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ソイニーの過去〜禁断〜
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「ねえソイニー、今日はとびきり美味しいものを食べに行こうよ。レストランはもう予約してあるんだ」
それは、ソイニー来日5回目のことだった。
この時ソイニーは、天界にシーモと密会していることを怪しまれないように、日本王国への理解向上という名目で、数回日本に下界旅行に来ていた。
そして、5回目の下界旅行中にシーモは、突然ソイニー師匠に、レストランに行こうと告げる。
——下界の美味しいものとは
シーモが改まって言うものだから、ソイニー師匠の中で期待値が高まり、二つ返事で了承する。
その後、ソイニー師匠はシーモに行き先も告げられずに連れ出される。
何となく東京の方に向かっていることは分かった。
段々とオフィス街が広がり、王宮が見えてくる。
すると突然車は建物のロータリー内に入り停止する。
「さあ、着いたよ」
シーモがそう言うと、突然車のドアが開かれる。
ドアを開けたのは、ホテルボーイだった。
「え? ここは?」
ソイニー師匠は困惑気味に訊く。
「ようこそ、帝国ホテルへ」
すると、ホテルボーイは、優雅に微笑む。
「て、帝国ホテル?」
「そうだよ、今日はこの王国有数のホテルのレストランを予約したんだ」
ソイニー師匠達はホテルのレストランに移動する。
席に座るとソイニー師匠は、モジモジし始める。
「シーモ、ちょっとここ、格式高くて居づらいよ。もっと、庶民的なところでいいのに」
「まあ、いいじゃない。私はソイニーと一緒に来たかったわけだし。ソイニーの喜ぶ顔や、美味しそうに食べる顔を見たいんだ」
「それはそれで、恥ずかしいよ」
この日はコース料理を頼んでいた。
ソイニー師匠が気恥ずかしそうにしてモジモジしているところに前菜が運ばれてくる。
「じゃあ食べようか」
「う、うん」
ソイニー師匠はこんな高そうな料理を食べてことが今までなかった。
どんな味がするのだろうと恐る恐る料理に手を伸ばす。
——パク
「ん! このソース美味しい!」
前菜がを口に含んだソイニー師匠は歓喜する。
「あはは、ソイニーは面白いな、ソースがお気に召したんだね」
「黄色いソースなんて見たことなかったから何だろうと不安だったけど、ほんのり甘くて美味しい! てっきりカレー味かと思ったわ」
ソイニー師匠の独特の感性にシーモは笑う。
ソイニー師匠は、未知との遭遇に喜び、パクパクと前菜を一瞬で食べてしまう。
「早く次の料理来ないかしらね」
そこには、先程まで場に圧倒されていたソイニー師匠の姿はもういない。
完全に料理を楽しむことができている。
そんな様子をシーモは嬉しそうに眺める。
その後低温熟成の牛ステーキやデザートを食べて、ゆったりした時間を過ごす。
さて、食事も終わって外に出ようかと、ソイニー師匠は支度を始める。
「あれ、シーモは支度しないの?」
「あ、うん、ちょ、ちょっと待って、ソイニー」
今度はシーモがもじもじし始めてしまった。
「具合でも悪いの?」
ソイニー師匠は心配し始める。
「いや、具合は悪くなくて」
「じゃあ、私何か変な粗相をしちゃった?」
「いや、ソイニーは何も悪くはないんだ」
「じゃあ、一体どうしたの? 今私は気分がいいから変なことでも怒らないわ」
ソイニー師匠は両手を広げながら、神のような暖かさをシーモに向ける。
「え!? ほんと!?」
「びっくりした、そんなに食いついてくるとは思わなかったわ。そうね、まあ、私ができうる範囲内だけどね、いいわよ」
「それじゃあ、ソイニー、あの」
「‥‥‥うん、どうしたの?」
シーモは、口を開いては閉じ、開いては閉じ、緊張した面持ちでソイニー師匠を見つめる。
