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一刀両断
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「お、遂にその刀を抜くんだね」
エレンは待ってましたと言わんばかりに楽しそうである。
しかし攻撃の手は緩めず、僕に向って水球や火球、雷撃を繰り広げる。
「その刀を抜いた時のアスカ君の実力を見てみたいけど、そう簡単には抜かさないよ」
エレンはさらに攻撃を激化させ、僕に『一徹』を使わせる隙を作らせないようにする。
僕は一度『一徹』から手を離しかわすことに集中する。
すると、突然エレンからの連続攻撃が止む。
エレンは新たな魔導を詠唱し始めていた。
「そろそろ終わりにしようか。観客サービスもできただろうし。我が豪胆さを持って全てを薙ぎ払う『光球《スプリーム》』」
エレンの詠唱により、直径5メートルほどの光球が限界する。
光球は、上級魔導の中でも最上位魔導の一つ。
つまりほとんど、帝級に近い魔導。
触れるものを瞬く間に熱分解する魔導。
明らかに、致死性魔導の一つである。
光球の表面はビリビリと音を立てながら揺らいでいる。
あれはやばい、あれに触れたら僕の体は分解されてしまう。
レフェリーは、どうしたんだ?
僕はレフェリーの方を見る。
しかし、レフェリーは何も止める気配はない。
そして、米帝魔導学校の先生や生徒たちも、ただ傍観しているだけである。
一方、魔専の生徒達や先生達がざわめき出す。
ヒビト、ナオミ、マミ、そしてロージェ先生も明らかに動揺している。
そのような状況の中、エレンは光球を放つ。
僕に向けて……。
エレンから僕までの距離は約25メートル。
エレンから放たれた光球はさらに膨れ上がり地面をえぐりながら迫り来る。
避けようにも身のこなしだけでは、避けきれない。
やばい、これは死ぬ。
僕の頭の中は、必死に逃げる算段を立てようとするが、どうしても逃げ切れる図が頭に浮かばない。
『一徹』を抜いたところで防ぎ切れるのか俺に、あの光球を‥‥‥。
僕は混乱して頭が真っ白になる。
「アスカ、一徹を抜け! お前ならできる」
そんな僕に向けロージェ先生が叫ぶ。
一徹を抜けと。僕ならできると。
その言葉で僕は我に帰る。
これまで僕は何のために稽古をしてきたんだ。
強くなるためだろう。そして、僕は昔より強くなった。
信じるんだ自分自身を。僕に足りないのは自信だ。
再び、『一徹』に手をかける。
もはや光球から逃れることはできない。
ならば、正面から立ち向かうしかない。
僕は、『一徹』に手をかけたまま腰を落とす。
そして、目を瞑り、詠唱する。
「我が真髄は刀身と共にあり『撃徹一進』」
刀身が赤白く光り輝き、鞘から光が漏れ出る。
刀身を少し抜くと、眩《まばゆ》い光が僕を包み込む。
そして僕は、『一徹』を抜き、光球に向け居合斬りをする。
——デュクン
着弾とともに破裂し、辺り一面に土煙を撒き散らす。
「「どうなったんだ」」とロージェ先生をはじめ、ヒビトやナオミ、マミが僕の存在を確認しようと、観客席から目をこらす。
次第に、土煙が晴れるゆく。
競技場の真ん中には未だ、僕は健在していた。
僕の姿を確認すると、観客席から安堵の声が聞こえてくる。
僕は、『一徹』を抜刀し、光球に向け居合斬りをすることで一刀両断し、光球を真っ二つに割ることに成功した。
そして、光球は僕の後方に着弾したのだった。
できた。やってのけたんだ。
僕は、光球を真っ二つにして、攻撃を凌いだことに内心感激する。
すると、僕の様子を見ていたエレンが口を開く。
「すごいじゃないか、アスカ。僕の上級魔導『光球』を防ぎきるなんて。まあ、始めからアスカなら大丈夫だろうと思って、光球をぶつけたんだけどね」
「エレンさん、僕を殺す気ですか?。光球なんて致死性魔導で、今回のルール上、禁止行為ですから」
「ごめんごめん。だけど、根回しが大変だったんだよ。光球魔導を使用するけど、目を瞑ってねってレフェリーや魔導学校の先生達を説得するのに。だけど、アスカの実力を推し量りたかったから、根回し頑張ったんだ」
