薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

文字の大きさ
26 / 181
第1章 洞窟出現編

26話 再会

しおりを挟む
 私はどうしてもこのまま自分の世界に帰る気になれなかった。
 今後の魔人の動向も不明であるし、まだ私にも手伝える事があるかもしれないと思った。
 それに・・・あの魔人の王が言っていた言葉が気になるのだ。
 いったい誰のことなのだろう。
 一度、魔人の王であるブラックと話がしたいと思うのだった。
 しかし、いつ現れるかもわからない魔人とどう接触したらいいのか。
 洞窟の中は見えない壁が出来ているため、こちらから行くことはできないのだ。
 それに、私がいられるのも、あと数週間くらいが限度だろう。
 音信不通で父が捜索願を出す前には戻らなくては。

 やはり、会うのは無理なのだろうか・・・。

 今はとにかく、私に出来ることをやるしかないと思った。
 私は手元にある漢方で、出来る限りの薬を作る事にした。
 もちろん、闇の薬ではなく、人々の病気や怪我の治療になる薬をである。

 カクにも手伝ってもらう事にした。
 私がいなくなった後は、カクがそれをつかうわけなのだから。

「舞・・・出来る限りのことはしたいと思うよ。
 でも、本当にあと少しで帰るのかい?
 もう少しここにいるのを延ばせないのかい?」 
 
 カクは残念そうに話した。

「あと数週間はいるから大丈夫よ。
 その間に、私が持ってきた漢方で出来る限りの薬を作りたいの。
 光の鉱石は貴重でしょう?
 私が元の世界から行き来するには必要だけど、それよりも薬に使いたいのよ。
 私の帰る分だけ残してもらえれば。
 ある程度光の鉱石がたくさん取れたなら、私にまた送って。
 そうすれば、また来れるしね。」

「・・・そうだね。
 もう、会えないわけじゃないしね。」

 カクは寂しそうに答えた。

 そうなのだ。
 元の世界に戻っても、また来ることは出来るのだ。
 私も寂しさを感じたが、二度と来れないわけじゃないのだ。

 さて、薬の事を考える事にした。
 先日調合した、打撲や腫れ、火傷、化膿に効果のある薬はもちろん必須だろう。
 それに、精神に働きかける魔法を回避するためにも、光の鉱石の薬は必要なのだ。
 貴重なのはわかっていたが、出来る限り作りたいのだ。
 それに、疲労回復としての薬。
 完全回復までにはならなくても肉体的精神的疲労を改善させる薬もつくっておきたかった。

 ジオウ、トウキ、ビャクジュツ、ブクリョウ、ニンジン、ケイヒ、オンジ、シャクヤク、チンピ、オウギ、カンゾウ、ゴミシ

 が入った漢方薬で、体力低下や疲労倦怠、食欲不振などに本来使われるが、光の鉱石を調合することで、すぐに、ある程度の疲労回復の効果があるようだ。
 今後、もし魔人たちと戦う事になった時に、少しでも兵士の体力回復に役立てられればと思った。

 もう一つ、気がかりな事があった。
 シンブのことである。
 古びた書物に書いてある調合の薬は代々カクの家のみに伝わっており、秘密になっている。
 私がいることで、それが公になってしまうのではないかという不安があった。
 秘密にしていた理由はやはりあったのだと思う。
 闇の薬を安易に作ることは、危険なのだ。
 もちろん私が生薬を持ち込まない限り、作ることはできないのだが、今はそれが出来る状態なわけで・・・。
 シンブが知ったら、どう使われるかわからない。
 やはり、私はこの世界に長居をするわけにはいかないと思ったのだ。

 
 ここ数日、静かな日々を過ごす事ができた。
 薬の調合が終わった後は、一人で洞窟の近くに行ってみたのだ。
 今も、兵士によって洞窟の監視は続いていたが、それほど深刻な雰囲気では無かった。
 以前とは違い、急な攻撃に遭うことは無いからだろう。
 私が洞窟に近づいても、周りの兵士は特に止めることは無かった。
 先日の魔人の件で、みんな私を知っていたからだ。
 私は兵士に挨拶だけして、洞窟の中に入っていった。
 中は暗く、シーンと静まり返っていた。
 私の歩く音しか聞こえなかった。
 怖い感じはなく、とても幻想的な感じがしたのだ。
 途中まで行くと、やはり見えない壁のようなもので塞がれていた。
 よく見ると魔法陣のような模様が薄く浮き出ていたのだ。
 魔人による魔法の壁のようであった。

 その後も、もしかしたらと思い、数日洞窟に通ってみたのだ。
 しかし、魔法の壁は変わりなく存在しており、先には進めなかった。

 今日も無理かと、魔法の壁を見つめ、落胆して帰ろうとした時である。
 振り向くと、そこには黒髪の会ってみたいと思っていた人が立っていたのだ。
 全く気配を感じる事が無かったので、私はひどく驚いたのである。

「え?・・・え?」

 私は動揺して、言葉が出なかった。
 
「また、お会いできましたね。」

 魔人の王であるブラックがこちらを見て、微笑んでいたのである。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編。 リーナ視点が主です。 ----- また続けるかもしれませんが、一旦完結です。 ※小説家になろう様にも掲載中。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...