その緊張感を感じ取ったソイニー師匠にも、緊張がうつり、ソイニーも緊張し始める。
「早く言ってよ。こっちまで、緊張してくるじゃない」
「うん、その、ソイニー、僕と付き合ってくれないか!」
「‥‥‥え!?」
ソイニー師匠は一瞬、シーモが言ったことが理解できず、聞き返す。
「だから、好きなんだ、私はソイニーに恋して‥‥‥るんだ」
シーモは尻すぼみな声量でソイニーに愛を告げる。
「そ、そんな、私たち、天界人と下界人よ。そんなの認められないのよ。天界と下界の交わりは、昔は良くても、今は重罪よ」
「それは、わかっている。だけど、私は君が好きなんだ。この社会のルールなんて糞食らえと思ってしまうほど、君が‥‥‥」
シーモは俯いてしまう。
ソイニー師匠の口調から、多分断られるのだろうと思ったからだ。
ソイニー師匠はというと、迷っていた。
ソイニー師匠は天界公安局所属。そのような身分の者が、下界人と恋に落ちたとなれば、今度は減給どころの話ではない。
最悪、極刑かもしれない。
しかし、ソイニー師匠は知っていた。
自らの心の中に、シーモへの愛情が芽生えていることを。
「‥‥‥」
2人の間を沈黙が埋め尽くす。
体感として5分ぐらい時間が流れただろうか、ついにソイニー師匠が口を開く。
「シーモ、あなたの覚悟はどれくらい?」
「え? 僕の? 僕の覚悟は、君のためなら死地に赴くことができるくらい‥‥‥」
「シーモ、誰かのために命を投げ出すような人は好きではないわ。最後まであがいて、そうなったならば仕方がないと思うけど。だけど、あなたの覚悟はわかったわ。じゃあ、私も覚悟を決めます。シーモ、私でよければ、よろしくお願いします」
「え!? ほんとに!?」
シーモは歓喜の声を上げる。
こんなに嬉しそうな顔を久しくソイニー師匠は見たことがない。
しかも、その顔を自分の好きな人がしている。
こんなに嬉しいことがあるだろうか。
こうして、2人は結ばれた。
その後は、下界旅行の時だけではなく、公安局の任務中にもソイニー師匠はシーモと密会した。
これは、ソイニー師匠が機転を利かせて、シーモをソイニー師匠お抱えの二重スパイとして洗脳に成功したと、天界に報告し、天界がシーモを二重スパイとして認めたから実現した。
しかし、実際にシーモに二重スパイをさせることをソイニー師匠はしなかった。
2人の秘密の交際始めてから数ヶ月後、
「うえ」
ソイニー師匠は突然職場のトイレで吐いてしまった。
それは、つわりだった。
ソイニー師匠はすぐさま、シーモのところに行き、シーモと一緒にシーモの仲間の病院に行く。
結果は、やはりソイニー師匠は妊娠していた。
2人はその一報を複雑な気持ちで聞く。
嬉しい反面、事態はより複雑になってしまったと。
ソイニー師匠は妊娠がバレる前に、すぐに公安局を退職することにする。
突然の退職に、当然周りは驚いた。
その驚きは、突然退職したいと言い出したことにもそうだし、ソイニー師匠の退職理由が「世界を見て回りたいから」というものだったからも生じた。
しかし、ソイニー師匠が頻繁に、下界旅行をしていたことから、旅行好きが極まったのだろうと、不思議とすんなり周りに受け入れられ、ソイニー師匠は退職することに成功する。
それからは、シーモの隠れアジトに住み続け、出産に備える。
そして、その時はやってきた。
午前3時、急な破水が生じ、シーモは急いでソイニーを仲間の病院に連れて行く。
産婦人科医師はシーモの友達で、革命派の仲間だ、故にソイニー師匠が天界人であることも知っている。
「天界人の出産は立ち会ったことがないから、万が一のことも考えておいてくれよ」
医師はシーモにそう告げる。
シーモはただ、祈ることしかできない。
予想通り、難産となった。
なかなか、生まれてこない。ソイニー師匠は呻きながら必死に痛みに耐える。
