。
腕は背中まで貫通し、魔術師は即死した。
「"唄う魔術師は真っ先に殺せ"じゃろ」
九郎は心臓を失った死体から即座に腕を引き抜き、まだ頭を抱えている隊員目掛けて飛び上がる。1つ、2つと"飛び石"をするように頭から頭に飛び移る。
足場にされた方は踏み砕かれ、頚椎をへし折られる。
2つ目の"石"からさらに高く飛び上がった九郎は空中で身をひねり、侵入者たちを直上から見下ろす。構えるのは食堂からくすねてきた銀食器だ。
腕を一振りするうちに2本のナイフが空を切る。反対の腕でもう2本。
上空には無防備な頭頂と頸椎の両方を貫かれ、さらに2人の隊員が絶命する。
残った"石"の片割れに着地すれば、そこに立っているのは最後まで何も出来なかった隊長と九郎の2人だけになっていた。
「ば、ば、バカな!?」
涎を撒き散らして絶叫する隊長だが、状況は変わらない。ほんの数瞬、風が通り抜けたような時間で、隊は壊滅したのだ。
もう何をどうしても詰んだ状況だが、それを理解するのを拒み、侵入者の隊長は喚き散らす。
「我々を殺したところで意味はない!我々が戻らなかったら、残した隊員が救援を要請する手はずになっている!!」
「おぬしは少しは考えて喋るべきだの。"ずっと一緒にいた"というたじゃろうが。8人目なら、もうおらんわ」
「え、あ、なん…」
そもそも救援など呼んでどうなる、という話だ。実態はどうあれ、ここは単なる貴族の別荘地だ。
コトを大きくしても、問題になるだけだろう。
「わ、我々は王宮、殿下の配下だ!逆らえば反逆罪だぞ!?」
「知ったことか」
いまさら何を言うのか、と九郎は怒りを覚えた。
「おい、おぬし」
間合いを詰め、胸ぐらを掴んで目を覗き込む。
「乱破素破の類であろうが。汚れ稼業の人間に、報いが回った幕切れに。そんな無様が赦されるはずがなかろう。そんな覚悟も無しに生きてきたというのなら。貴様は豚にも劣る外道に過ぎん」
「ひ、う、わぁあぁ!!」
覗き込んだ九郎の目に何を見たのか。隊長は子供のように泣き叫んで走り出す。
「潔く散ることも出来んのか」
最初から仕込んでいた糸を繰る。背の高い棚と首に引っ掛けて、引き上げる。
「ならば、豚のように、吊るされて死ね」
光の差さない蔵の中には九郎と7つの死体だけになった。
「き、貴様!いつからそこにいた!?」
一団の狼狽も無理はない。背後から声をかけられるということはつまり、蔵の中にずっといたということなのだから。
「おぬしらが森を抜ける前から一緒におったよ」
だから、解錠魔術師の手元を覗き込めたし、彼が燃える様も正面で眺められた。
単純に隠形の術で姿と気配を隠して、ついてきただけのことだ。
「こ…の、化け物め!貴様は何者だ!?」
「隊長!コイツ、昼に見た怪力のガキです!ここの新入りだ!」
「…ほぅ。やはり覗き見しておったのもおぬしらか」
だとすれば、グスタフならばあの時に侵入を察知していてもおかしくない。
余計な出しゃばりだったかと後悔するが、いまさらの話だ。
「せっかく出来た同僚なんじゃ。気軽に攫わせてやるわけにはいかん」
「くそっ、だったら貴様で十分だ!おい!コイツを連れて行く!全員でかかれ!」
号令に従い、全員が身構え、攻撃する姿勢を見せる。
此の期に及んで、子供と侮ってきたら本当に鍛錬が足りないと怒るところだが、流石にそんなことはなかったらしい、と九郎は安心する。
(だが…もう遅いんじゃよ)
"瞬暫の術"
品定めは済んでいる。もはや彼らを生かしておく、情も理屈もなかった。
隠蔽していた"気"を解き放つと同時に、全身の"気"の循環を加速させる。
視界がスローに、思考は加速していく、身体もそれについて行く。
そして、踏み込み。
全盛期を超えるという九郎の全力の踏み込みはゆうに音を超えた。
ぱぁんっ!という爆音が蔵の中で響き渡る。音の壁を突破したときの音だ。
その衝撃波と音波は天然のパルスグレネードだ。九郎を包囲しようとしていた侵入者たちは一瞬で三半規管を揺さぶられ、立ちくらみを起こす。
(え…)
そして、今まさに魔法の詠唱をしようとしていた魔術師は、目の前に突然現れた少年の小さな掌が砲弾のように自分の胸に突き刺さるのを呆然と見ている羽目になった。
腕は背中まで貫通し、魔術師は即死した。
「"唄う魔術師は真っ先に殺せ"じゃろ」
九郎は心臓を失った死体から即座に腕を引き抜き、まだ頭を抱えている隊員目掛けて飛び上がる。1つ、2つと"飛び石"をするように頭から頭に飛び移る。
足場にされた方は踏み砕かれ、頚椎をへし折られる。
2つ目の"石"からさらに高く飛び上がった九郎は空中で身をひねり、侵入者たちを直上から見下ろす。構えるのは食堂からくすねてきた銀食器だ。
腕を一振りするうちに2本のナイフが空を切る。反対の腕でもう2本。
上空には無防備な頭頂と頸椎の両方を貫かれ、さらに2人の隊員が絶命する。
残った"石"の片割れに着地すれば、そこに立っているのは最後まで何も出来なかった隊長と九郎の2人だけになっていた。
「ば、ば、バカな!?」
涎を撒き散らして絶叫する隊長だが、状況は変わらない。ほんの数瞬、風が通り抜けたような時間で、隊は壊滅したのだ。
もう何をどうしても詰んだ状況だが、それを理解するのを拒み、侵入者の隊長は喚き散らす。
「我々を殺したところで意味はない!我々が戻らなかったら、残した隊員が救援を要請する手はずになっている!!」
「おぬしは少しは考えて喋るべきだの。"ずっと一緒にいた"というたじゃろうが。8人目なら、もうおらんわ」
「え、あ、なん…」
そもそも救援など呼んでどうなる、という話だ。実態はどうあれ、ここは単なる貴族の別荘地だ。
コトを大きくしても、問題になるだけだろう。
「わ、我々は王宮、殿下の配下だ!逆らえば反逆罪だぞ!?」
「知ったことか」
いまさら何を言うのか、と九郎は怒りを覚えた。
「おい、おぬし」
間合いを詰め、胸ぐらを掴んで目を覗き込む。
「乱破素破の類であろうが。汚れ稼業の人間に、報いが回った幕切れに。そんな無様が赦されるはずがなかろう。そんな覚悟も無しに生きてきたというのなら。貴様は豚にも劣る外道に過ぎん」
「ひ、う、わぁあぁ!!」
覗き込んだ九郎の目に何を見たのか。隊長は子供のように泣き叫んで走り出す。
「潔く散ることも出来んのか」
最初から仕込んでいた糸を繰る。背の高い棚と首に引っ掛けて、引き上げる。
「ならば、豚のように、吊るされて死ね」
光の差さない蔵の中には九郎と7つの死体だけになった。
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