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死渡抜刀
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「なかなか骨があるやつだったな」
上空に響き渡る天界大統領の声。上空に目を向けると、先ほどまで地下にいたはずの天界大統領が上空にて笑みを浮かべている。
「ロージェ先生!」
僕とヒビトはロージェ先生に駆け寄ると、まだ微かに息があ流。しかし、いつ命が途切れてもおおかしくない。
「全員攻撃開始!」
僕らがロージェ先生の状態を見ている間に、素早い対応を見せたのは姫様。直ちに国軍に指示を飛ばす。
国軍は詠唱を開始し、強力な魔導を放つ。それに呼応して、魔専の学生も攻撃魔導を放つ。
ほとんどの攻撃が天界大統領に着弾する。
天界大統領の体から煙が立つ。煙が腫れると、天界大統領の体は国軍らの攻撃により損壊していた。普通なら致命傷になり、即死のはず。しかし、大統領はまだ息があるようで、薄気味悪い笑みを浮かべ続けている。
「なるほど、ここまで下界は強くなっていたのか。しかも日本王国の魔導師だけでこの力か。全世界の魔導士が集まって私に対峙したら、とてつもないことになりそうだ……。だが、それだけでは私には勝てないその理由はなぜか……」
天界大統領の体が急速に修復されていく。
「私が不死身だからだよ。これまで私の魂は不滅だからだ」
突然光り輝く天界大統領。黄金の光が収縮すると、黄金に光る杖が現界する。
「ギガンド・ボルグ」
天界大統領は無詠唱でギガンド・ボルグを我々に向けて放つ。虚空の黒球が上空に限界し、空間を捻じ曲げながら我々を飲み込もうと向かってくる。
——また、僕の目の前で大切な人が死ぬのか……それは嫌だ
「ヒビト合技だ」
「分かった」
「「我切先は、運命《さだめ》を討つ『アトラス・バース』」
アスカが持つ明幸、ヒビトが持つ希刀。その二つから発せられる魔導が混ざり合い、振り上げた刀から黒球めがけて刃が放たれる。
放たれた刃は、黒球に吸い込まれる。皆が、攻撃が効かなかったと思ったその時、黒球の内部から火花が放出され黒球は消失した。
「力の流れを変えて、無駄にエネルギーを放出させてギガンド・ボルグを相殺したか。やはり、私の邪魔になるのはお前達のようだな」
天界大統領は言葉を発するや否や、いきなりヒビトとの距離を詰める。瞬間移動のような速さで詰め寄った天界大統領はそのまま足の裏でヒビトの腹を蹴る。ヒビトは、目にも止まらぬ速さにて吹き飛ばされ、近くの民家を三軒ほどぶち抜いた。
——やばい
そう思った時には遅かった。死渡に手をかけわずかに抜いたが完全に抜刀するには間に合わなかった。
天界大統領の腕が脇腹に減り込み、僕は魔専の校舎の壁へと吹き飛ばされ、めり込んだ。
「おいおいおい、あっけないな。ロージェはもっと私を楽しませてくれたぞ。片足を失おうとも、片腕を失おうとも……」
天界大統領は意気揚々に誹謗を重ねようとした時、自らの腕がかすかに切れていることに気づく。
「おかしい」
天界大統領は血が落ちる腕を眺めながら首を傾げた。
「おかしいぞ、なぜ傷が治らない」
幸運にも、天界大統領がアスカを吹き飛ばす時に、天界大統領はアスカがわずかに抜いていた死渡の刃に触れていたのだ。
「まさか、アスカお前、死渡を持っているのか」
「へへ、それはどうですかね天界大統領」
こちらの手の内が定かでない今がチャンスな訳で、わざわざ敵に情報は渡さない。
「私がこの世を隈なく探しても見つけられなかった死渡をお前はどこで見つけたんだ」
天界大統領の激昂を他所に、僕は死渡と明幸を抜く。
「アスカ、死渡を持つことは重罪だ。お前から死ね」
人知を超えた俊敏さで再びアスカに近寄る天界大統領。しかし、アスカは見切っていた。素早く、死渡を振り上げる。
宙に舞う腕。一瞬何が起きたかわからない天界大統領。
「うおおおおお」
自らの腕が吹き飛んだことを理解した途端、天界大統領は叫び出す。
「今です一斉攻撃です!」
姫様の号令のもと、周りにいる全員が天界大統領へ攻撃を繰り出す。
「なんてね」
攻撃が当たる直前、天界大統領はニヤつく。そして、一瞬にして腕をはやし、両手を広げ、「シールド」と一言発するだけで、全ての攻撃は無効化され、空中で飛散した。
「嘘だろ」
アスカの口から悲痛が漏れる。
「アスカ、残念だったな。せっかく死渡を手に入れたにもかかわらず、私にはもはや死渡は通用しないのだ。私は数百年の時を生きてきた。死渡の対策を取っていてもおかしくはないだろ」
「そんな……」
「いいぞいいぞ、その絶望した顔、まさに私の大好物だ。絶望して死ね」
天界大統領は左手で虚空の中から、刀を取り出すと、力が抜け、膝から崩れ落ちた僕の首に刃を当てる。
「アスカ逃げろ!』
遠くからヒビトの声が聞こえるが、死渡が使えない今、もはや天界大統領を倒す術はない。
「死ね」
