薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

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第2章 森再生編

58話 分離

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 私とブラックは精霊に導かれた空間にいた。
 しかし、またすぐに移動しなければ、その黒い影達に見つかってしまうというので、のんびりはしていられなかった。

 私は植物達と黒い影をどう離す事ができるか考えたのだ。
 しかも、分離した後は再度侵食されないようにしなければいけないのだ。
 分離後はブラックに森自体に結界を張ってもらえれば良いと思った。
 しかし、領域としての結界を張ることになるので、その中に既に黒い負のエネルギーが入っていたら意味が無いのだ。
 とりあえず、少しでも侵食されないように時間を稼ぐことを考えた。
 そして、一つの薬を思いついたのだ。
 それは消炎作用や排膿作用があるものなのだ。
 悪い物を外に出す働きがあるなら、分離することも可能かもしれない。
 精霊に考えを話してみたのだ。

「ある薬を作ってみます。
 効果があるかわからないけど、侵食を少しでも防げればと。
 森全体にそれを行き渡らせる事は出来ますか?」

「出来ますが、この場所もあの黒い影に見つかってしまうと思います。
 ・・・でも、いつまでも逃げていても解決はしないですからね。
 舞、お願いします。」

 私は頷いた後、先程使った液体を使う事にした。
 その中に
 キキョウ、カンゾウ、キジツ、シャクヤク、ショウキョウ、タイソウが入っている漢方薬、風の鉱石の粉末、光の鉱石の粉末を入れたのだ。
 それを精霊に吸収してもらい、森全体に振り撒いてもらうのだ。
 もし効果があるなら、しばらくは寄生できないはず。
 その間に、ブラックにこの黒い影達を消滅してもらうしかないと思ったのだ。

「では、私の本体の根元に振りまいて下さい。
 今、そこまでのトンネルを作ります。すぐに塞がれてしまうかもしれないので、ブラック、お願いしますね。」

「わかりました。瞬時に移動しますから大丈夫です。」

 そう言って、私の腕と肩を掴み、トンネルができると同時にあっという間に移動したのだ。

 そこには、葉が落ちて枯れているように見えるが、以前と同じように存在感のある大木が立っていた。
 私は急いで、調合した薬を木の根元に振り撒いたのだ。
 すると、液体であった薬が霧状になって舞い上がり、キラキラ光る粉雪のように、大木全体を包んだのだ。
 その後その霧状のものは木の中に静かに吸収されていったのである。
 そして精霊にお願いした通り、森全体に薬が行き渡ったのか、徐々に侵食に対抗しはじめたのだ。

 周りの木がザワザワと動き出し、下を向いていた花が上を向き始め、蕾も膨らみ始めたのだ。
 精霊の本体である大木にも新芽がでてきて、少しではあるが、エネルギーを取り戻したように見えたのだ。
 しかし、侵食されていたわけで、以前と同じようになるにはまだまだ時間がかかるようであった。

 そして、追い出されたような形になった黒い影達が周囲にたくさん浮遊しはじめたのだ。
 その後、ただ浮遊していただけの物が、集まって集合体となり、巨大な物を形成したのだ。
 それは多分ここを棲家にしていた魔獣の姿なのだろう。
 その集合体は、大きなドラゴンのような形に変わり唸り声を上げて、威嚇したのだ。
 なるほど、森の記憶にあるものには何でも変化出来るようだ。
 しかし、能力まで真似する事が出来るわけでは無い。
 つまり、ブラックにとってはなんの脅威ともならず、左手を上げて一瞬で消滅させたのだ。
 だが、黒い影はまだまだ多数存在しており、色々な魔獣の形になっては襲いかかってきたのだ。
 巨大な大蛇となってブラックに巻きつこうとしてきたり、トラのような猛獣となり牙をむいてきたりと、その攻撃は続いていた。
 その攻撃は物理的な攻撃に見えたが、負のエネルギーを集中してぶつける事で、相手のエネルギーを吸い取ろうとしていたのだ。
 もちろん、ブラックには強力な結界があるため、侵食される事は無いのだが、数が多すぎるのである。
 
「・・・キリがないですね。」

 少しずつは減ってはいるが、ここにはかなりの黒い影の塊が存在するのだ。
 ブラックがイライラしているのがわかったのだ。
 このままでは、森ごと消滅しかねない雰囲気であった。

 森を残しながらこの黒い影を消し去る事は難しいのだろうか。
 それならば、どうだろう。
 この影達に知恵があるというなら、話が出来るのでは無いだろうか。
 寄生や侵食などではなく、共生が出来ないか考えたのだ。
 わたしはブラックが影達の対応している間に、大木に向かって精霊を呼んだのだ。

「聞こえてるなら、出てきて。
 大事な話があるの。」
 
 私に触れていれば、ブラックの結界で守られるはずなので、出てくるように話したのだ。
 そして、私に応えて、恐る恐る小さな子供のような精霊が顔をだしたのである。
 すぐに手をとり、私が思う共存計画を話したのだ。
 
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