「僕は、今、一瞬、死を覚悟しましたよ」
「だけど、君はちゃんと防いだじゃないか。僕の光球を。やっぱり、すごいな刀抜いたアスカは。強さが格段に上がる。それじゃあ、今から本番といこうじゃないか。全力でかかってくるといい」
エレンは、再び、光球を僕に向け放つ。
「だからそれは致死性魔導でしょ」
と叫びながら僕はエレンに近づく。
『一徹』によって増幅された魔導により身体能力も自然と向上する。
僕は、光球をスライディングで避け、エレンとの間合いを詰める。
そして、『一徹』の射程にエレンを収めると、峰《みね》をエレンにぶつけようとする。
しかし、エレンもまたそれは予測しており、「我が命に従いてこの身を守りたもう、堅牢防壁《ソリッジシールド》」と叫ぶと、盾を現界させる。
僕の峰打ち攻撃は簡単に弾き飛ばされてしまう。
「アスカ甘いな。僕は上級攻撃魔導士だが、防御魔導だって使っていっただろ」
エレンは、嬉しそうである。
実際エレンは、アスカとの模擬戦を楽しんでいた。
僕は、エレンの盾に弾き飛ばされはしたが、着地し体制を整えると、すぐに攻撃に移る。
今度は、刃先をエレンに向けて斬りかかる。
エレンは、すぐに盾を目の前に持ってきて、防ごうとするが、僕はそれを見越していた。
強く魔導を流し、刀を振る速度を上昇させ、刃先もさらに硬化させ、エレンの盾に当てる。
すると、エレンの現界させた盾は一部が崩れ、盾と刀がぶつかった衝撃によりエレンは後方に弾き飛ばされる。
その光景に、演習場にいる観客達は息を飲む。
一進一退の攻防。もはやエレンが勝つのかアスカが勝つのかわからない。
お互いのプライドがぶつかり合い、凄まじい気合が演習場を包み込む。
「ははは、楽しいよアスカ。こんなに楽しい模擬戦は初めてだ。これが実戦でないことが実に悲しい。死と隣り合わせの実戦で、直に命のやりとりができればどれほど良かったか」
エレンは、高揚して自らの思いを叫ぶ。
それと同時に、新たな魔導を発動する「灼熱は万物を融解せし『灼熱弾《コーサルジア》』」
灼熱の太陽を思い起こさせる灼熱弾が僕とヒビトの頭上に現界する。
この灼熱弾をエレンは落とそうとしている。
言うまでもなく、この灼熱弾も上級魔導のうち最上級魔導で致死性魔導である。
僕は今、エレンの目の前にいる。だから、エレンが灼熱弾を僕に落とせば、エレンも自身の攻撃の巻き添えを食らってしまう。
しかし、エレンはそんなこと御構い無しのようで、終始笑顔である。
多分、僕がどうやってこの攻撃を凌ぐのか、それを見るのが楽しみで仕方ないようである。
だが、灼熱弾は上から落ちてくるため、『撃徹一進』で居合斬りしたとて、僕やエレンは灼熱弾の熱風に巻き込まれてしまう。
だから、『撃徹一進』は使えない。
では、どうする。
『火炎斬り』で斬り伏せるか。
しかし、火炎斬りでは、灼熱弾を全てかき消すことはできない。
ならば、ロージェ先生から受け継いだ、魔導具士の秘技『カラドボルグ』を一か八か使ってみるか。
初代以外使ったことのない秘技、発動できるかも分からない。
しかし、今思いつく最善策は、奇跡を起こすことくらいしかない。
ならば、僕は、その奇跡にすがる。
僕は決意し、発動できるかどうかわからない魔導の詠唱を始める。
「世界の摂理を我が手に収め、世界の摂理を書き換える。それは、悲しき人のため。哀しき人の望みのため。汝が何を望もうとも、我は悪を挫き、正義を‥‥‥」
僕が詠唱を開始し始めると、エレンは灼熱弾を落下し始める。
一方、僕は詠唱しだしても、全く、魔導が発動するような手応えを感じていない。このままではやばいと悟る。
——パキパキパキ
そんな危機的状況に陥った時、突然、灼熱弾が急に凍りつき弾け飛んだ。
「試合はそこまでである。エレン。そんな危ない魔導を使ってはいけないと何度も言っているだろう」
観客席の教員席に1人の男が立っている。
おそらく、その男が現界させた魔導によってエレンが現界させた灼熱弾が凍らされたのであろう。
「これは、ニール様。失礼しました」
エレンは、叫んでいる男の方を見るとお辞儀をする。
てか、ちょっと待てよ。ニールだって?