天界大統領が刀を振り下ろす。
「終わった……」
僕は、ゆっくり目を閉じた。
上空に響き渡る天界大統領の声。上空に目を向けると、先ほどまで地下にいたはずの天界大統領が上空にて笑みを浮かべている。
「ロージェ先生!」
僕とヒビトはロージェ先生に駆け寄ると、まだ微かに息があ流。しかし、いつ命が途切れてもおおかしくない。
「全員攻撃開始!」
僕らがロージェ先生の状態を見ている間に、素早い対応を見せたのは姫様。直ちに国軍に指示を飛ばす。
国軍は詠唱を開始し、強力な魔導を放つ。それに呼応して、魔専の学生も攻撃魔導を放つ。
ほとんどの攻撃が天界大統領に着弾する。
天界大統領の体から煙が立つ。煙が腫れると、天界大統領の体は国軍らの攻撃により損壊していた。普通なら致命傷になり、即死のはず。しかし、大統領はまだ息があるようで、薄気味悪い笑みを浮かべ続けている。
「なるほど、ここまで下界は強くなっていたのか。しかも日本王国の魔導師だけでこの力か。全世界の魔導士が集まって私に対峙したら、とてつもないことになりそうだ……。だが、それだけでは私には勝てないその理由はなぜか……」
天界大統領の体が急速に修復されていく。
「私が不死身だからだよ。これまで私の魂は不滅だからだ」
突然光り輝く天界大統領。黄金の光が収縮すると、黄金に光る杖が現界する。
「ギガンド・ボルグ」
天界大統領は無詠唱でギガンド・ボルグを我々に向けて放つ。虚空の黒球が上空に限界し、空間を捻じ曲げながら我々を飲み込もうと向かってくる。
——また、僕の目の前で大切な人が死ぬのか……それは嫌だ
「ヒビト合技だ」
「分かった」
「「我切先は、運命《さだめ》を討つ『アトラス・バース』」
アスカが持つ明幸、ヒビトが持つ希刀。その二つから発せられる魔導が混ざり合い、振り上げた刀から黒球めがけて刃が放たれる。
放たれた刃は、黒球に吸い込まれる。皆が、攻撃が効かなかったと思ったその時、黒球の内部から火花が放出され黒球は消失した。
「力の流れを変えて、無駄にエネルギーを放出させてギガンド・ボルグを相殺したか。やはり、私の邪魔になるのはお前達のようだな」
天界大統領は言葉を発するや否や、いきなりヒビトとの距離を詰める。瞬間移動のような速さで詰め寄った天界大統領はそのまま足の裏でヒビトの腹を蹴る。ヒビトは、目にも止まらぬ速さにて吹き飛ばされ、近くの民家を三軒ほどぶち抜いた。
——やばい
そう思った時には遅かった。死渡に手をかけわずかに抜いたが完全に抜刀するには間に合わなかった。
天界大統領の腕が脇腹に減り込み、僕は魔専の校舎の壁へと吹き飛ばされ、めり込んだ。
「おいおいおい、あっけないな。ロージェはもっと私を楽しませてくれたぞ。片足を失おうとも、片腕を失おうとも……」
天界大統領は意気揚々に誹謗を重ねようとした時、自らの腕がかすかに切れていることに気づく。
「おかしい」
天界大統領は血が落ちる腕を眺めながら首を傾げた。
「おかしいぞ、なぜ傷が治らない」
幸運にも、天界大統領がアスカを吹き飛ばす時に、天界大統領はアスカがわずかに抜いていた死渡の刃に触れていたのだ。
「まさか、アスカお前、死渡を持っているのか」
「へへ、それはどうですかね天界大統領」
こちらの手の内が定かでない今がチャンスな訳で、わざわざ敵に情報は渡さない。
「私がこの世を隈なく探しても見つけられなかった死渡をお前はどこで見つけたんだ」
天界大統領の激昂を他所に、僕は死渡と明幸を抜く。
「アスカ、死渡を持つことは重罪だ。お前から死ね」
人知を超えた俊敏さで再びアスカに近寄る天界大統領。しかし、アスカは見切っていた。素早く、死渡を振り上げる。
宙に舞う腕。一瞬何が起きたかわからない天界大統領。
「うおおおおお」
自らの腕が吹き飛んだことを理解した途端、天界大統領は叫び出す。
「今です一斉攻撃です!」
姫様の号令のもと、周りにいる全員が天界大統領へ攻撃を繰り出す。
「なんてね」
攻撃が当たる直前、天界大統領はニヤつく。そして、一瞬にして腕をはやし、両手を広げ、「シールド」と一言発するだけで、全ての攻撃は無効化され、空中で飛散した。
「嘘だろ」
アスカの口から悲痛が漏れる。
「アスカ、残念だったな。せっかく死渡を手に入れたにもかかわらず、私にはもはや死渡は通用しないのだ。私は数百年の時を生きてきた。死渡の対策を取っていてもおかしくはないだろ」
「そんな……」
「いいぞいいぞ、その絶望した顔、まさに私の大好物だ。絶望して死ね」
天界大統領は左手で虚空の中から、刀を取り出すと、力が抜け、膝から崩れ落ちた僕の首に刃を当てる。
「アスカ逃げろ!』
遠くからヒビトの声が聞こえるが、死渡が使えない今、もはや天界大統領を倒す術はない。
「死ね」
天界大統領が刀を振り下ろす。
「終わった……」
僕は、ゆっくり目を閉じた。
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