【完結保証/毎日3話投稿】転生龍覚者と導きの紋章 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜

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5章:救世の龍覚者と導きの龍 〜始原の森へ続く英雄譚〜

第153話:騎士と盾の不器用な距離

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帝都決戦の勝利から、数日が経過した。

街の復興が進む中、エルム公国の騎士団長カイルと、副官イリスの周囲は、妙な熱気に包まれていた。

「よう、カイル団長! イリス副官! 今日も揃ってご出勤ですか!」

「ヒューッ! お熱いねぇ!」

すれ違う兵士たちが、ニヤニヤしながら冷やかしてくる。カイルは顔を真っ赤にして怒鳴り返した。

「うるせぇ! ただの巡回だ!」

「へえ? でも、この間の決戦前、全軍の前ですげぇプロポーズしてませんでしたっけ?」

「そ、それは……! 勢いというか、士気を上げるための演出だ!」

「演出で『一生守る』なんて言わないっすよー!」

ドッと沸く兵士たち。カイルの隣では、イリスもまた、耳まで赤くしてうつむいていた。

「も、申し訳ありませんカイルさん……。わたくしが、あんな大声で返事をしてしまったばかりに……」

「い、いや、お前のせいじゃねえよ。俺が言ったんだからな」

二人の視線が合い、そして弾かれたように逸れる。気まずい。そして、どうしようもなく恥ずかしい。

あの日、戦場で交わした誓いは、国中の誰もが知る「公認の事実」となっていた。だが、当の二人の関係はといえば――。

「……行くぞ、イリス。今日は森で『連携訓練』だ」

「は、はい! 連携の確認ですね! 了解しました!」

 彼らはまだ、「戦友」という殻を破れずにいた。


◇◇◇


エルムヘイム郊外の森。

木漏れ日が差し込む開けた場所で、金属音が激しく響き渡っていた。

ガギィィィンッ!

カイルの剣が、イリスの盾に受け止められる。重い衝撃音が走るが、イリスは一歩も退かない。

「重いですね、カイルさん! 剣筋が冴えています!」

「お前こそ! 鉄壁すぎて嫌になるぜ!」

カイルが踏み込み、連撃を放つ。イリスはそれを最小限の動きでいなし、鋭い刺突で反撃する。

言葉はいらない。呼吸、目線、筋肉の動き。互いの全てが手に取るように分かる。

それは訓練というより、剣と盾を使った求愛のダンスのようだった。

「はぁッ!」

一通りの手合わせを終え、二人は同時に武器を下ろした。額には汗が滲み、息が弾んでいる。

「……やっぱ、お前と合わせるのが一番しっくりくるな」

カイルが汗を拭いながら言うと、イリスは嬉しそうに微笑んだ。

「はい。わたくしも、カイルさんの背中を守っている時が、一番落ち着きます」

その笑顔に、カイルの胸がトクンと鳴る。戦場では頼もしい相棒だが、こうして見ると、彼女はやはり年頃の可愛らしい女性だ。

(……くそ、意識しちまう)

カイルは誤魔化すように視線を逸らした。

「あー、喉渇いたな。そこの川で水でも飲むか」

「はい、冷たくて気持ちよさそうです」

二人は近くを流れる小川へと向かった。苔むした岩場を歩き、水辺に近づいた、その時だった。

「あっ」

イリスの足が、濡れた岩に滑った。

「危ねえ!」

カイルは反射的に手を伸ばし、彼女の腕を掴んだ。だが、足場が悪かったせいで、カイル自身もバランスを崩してしまう。

ドボンッ!!

盛大な水音と共に、二人は川の中へと倒れ込んだ。


◇◇◇


「ぷはっ……! 悪ぃ、大丈夫かイリス?」

浅瀬だったので溺れることはなかったが、二人はずぶ濡れだ。カイルは顔の水を払いながら、イリスを見た。

そして、固まった。

イリスは川底の砂地に仰向けに倒れ、その上にカイルが覆いかぶさるような体勢になっていた。いわゆる、床ドンならぬ「川ドン」の状態だ。

「……は、はい。大丈夫、です……」

イリスの声が震えている。 濡れた髪が頬に張り付き、水に濡れた白い肌が、陽光を浴びて艶かしく輝いている。 

至近距離で重なる視線。

ドクン、ドクン、ドクン。

互いの心臓の音が聞こえるほどに近い。カイルの腕の中に、イリスの体温と柔らかさが伝わってくる。

(……やべえ)

理性が消し飛ぶ音がした。脳裏によぎるのは、あの日、万軍の前で誓った言葉。

『お前が好きだ。死ぬまで俺の横にいてくれ』

あれは演出なんかじゃない。本心だ。

「……イリス」

カイルの声が、熱を帯びて低くなる。イリスの瞳が揺れた。彼女は逃げようとはしなかった。

ただ、潤んだ瞳でカイルを見つめ返し、震える手をそっと彼の背中に回した。

「……カイル、さん……」

それは、許容の合図だった。

理屈も、羞恥心も、もうどうでもよかった。ただ、触れたい。確かめたい。

カイルはゆっくりと顔を近づける。イリスが静かに瞳を閉じた。

重なる唇。

最初はぎこちなく、触れるだけのキス。冷たい川の水とは対照的に、二人の唇は火傷しそうなほど熱かった。

数秒か、永遠か。

唇を離した二人は、茹でダコのように真っ赤になって視線を逸らした。

「……し、しちまったな」

「……は、はい。して、しまいました……」

気まずい沈黙。

だが、そこには以前のような「迷い」や「じれったさ」はなかった。

カイルは立ち上がり、イリスに手を差し出した。

「帰るぞ。……風邪ひくからな」

「はい!」

イリスはその手を強く握り返し、立ち上がる。

繋いだ手は、もう離さない。  言葉にはしなくても、その手から伝わる熱が、二人が「恋人」になったことを雄弁に語っていた。

木漏れ日が二人を優しく照らす中、騎士と盾は、不器用ながらも確かな一歩を踏み出したのだった。
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