ニールって僕の家族を殺したあいつではないか。
僕は、教員席の方を見る。すると、確かに、そこには、僕の家族を殺し、あすなろ荘を襲った男が立っている。
ニールはエレンを叱責した後、教員席から去っていった。
「アスカ、無理な攻撃を色々仕掛けてごめんね。君の実力を知りたくて、ついつい楽しくなって灼熱弾まで出しちゃったけど、ニール様に止められてしまった。ニール様までは流石に買収できないからね」
あのまま、エレンが灼熱弾を僕らの上に落としていたら確実に大怪我を負っていた。
癪だが、僕の宿敵のニールに助けられてしまった。
顔なんて二度と見たくないし、すぐにでも殺したい相手なのに、助けられてしまった。
とても悔しい。
そんな悔恨を抱きながら僕はエレンとお互いに握手を交わし、模擬戦を終えた。
演習場から出ると、僕はヒビト達のところに向かおうとするが、急に声をかけられる。
そこには昨日会った、ニールの付き人の女が立っていた。
「アスカ・ニベリウム。ニール様がお待ちです。私についてきてください」
そう告げると、女は強引に僕の手を引き案内し始める。
僕は、戦闘の疲れを癒す時間もないまま、なされるがままにニールと対峙することになった。
エレンは待ってましたと言わんばかりに楽しそうである。
しかし攻撃の手は緩めず、僕に向って水球や火球、雷撃を繰り広げる。
「その刀を抜いた時のアスカ君の実力を見てみたいけど、そう簡単には抜かさないよ」
エレンはさらに攻撃を激化させ、僕に『一徹』を使わせる隙を作らせないようにする。
僕は一度『一徹』から手を離しかわすことに集中する。
すると、突然エレンからの連続攻撃が止む。
エレンは新たな魔導を詠唱し始めていた。
「そろそろ終わりにしようか。観客サービスもできただろうし。我が豪胆さを持って全てを薙ぎ払う『光球《スプリーム》』」
エレンの詠唱により、直径5メートルほどの光球が限界する。
光球は、上級魔導の中でも最上位魔導の一つ。
つまりほとんど、帝級に近い魔導。
触れるものを瞬く間に熱分解する魔導。
明らかに、致死性魔導の一つである。
光球の表面はビリビリと音を立てながら揺らいでいる。
あれはやばい、あれに触れたら僕の体は分解されてしまう。
レフェリーは、どうしたんだ?
