薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

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第3章 翼国編

92話 王の言葉

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 ユークレイスとトルマが部屋を出た後、ブロムは父である王に呼びかけたのだ。

「父上、目を覚ましてください。」

 ブロムが揺さぶると意識を戻したのだ。

「私はいったい・・・なんだか頭がモヤモヤした気分だ。
 ブロム何かあったのか?
 よく思い出せないのだが。」

 どうもユークレイスの魔法により、先程三人で伺った記憶は無くなっているようだった。
 
 王が落ち着くと、ブロムは再度戦争を止めるように懇願したのだ。
 初めはアルゴンに全てを任せていると同じ言葉を発していたが、ブロムは国の現状について話をしたのだ。
 戦争によって得られること、またそれによる犠牲についてどちらが大きいかを声を大にして伝えたのだ。
 すると、以前と違い王はブロムの話を真剣に聞いてくれていたのだ。
 今までは何を言っても門前払いで、考えてさえくれなかったのだ。
 そしてブロムは続けたのだ。

「せめて、もう一度考える時間を作って欲しいのです。
 アルゴンの考えだけでなく、私や他の大臣の考えなど多くの意見に耳を傾けて欲しいのです。
 それによって、やはり戦うことがこの国の進む道であれば仕方がありません。
 失礼を承知で申し上げます。
 今までの父上は、アルゴンの声しか聞こえてなかったのではないでしょうか?
 父上の本当の考えはいかがなものでしょうか?
 今ならまだ取り返しがつきます。
 再度、ご検討下さい。」

 ブロムが一気に伝えると、王は黙って目を閉じたのだ。 
 それは、今までの自分を振り返っているかのようだった。

「・・・正直、今のワシには決断を下すことが出来ない。
 だが、私の息子がこれだけ言っているのであれば検討するべきだと、王としてではなく父としての自分の心が言っておる。
 ・・・一時、攻撃を中止とし大臣達を集めて欲しい。
 頼んでも良いか、ブロム。」

「はい、承知いたしました。
 まずは前線に向かい、アルゴンを止めに向かいましょう。」

 ブロムは久しぶりに本当の父に会った気がしたのだ。
 自分が成人して国の仕事をするようになってからは、衝突することも多く、自分の考えを認めてくれることがほとんど無かったのだ。
 それも、魔法のせいであったのかと。
 本来の父は違っていたのだと、嬉しく思ったのだ。 
 だが、今は考えなければいけない事が山ほどあり、手放しで喜べない状況であるのだ。
 ブロムは王と共に前線部隊のいる国境に向かったのだ。


             ○

             ○

             ○

 
 ブラックは思念で、ユークレイスとトルマに白翼人の兵士が国境沿いにかなりの人数が集まっていることを伝えたのだ。
 ユークレイス達はすぐにアルとクロルにその情報を伝えたのだ。
 
「何としたことだろう。
 こちらの情報が漏れていたと言うことなのですね。
 早く兄上が父と一緒に来てくれればいいのですが。
 ・・・アルゴンに向こうに情報が漏れていると伝えてみます。
 攻撃を遅らせるにはいい情報ではありますね。
 ただ、向こうから攻撃を受ける可能性もあると言うことですね。」

 クロルが心配そうに言うとアルも続けた。

「確かに、こちらを迎え撃つだけとは限らないぞ。
 それだけ白翼人の兵士達が集まっているのであれば、いつでも攻撃が出来る体制でもあると言うことか・・・
 しかし、この情報をアルゴンが信用するかどうかだ。」

 アルゴンに、魔人からの情報と言うことは出来ない。
 クロル達は自分達が話しても信用するとは思えなかったのだ。
 しかし、今は伝えてみるしか無かった。

「アルゴン、攻撃の準備は整っているのですか?」

 クロルはアルゴンの所に出向き、慎重に話し出したのだ。

「おお、クロル様、もういつでも出撃可能ですぞ。
 後は、結界の確認をするくらいですな。」

「アルゴン、どうも白翼人に動きがあるようなのだ。
 私の部下に近くまで偵察に行かせたのだが、かなりの兵士が向こうの国境沿いに集まっているのが見えたとの報告が。
 もしこちらの攻撃がわかっていたとしたら、まずい事になりかねない。
 王に連絡をとり、意見を聞くべきではないか?」

「まさか、ご冗談を。
 こちらの動きが漏れていると?
 我々の優秀な兵士達にスパイがいるとでも言うのですか?」

 アルゴンは驚きというよりも不満そうに話したのだ。
 そして予想通りクロル達の話を信用しなかったのだ。
 アルゴンはクロル達の話に一切耳を貸さずに準備を続けたのだ。
 兵士達は王子達よりアルゴンの指示に従っているのが現状なので、二人はもうどうすることもできなかった。
 
 そしてアルゴンの指示のもと、準備していた前線部隊が白翼人の国に向けて飛び立ったのだ。
 それは下から見ると、黒い大きな鳥が空を埋め尽くすように感じられ、とても不気味であったのだ。
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