薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

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第1章 洞窟出現編

18話 闇の鉱石

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 このままではかなりの被害が出る可能性があった。

 救護所から移動するときに、治療に必要な道具はほとんどシェルターの方に持ってきてよかった。

 近くの兵士に声をかけ、怪我人はこちらに運ぶように伝えると、すぐに何人かが運ばれてきた。

 外の状況は気になってはいたが、今はカクの言う通り、私たちは治療に専念するべきだった。
 今、怪我で苦しんでいる人を助けなければ。

 私たちは先程と同じように、診察、処置、投薬と流れ作業のように効率よく行う事にした。
 怪我人がさっきの比ではないのだ。
 
 魔獣の冷たい息に触れたものは、雪の中に何時間もいたように凍傷を起こしていた。手足は氷のように冷たく、意識がないものもいたのだ。
 また、竜巻に飛ばされたものは、骨折など、重症者も多かったのだ。

 私はまず、診察後すぐに痛みを止めるための薬を使った。自分の世界で使われる痛み止めでは早くても30分くらいは効果が出るまで時間がかかるが、こっちの世界で作ったものは即効性かつ、飲まなくても振りかければ良いので、とても効率が良かった。
 また、一時的ではあるが、すぐに痛みを無くすことができたので、処置もしやすかったのだ。

 凍傷には、タイソウ、ケイヒ、シャクヤク、トウキ、モクツウ、カンゾウ、ゴシュユ、サイシン、ショウキョウ、そして火の鉱石の粉末を混合させたのだ。

 これは、もともと身体の冷えやしもやけなどで使用される漢方なのだが、この薬は前もって準備をしておらず、その場での調合になった。
 まさか、凍傷治療の薬が必要とは思わなかったのだ。
 そして、さっき火傷でも使った薬も一緒に使ってみたのだ。

 かなり、弱った人にどれだけの効果があるか不明だったが、完全回復はなくとも、緩和できればと考えた。
 とにかく、命が助かればと。
 この世界では、処置をし、薬を使った後は安静にさせるくらいしかなかったのだ。
 後は、人間の治癒能力を信じるしかなかった。
 今回の薬はそれを高める作用があるだけなのかもしれないが、少しでも役立つことが出来ればと思った。

 骨折にしても、薬で腫れや打撲は改善しても、骨がすぐについたわけではないようで、添え木で固定をし、回復にはある程度の時間は必要のようだった。

 もちろん、光の鉱石を使った薬の中には完全に元に戻すようなものもあったが、やはり全ての人に使えるほどの量はないため、他に治療法や薬があるならば、それを第一に使用し、使い方を考えなくてはいけなかった。
 それに、精神に働かせる薬には光の鉱石は必要であるため、簡単に使うわけにはいかなかったのだ。
 
 とりあえず、運ばれた怪我人の処置は終わった。
 私たちができる事は全て行ったので、後は回復を祈るのみであった。

 私は外の様子が気になって、階段を上がり、そっと外を確認した。
 
 空飛ぶ魔獣は先程と同じように飛んでいたが、精鋭部隊は風の盾などをうまく使い、ダメージを最小限にとどめていた。しかし、放たれた矢は当たってはいるのだが、やはり大きな効果は得られないようだった。
 
 もしかしたら、これが使えないだろうか・・・。
 私はある薬が頭に浮かんだ。

 シウン大将が持っていた黒いボールのようなものが闇の鉱石からできているものならば、あの薬が使えるかもしれない。
・・・ただ、魔獣に効果があるのか。
 可能性が少しでもあるなら使ってみたいと思ったのだ。
 近くにいる兵士を捕まえて、シウン大将への伝言を頼んだ。

「もし、闇の鉱石を持っているようでしたら、魔獣を弱体化させる薬が作れるかもしれないと、伝えて欲しいのですが。」
 
 すぐに伝言を伝えてくれたようで、数十分ほどでシェルターにシウン大将が来てくれたのだ。

「舞殿でしたね。
 可能性が少しでもあれば、試してみたいものです。
 今、戦況は思わしくありません。」

 シウン大将から詳しく聞いたところ、やはりあの黒いボールは闇の鉱石から出来ていた。魔法陣においてしか、そのボールをぶつけても効果がないものとわかった。
 だが、今のところ魔法陣のところに魔獣を追い込むことが困難のようで、頭を悩ませているらしい。

 少しでも魔獣を弱体化させることができれば、あの矢の効果も高まるだろうし、魔法陣に追い込むことも可能となるようだ。

 ちなみに、あの魔法陣から魔獣がどこに転移したのか気になっていたのだが、そこは軍の機密であるようで、教えてはもらえなかった。

 早速、いただいた黒いボールの中から闇の鉱石の粉末を取り出した。
そう、あの漢方と合わせて見る事にしたのだ。

 それは、病後の体力回復によく使われるもの。
本来、光の鉱石を多量に混合すると完全回復できると書かれていた薬なのだ。
 と言う事は、闇の鉱石と調合すれば、本来の効果の逆に転じるはずなのだ。

 この薬は、あの古びた書物には載ってはいなかったが、闇の鉱石を使った物は全て、対敵に使用するものと思われたのである。

 ただ、魔獣の大きさを考えると、今ここにある漢方と鉱石の粉末の量で足りるか疑問であった。
 しかし、少しでも戦闘能力を低下させることが出来れば、成功なのである。

 後は、精鋭部隊が何とかしてくれるはずなのだ。
 
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