僕はレフェリーの方を見る。
しかし、レフェリーは何も止める気配はない。
そして、米帝魔導学校の先生や生徒たちも、ただ傍観しているだけである。
一方、魔専の生徒達や先生達がざわめき出す。
ヒビト、ナオミ、マミ、そしてロージェ先生も明らかに動揺している。
そのような状況の中、エレンは光球を放つ。
僕に向けて……。
エレンから僕までの距離は約25メートル。
エレンから放たれた光球はさらに膨れ上がり地面をえぐりながら迫り来る。
避けようにも身のこなしだけでは、避けきれない。
やばい、これは死ぬ。
僕の頭の中は、必死に逃げる算段を立てようとするが、どうしても逃げ切れる図が頭に浮かばない。
『一徹』を抜いたところで防ぎ切れるのか俺に、あの光球を‥‥‥。
僕は混乱して頭が真っ白になる。
「アスカ、一徹を抜け! お前ならできる」
そんな僕に向けロージェ先生が叫ぶ。
一徹を抜けと。僕ならできると。
その言葉で僕は我に帰る。
これまで僕は何のために稽古をしてきたんだ。
強くなるためだろう。そして、僕は昔より強くなった。
信じるんだ自分自身を。僕に足りないのは自信だ。
再び、『一徹』に手をかける。
もはや光球から逃れることはできない。
ならば、正面から立ち向かうしかない。
僕は、『一徹』に手をかけたまま腰を落とす。
そして、目を瞑り、詠唱する。
「我が真髄は刀身と共にあり『撃徹一進』」
刀身が赤白く光り輝き、鞘から光が漏れ出る。
刀身を少し抜くと、眩《まばゆ》い光が僕を包み込む。
そして僕は、『一徹』を抜き、光球に向け居合斬りをする。
——デュクン
着弾とともに破裂し、辺り一面に土煙を撒き散らす。
「「どうなったんだ」」とロージェ先生をはじめ、ヒビトやナオミ、マミが僕の存在を確認しようと、観客席から目をこらす。
次第に、土煙が晴れるゆく。
競技場の真ん中には未だ、僕は健在していた。
僕の姿を確認すると、観客席から安堵の声が聞こえてくる。
僕は、『一徹』を抜刀し、光球に向け居合斬りをすることで一刀両断し、光球を真っ二つに割ることに成功した。
そして、光球は僕の後方に着弾したのだった。
できた。やってのけたんだ。
僕は、光球を真っ二つにして、攻撃を凌いだことに内心感激する。
すると、僕の様子を見ていたエレンが口を開く。
「すごいじゃないか、アスカ。僕の上級魔導『光球』を防ぎきるなんて。まあ、始めからアスカなら大丈夫だろうと思って、光球をぶつけたんだけどね」
「エレンさん、僕を殺す気ですか?。光球なんて致死性魔導で、今回のルール上、禁止行為ですから」
「ごめんごめん。だけど、根回しが大変だったんだよ。光球魔導を使用するけど、目を瞑ってねってレフェリーや魔導学校の先生達を説得するのに。だけど、アスカの実力を推し量りたかったから、根回し頑張ったんだ」
「僕は、今、一瞬、死を覚悟しましたよ」
「だけど、君はちゃんと防いだじゃないか。僕の光球を。やっぱり、すごいな刀抜いたアスカは。強さが格段に上がる。それじゃあ、今から本番といこうじゃないか。全力でかかってくるといい」
エレンは、再び、光球を僕に向け放つ。
「だからそれは致死性魔導でしょ」
と叫びながら僕はエレンに近づく。
『一徹』によって増幅された魔導により身体能力も自然と向上する。
僕は、光球をスライディングで避け、エレンとの間合いを詰める。
そして、『一徹』の射程にエレンを収めると、峰《みね》をエレンにぶつけようとする。
しかし、エレンもまたそれは予測しており、「我が命に従いてこの身を守りたもう、堅牢防壁《ソリッジシールド》」と叫ぶと、盾を現界させる。
僕の峰打ち攻撃は簡単に弾き飛ばされてしまう。
「アスカ甘いな。僕は上級攻撃魔導士だが、防御魔導だって使っていっただろ」
エレンは、嬉しそうである。
実際エレンは、アスカとの模擬戦を楽しんでいた。
僕は、エレンの盾に弾き飛ばされはしたが、着地し体制を整えると、すぐに攻撃に移る。
今度は、刃先をエレンに向けて斬りかかる。
エレンは、すぐに盾を目の前に持ってきて、防ごうとするが、僕はそれを見越していた。
強く魔導を流し、刀を振る速度を上昇させ、刃先もさらに硬化させ、エレンの盾に当てる。
