薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

文字の大きさ
96 / 181
第3章 翼国編

96話 精霊の助け

しおりを挟む
 アクアを森の主として出現させる前に、私はもらった種に呼びかけ、精霊を呼び出したのだ。

「舞、何かあったのですか?」

 優しい輝きを放つ小さな精霊が、手のひらの種から現れたのだ。
 精霊はキョロキョロして周りを見ると、ブラックが一緒にいる事に気付き、安心して話を続けた。

「また、あまり良い雰囲気でない森にいますね。
 ブラック達がいるので心配はないでしょうが。
 舞、気を付けてくださいね。」

 精霊にはいつも心配ばかりさせているようだ。

「ええ、もちろん。
 実は、お願いがあるの。
 今から黒翼人の兵士たちがこの暗い森に落ちてくるかもしれないの。
 何とか、下まで落ちないようにする事は出来るかしら?
 下まで落ちてしまうと、怪しい生き物がウヨウヨいるのよ。」

 私は戦争を避けるために、ここで兵士たちを止めるつもりである事を話したのだ。
 精霊は下を覗いて少し考えた後、優しく頷いたのだ。

「わかりました。
 ここには沢山の植物があるので大丈夫でしょう。」

 そう言うと種から太い蔓や枝を出現させ、周りの木々と一体化させたのだ。
 それは網目状に生えていき、ネットのようになっており、上から落ちてくる者を受け止めてくれる強度もあるようだ。
 精霊にこの崖一帯をお願いしてみると、それは流石に無理と言うので、一緒に来てもらうことにしたのだ。

 今の精霊は、私の手のひらに乗るくらいの大きさなので、私のポケットに入ってもらうことにした。
 もちろん、これ以上兵士達がこちらに向かって来なければ問題ないのだが、念のためにお願いしたのだ。

 だか残念な事に、兵士達はアルゴンの指示を受け、次々に剣を持って向かって来たのだ。
 国境近くで精霊にお願いして、また木のネットを作ってもらい、兵士達は暗い森の中に落ちる事なく済んだのだ。

 向かってくる兵士達を傷つけないようアクアにお願いし、なるべく下に落とすようにしてもらった。
 しかし、アクアの翼による竜巻に巻き込まれた者は、めまいやふらつきで立ち上がれない者もいたのだ。
 私はある漢方に風の鉱石を入れた薬を、落ちてきた兵士全員に振り撒くようにスピネルにお願いしたのだ。
 それはめまいや耳鳴りなどでよく使う漢方なのだ。
 ただ、改善した後にまた攻撃されても困るので、兵士達が落ちた後また木のネットを作ってもらい、閉じ込めてもらってから薬をお願いしたのだ。
 
 アルゴンのもくろみは、部隊の全滅と言うシナリオだったので、私は絶対に兵士達を死なせる事は避けたかった。
 そして、アルゴンの魔法をユークレイスが解いた後は、精霊にお願いして、木のネットの蓋を無くしてもらい、兵士達が飛び立てる様にしてもらったのだ。
  
 私はアルゴンが何故こんな事をしたかを聞いた時、地下の綺麗な女性の絵が頭に浮かんだのだ。
 それ以外にも魔人の国の素晴らしい風景画など、アルゴンが描いた物である事は明らかだった。
 そんな素敵な絵を描く事が出来るアルゴンを、変貌させてしまった出来事があったのをとても不幸に思ったのだ。
 状況は違うが、プランツ達の事を思い出した。
 何百年も憎しみで生きていたアルゴンをどうにか救ってあげたいと思ったのだ。
 本当の意味で救えるのは、あの綺麗な絵の女性しかいないのだろうが。
 彼女の望みは、きっとアルゴンと生きていた時の幸せな世界。
 アルゴンにはそれに気付いてほしいと思ったのだ。
 
 私はユークレイスにある事をお願いしたのだ。
 彼を力で捉える事は、簡単な事だろう。
 だが、それでは彼は救われないままなのだ。
 
 そう思った時アルゴンが叫んだのだ。

「部隊の全滅が叶わないのであれば、私に出来る事はもう一つしかないのだ。」

 そう言って、不思議な剣を持って自分に向けたのだ。
 彼の全魔力を持って剣の炎を最大とし、この辺り一帯を巻き込み炎で焼け死ぬつもりだったのだ。
 もちろん、王や王子達も道連れに。

 それを見たスピネルは炎が周りに広がる前に、即座にアルゴンを丸いドームで包んだのだ。
 そうする事で周りにいた王や兵士達には被害が出る事は無かった。
 だが、ドームの中に閉じ込められたアルゴンは炎の渦にのまれたのだ。
 すぐにスピネルがドームの火を消したが、魔人と言えども、アルゴンはかなりの重症になったのだ。

 私は急いでアルゴンに駆け寄り、完全回復の薬の球を割り振りかけたのだ。
 すると金色の優しい光にアルゴンは包まれ、みるみる身体の中に吸収されたのだ。
 そして、ユークレイスに先程お願いしたことを試みてもらったのだ。
 それは魔人の国のあの綺麗な湖のイメージをアルゴンに送ってもらい、昔を思い出してもらいたかったのだ。
 
 私はアルゴンの身体だけでなく、心もこの薬で癒される事を願ったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編。 リーナ視点が主です。 ----- また続けるかもしれませんが、一旦完結です。 ※小説家になろう様にも掲載中。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...