理由は、天界人から生まれる子どもはもともと魔導が強い。すると、自己防衛のため防壁を子宮内で展開してしまい、産道を出てこれないためだった。
この場合、帝王切開でも防壁により赤子を取り出せそうにない。
まさに絶体絶命である。
誰もが、母子の命がもう助からないかもしれない、そう思った時だった。
「あの、お手伝いしましょうか」
突然、見知らぬ女が手術室に入ってきた。
「君は誰だね。ここは部外者以外入ってはいけない」
「私は、天界人の出産方法を知っている帝級治癒魔導士です。私は、その子の防壁を解除することができます」
「あなたのような帝級魔導士を知りませんが‥‥‥」
医師が女の素性を疑う。
突然、現れた不審者。
だけどその女は、母子を救うことができるという。
シーモは、藁にもすがる思いでその女に助けをこう。
「ソイニーと子どもを助けることができるんですか?」
「私ならできます」
女が堂々と言い切る。
シーモは、医師に向かって、「女の助けを借りたい」と懇願する。
医師は、最初は嫌がったが、現状打破する方法がないため、しぶしぶ女の手を借りることにする。
「我が魂は、すべての霊魂を癒し沈める「鎮魂《カーム》」
女が詠唱すると、子宮内の防壁が解除される気配をシーモは感じる。
「防壁が、解除された」
シーモは呟く。
すかさず医師は、手術’を続ける。
そして、無事、ソイニー師匠はエレンを産み落とす。
もちろん母子ともに無事だった。
「あ、ありがとう」
シーモは泣きながら感謝する。
しかし、シーモが謎の女に伝えようとすると、すでに女の姿は手術室から消えていた。
あの女は一体誰だったのか。
「これはなんですか?」
看護師が床に落ちていた紙切れに気づく。
そしてその紙を開くと文字が書かれていた。
『苦難の道を歩む聖女よ。己の信念に従い進みなさい。私は陰ながら見守っております。ユキナ・ニベリウム』
「この名前は!」
看護師が絶句する。
この名前は世界的に有名な名であった。
その名は、行方不明の天界大統領の一人娘の名であった。
それは、ソイニー来日5回目のことだった。
この時ソイニーは、天界にシーモと密会していることを怪しまれないように、日本王国への理解向上という名目で、数回日本に下界旅行に来ていた。
そして、5回目の下界旅行中にシーモは、突然ソイニー師匠に、レストランに行こうと告げる。
——下界の美味しいものとは
シーモが改まって言うものだから、ソイニー師匠の中で期待値が高まり、二つ返事で了承する。
その後、ソイニー師匠はシーモに行き先も告げられずに連れ出される。
何となく東京の方に向かっていることは分かった。
段々とオフィス街が広がり、王宮が見えてくる。
すると突然車は建物のロータリー内に入り停止する。
「さあ、着いたよ」
シーモがそう言うと、突然車のドアが開かれる。
ドアを開けたのは、ホテルボーイだった。
「え? ここは?」
ソイニー師匠は困惑気味に訊く。
「ようこそ、帝国ホテルへ」
すると、ホテルボーイは、優雅に微笑む。
「て、帝国ホテル?」
「そうだよ、今日はこの王国有数のホテルのレストランを予約したんだ」
ソイニー師匠達はホテルのレストランに移動する。
席に座るとソイニー師匠は、モジモジし始める。
「シーモ、ちょっとここ、格式高くて居づらいよ。もっと、庶民的なところでいいのに」
「まあ、いいじゃない。私はソイニーと一緒に来たかったわけだし。ソイニーの喜ぶ顔や、美味しそうに食べる顔を見たいんだ」
「それはそれで、恥ずかしいよ」
この日はコース料理を頼んでいた。
ソイニー師匠が気恥ずかしそうにしてモジモジしているところに前菜が運ばれてくる。
「じゃあ食べようか」
「う、うん」
ソイニー師匠はこんな高そうな料理を食べてことが今までなかった。
どんな味がするのだろうと恐る恐る料理に手を伸ばす。