すると、エレンの現界させた盾は一部が崩れ、盾と刀がぶつかった衝撃によりエレンは後方に弾き飛ばされる。
その光景に、演習場にいる観客達は息を飲む。
一進一退の攻防。もはやエレンが勝つのかアスカが勝つのかわからない。
お互いのプライドがぶつかり合い、凄まじい気合が演習場を包み込む。
「ははは、楽しいよアスカ。こんなに楽しい模擬戦は初めてだ。これが実戦でないことが実に悲しい。死と隣り合わせの実戦で、直に命のやりとりができればどれほど良かったか」
エレンは、高揚して自らの思いを叫ぶ。
それと同時に、新たな魔導を発動する「灼熱は万物を融解せし『灼熱弾《コーサルジア》』」
灼熱の太陽を思い起こさせる灼熱弾が僕とヒビトの頭上に現界する。
この灼熱弾をエレンは落とそうとしている。
言うまでもなく、この灼熱弾も上級魔導のうち最上級魔導で致死性魔導である。
僕は今、エレンの目の前にいる。だから、エレンが灼熱弾を僕に落とせば、エレンも自身の攻撃の巻き添えを食らってしまう。
しかし、エレンはそんなこと御構い無しのようで、終始笑顔である。
多分、僕がどうやってこの攻撃を凌ぐのか、それを見るのが楽しみで仕方ないようである。
だが、灼熱弾は上から落ちてくるため、『撃徹一進』で居合斬りしたとて、僕やエレンは灼熱弾の熱風に巻き込まれてしまう。
だから、『撃徹一進』は使えない。
では、どうする。
『火炎斬り』で斬り伏せるか。
しかし、火炎斬りでは、灼熱弾を全てかき消すことはできない。
ならば、ロージェ先生から受け継いだ、魔導具士の秘技『カラドボルグ』を一か八か使ってみるか。
初代以外使ったことのない秘技、発動できるかも分からない。
しかし、今思いつく最善策は、奇跡を起こすことくらいしかない。
ならば、僕は、その奇跡にすがる。
僕は決意し、発動できるかどうかわからない魔導の詠唱を始める。
「世界の摂理を我が手に収め、世界の摂理を書き換える。それは、悲しき人のため。哀しき人の望みのため。汝が何を望もうとも、我は悪を挫き、正義を‥‥‥」
僕が詠唱を開始し始めると、エレンは灼熱弾を落下し始める。
一方、僕は詠唱しだしても、全く、魔導が発動するような手応えを感じていない。このままではやばいと悟る。
——パキパキパキ
そんな危機的状況に陥った時、突然、灼熱弾が急に凍りつき弾け飛んだ。
「試合はそこまでである。エレン。そんな危ない魔導を使ってはいけないと何度も言っているだろう」
観客席の教員席に1人の男が立っている。
おそらく、その男が現界させた魔導によってエレンが現界させた灼熱弾が凍らされたのであろう。
「これは、ニール様。失礼しました」
エレンは、叫んでいる男の方を見るとお辞儀をする。
てか、ちょっと待てよ。ニールだって?
ニールって僕の家族を殺したあいつではないか。
僕は、教員席の方を見る。すると、確かに、そこには、僕の家族を殺し、あすなろ荘を襲った男が立っている。
ニールはエレンを叱責した後、教員席から去っていった。
「アスカ、無理な攻撃を色々仕掛けてごめんね。君の実力を知りたくて、ついつい楽しくなって灼熱弾まで出しちゃったけど、ニール様に止められてしまった。ニール様までは流石に買収できないからね」
あのまま、エレンが灼熱弾を僕らの上に落としていたら確実に大怪我を負っていた。
癪だが、僕の宿敵のニールに助けられてしまった。
顔なんて二度と見たくないし、すぐにでも殺したい相手なのに、助けられてしまった。
とても悔しい。
そんな悔恨を抱きながら僕はエレンとお互いに握手を交わし、模擬戦を終えた。
演習場から出ると、僕はヒビト達のところに向かおうとするが、急に声をかけられる。
そこには昨日会った、ニールの付き人の女が立っていた。
「アスカ・ニベリウム。ニール様がお待ちです。私についてきてください」
そう告げると、女は強引に僕の手を引き案内し始める。
僕は、戦闘の疲れを癒す時間もないまま、なされるがままにニールと対峙することになった。
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