薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

文字の大きさ
37 / 181
第1章 洞窟出現編

37話 魔人の生き残り

しおりを挟む
 魔人達が人間の城を囲む少し前のことである。

 魔人の王であるブラックのところに、食虫植物のような形をした蔓を出した生き物が捕らえられたと報告があった。
 それは植物に見えるのだが、蔓を手足のようにして、移動することもできる怪しい生物であった。

「ああ、これが種から育ったんだね。」

 正直、仕掛けた当人にすでに抹消されてると思っていたのだが、城の中にまだいたと言うのが意外なのだ。
 このなんとも言えない怪しい生物が封印の魔力を吸って育ったようだが、これ自体には攻撃的な能力は存在しないようであった。
 洞窟の封印が解けてしばらく経つが、今まで見つけられなかったのに、今になって出てきた事が、なんらかの意図が存在するのではと思われたのだ。

 ジルコンがこの生物に詳しそうなので、見てもらうことにした。

「あら、やっぱりプランツの肩に乗ってた生き物と同じ感じね。
 これ自身には大きな能力は無いのだけれども、作り出した魔人の力をもらい、この子自身が攻撃する武器みたいにもなるのよ。
 動き出すのも、魔人の指示だと考えられるけど・・・」

 ちょうど、ジルコンとこの植物を眺めていた時である。
 触角のように動いていたい蔓が一斉に動きを止め、口のような形の部分が開き、映像がうかびあがったのだ。

「ブラック様、お久しぶりでございます。
 プランツです。
 500年ぶりに復活する事が出来ました。
 同じように何人かの魔人が目覚めております。
 昔の事ではございますが、ブラック様の指示に従わず、このような有様でございました。
 一同、ブラック様のお許しが頂けるのであれば、異世界の方に行く事を希望しております。
 なにとぞ、500年前の過ちをお許しください。」

 そこには十数名の魔人が頭を下げ、控えているのが映っていた。

「ほほう。これで連絡を取る事ができるとは、すごいものだね。
 それに、何人もの魔人が生き残っていたとは驚きですね。
 ・・・まあ、私としては仲間である魔人であるから構わないけれど。
 ただ一つだけ、洞窟の封印を解いたのはどう言う事か説明していただきましょう。
 それが納得できるものであれば、問題ないですよ。」

 私の質問にどう答えるのだろうか?

「ああ。
 やはり、こいつの影響だったのですね。
 申し訳ありません。
 500年前の戦いの時に、色々なところに種を置いて、多くの情報を得ようと思っておりました。
 見ての通り、このしもべを通して、周りの状況を読み取れたり、連絡を取る事が出来るのです。
 まさかその時の種が異世界転移の道具に付いていたとは、思いもよりませんでした。
 私の魔力が届くところであれば、すぐに成長するのですが、そうでない場合は周りの魔力を取り込んで成長するのです。
 まさか、500年の時間をかけて成長したとは私も驚きです。
 私は人間である時に王室に仕えておりました。
 その時の話では銀髪の魔人が異世界との繋がりを作ったと聞いておりましたが。
 何にせよ、復活した我々にとってはそちらの世界への道が開けたことはありがたいですが。」

 なるほど。封印は意図せず解いてしまったが、洞窟の出現は関係ないと言いたいわけか。
 クオーツは誰かにそそのかされたと思われるのだがね。

「そうですか・・・。
 予想外にこの植物が魔力を吸った事で封印が解かれてしまったと言う事ですね。
 わかりました。
 では、人間の王に今後の事で話をしに行く予定でしたので、その後に君たちに会いに行くとしましょう。」

「ああ。お会いできるのを楽しみにお待ちしております。」

 そう言うと、通信が途絶えたのだ。

「ネフライト、この奇妙な生き物を魔法を封じる牢にでも入れておいてくれ。
 動き回れると、厄介だからね。
 それに通信も最後にしたいからね。」

 部屋の外にはジルコン以外の幹部の者達が控えており、通信の一部始終を聞いていたのだ。

「ユークレイス、どうだい?
 あの魔人の真意を読み取れたかな?」

「ええ。もちろんでございます。
 遠隔ではありましたが、問題ありません。
 500年前であれば、残念ながら私と同等の力ゆえ、読み取ることは困難でありましたが、昔とは違いますので。
 あちらは、500年前のままの復活ですからね。」

 こちらにはユークレイスがいることがわかっているはず。
 並の魔人では心のうちは読まれてしまうのだ。
 気にせず通信をしてきたと言うことは、この500年の差を忘れていると言うことか。
 やはり、その程度の魔人。
 だから、ハナの薬をみくびった報いを受けたのだろうが。

「ユークレイス、プランツから読み取った真意を幹部全員に送ってくれ。」

「はい。速やかに。」

 すでに、私がするべき事は決定済みで、後はみんなに伝えるのみであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編。 リーナ視点が主です。 ----- また続けるかもしれませんが、一旦完結です。 ※小説家になろう様にも掲載中。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...