——パク
「ん! このソース美味しい!」
前菜がを口に含んだソイニー師匠は歓喜する。
「あはは、ソイニーは面白いな、ソースがお気に召したんだね」
「黄色いソースなんて見たことなかったから何だろうと不安だったけど、ほんのり甘くて美味しい! てっきりカレー味かと思ったわ」
ソイニー師匠の独特の感性にシーモは笑う。
ソイニー師匠は、未知との遭遇に喜び、パクパクと前菜を一瞬で食べてしまう。
「早く次の料理来ないかしらね」
そこには、先程まで場に圧倒されていたソイニー師匠の姿はもういない。
完全に料理を楽しむことができている。
そんな様子をシーモは嬉しそうに眺める。
その後低温熟成の牛ステーキやデザートを食べて、ゆったりした時間を過ごす。
さて、食事も終わって外に出ようかと、ソイニー師匠は支度を始める。
「あれ、シーモは支度しないの?」
「あ、うん、ちょ、ちょっと待って、ソイニー」
今度はシーモがもじもじし始めてしまった。
「具合でも悪いの?」
ソイニー師匠は心配し始める。
「いや、具合は悪くなくて」
「じゃあ、私何か変な粗相をしちゃった?」
「いや、ソイニーは何も悪くはないんだ」
「じゃあ、一体どうしたの? 今私は気分がいいから変なことでも怒らないわ」
ソイニー師匠は両手を広げながら、神のような暖かさをシーモに向ける。
「え!? ほんと!?」
「びっくりした、そんなに食いついてくるとは思わなかったわ。そうね、まあ、私ができうる範囲内だけどね、いいわよ」
「それじゃあ、ソイニー、あの」
「‥‥‥うん、どうしたの?」
シーモは、口を開いては閉じ、開いては閉じ、緊張した面持ちでソイニー師匠を見つめる。
その緊張感を感じ取ったソイニー師匠にも、緊張がうつり、ソイニーも緊張し始める。
「早く言ってよ。こっちまで、緊張してくるじゃない」
「うん、その、ソイニー、僕と付き合ってくれないか!」
「‥‥‥え!?」
ソイニー師匠は一瞬、シーモが言ったことが理解できず、聞き返す。
「だから、好きなんだ、私はソイニーに恋して‥‥‥るんだ」
シーモは尻すぼみな声量でソイニーに愛を告げる。
「そ、そんな、私たち、天界人と下界人よ。そんなの認められないのよ。天界と下界の交わりは、昔は良くても、今は重罪よ」
「それは、わかっている。だけど、私は君が好きなんだ。この社会のルールなんて糞食らえと思ってしまうほど、君が‥‥‥」
シーモは俯いてしまう。
ソイニー師匠の口調から、多分断られるのだろうと思ったからだ。
ソイニー師匠はというと、迷っていた。
ソイニー師匠は天界公安局所属。そのような身分の者が、下界人と恋に落ちたとなれば、今度は減給どころの話ではない。
最悪、極刑かもしれない。
しかし、ソイニー師匠は知っていた。
自らの心の中に、シーモへの愛情が芽生えていることを。
「‥‥‥」
2人の間を沈黙が埋め尽くす。
体感として5分ぐらい時間が流れただろうか、ついにソイニー師匠が口を開く。
「シーモ、あなたの覚悟はどれくらい?」
「え? 僕の? 僕の覚悟は、君のためなら死地に赴くことができるくらい‥‥‥」
「シーモ、誰かのために命を投げ出すような人は好きではないわ。最後まであがいて、そうなったならば仕方がないと思うけど。だけど、あなたの覚悟はわかったわ。じゃあ、私も覚悟を決めます。シーモ、私でよければ、よろしくお願いします」
「え!? ほんとに!?」
シーモは歓喜の声を上げる。
こんなに嬉しそうな顔を久しくソイニー師匠は見たことがない。
しかも、その顔を自分の好きな人がしている。
こんなに嬉しいことがあるだろうか。
こうして、2人は結ばれた。
その後は、下界旅行の時だけではなく、公安局の任務中にもソイニー師匠はシーモと密会した。
これは、ソイニー師匠が機転を利かせて、シーモをソイニー師匠お抱えの二重スパイとして洗脳に成功したと、天界に報告し、天界がシーモを二重スパイとして認めたから実現した。
しかし、実際にシーモに二重スパイをさせることをソイニー師匠はしなかった。
2人の秘密の交際始めてから数ヶ月後、
「うえ」
ソイニー師匠は突然職場のトイレで吐いてしまった。
それは、つわりだった。
ソイニー師匠はすぐさま、シーモのところに行き、シーモと一緒にシーモの仲間の病院に行く。
結果は、やはりソイニー師匠は妊娠していた。
2人はその一報を複雑な気持ちで聞く。
嬉しい反面、事態はより複雑になってしまったと。
ソイニー師匠は妊娠がバレる前に、すぐに公安局を退職することにする。
突然の退職に、当然周りは驚いた。
その驚きは、突然退職したいと言い出したことにもそうだし、ソイニー師匠の退職理由が「世界を見て回りたいから」というものだったからも生じた。
しかし、ソイニー師匠が頻繁に、下界旅行をしていたことから、旅行好きが極まったのだろうと、不思議とすんなり周りに受け入れられ、ソイニー師匠は退職することに成功する。
それからは、シーモの隠れアジトに住み続け、出産に備える。
そして、その時はやってきた。
午前3時、急な破水が生じ、シーモは急いでソイニーを仲間の病院に連れて行く。
産婦人科医師はシーモの友達で、革命派の仲間だ、故にソイニー師匠が天界人であることも知っている。
「天界人の出産は立ち会ったことがないから、万が一のことも考えておいてくれよ」
医師はシーモにそう告げる。
シーモはただ、祈ることしかできない。
予想通り、難産となった。
なかなか、生まれてこない。ソイニー師匠は呻きながら必死に痛みに耐える。
理由は、天界人から生まれる子どもはもともと魔導が強い。すると、自己防衛のため防壁を子宮内で展開してしまい、産道を出てこれないためだった。
この場合、帝王切開でも防壁により赤子を取り出せそうにない。
まさに絶体絶命である。
誰もが、母子の命がもう助からないかもしれない、そう思った時だった。
「あの、お手伝いしましょうか」
突然、見知らぬ女が手術室に入ってきた。
「君は誰だね。ここは部外者以外入ってはいけない」
「私は、天界人の出産方法を知っている帝級治癒魔導士です。私は、その子の防壁を解除することができます」
「あなたのような帝級魔導士を知りませんが‥‥‥」
医師が女の素性を疑う。
突然、現れた不審者。
だけどその女は、母子を救うことができるという。
シーモは、藁にもすがる思いでその女に助けをこう。
「ソイニーと子どもを助けることができるんですか?」
「私ならできます」
女が堂々と言い切る。
シーモは、医師に向かって、「女の助けを借りたい」と懇願する。
医師は、最初は嫌がったが、現状打破する方法がないため、しぶしぶ女の手を借りることにする。
「我が魂は、すべての霊魂を癒し沈める「鎮魂《カーム》」
女が詠唱すると、子宮内の防壁が解除される気配をシーモは感じる。
「防壁が、解除された」
シーモは呟く。
すかさず医師は、手術’を続ける。
そして、無事、ソイニー師匠はエレンを産み落とす。
もちろん母子ともに無事だった。
「あ、ありがとう」
シーモは泣きながら感謝する。
しかし、シーモが謎の女に伝えようとすると、すでに女の姿は手術室から消えていた。
あの女は一体誰だったのか。
「これはなんですか?」
看護師が床に落ちていた紙切れに気づく。
そしてその紙を開くと文字が書かれていた。
『苦難の道を歩む聖女よ。己の信念に従い進みなさい。私は陰ながら見守っております。ユキナ・ニベリウム』
「この名前は!」
看護師が絶句する。
この名前は世界的に有名な名であった。
その名は、行方不明の天界大統領の一人娘の名であった。
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