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終結
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「これが、初代魔導具士は初めに作成した、天界大統領を倒すための刀……凄まじい神気」
アスカは刀身に見惚れていると、ソイニー師匠が叫ぶ。
「アスカ、黒刀に魔導を込めて、天海大統領に放ちなさい!」
アスカは黒刀の刀身を見つめ魔導を練る。
「姫様。この前みたいに、みんなの魔道を僕に」
姫様は僕の肩に手を置きながら頷くと、国軍に向かって魔道を送るように命じる。
「アスカ、これで終わらせましょう」
僕は静かに頷く。
周りの者たちから魔導が送られてくる。温かな魔導。皆が一心にこの王国を、この世界を守りたいという願いが、一緒に流れ込んでくる。
——僕は、この人たちを、この世界を守りたい
先刻までは全てを諦めかけていたアスカは、人々の気持ちに触れることで気概を取り戻す。
「ソイニー、お前まさか、弟のアイシャが残した刀を全て揃えたのか!?」
ソイニー師匠と激戦を繰り広げている天界大統領が尋ねた。
「答える義務はありません」
「そうか、それが答えのようなものだ。流石にアレを打ち込まれた場合、私の体が保つかは不明確だ。私も遊んでないで蹴りをつけるとしよう」
そういうと天界大統領は刀を思い切り振り、ソイニーの杖を弾くと、すかさず黄金の杖を前に出し言う。
「カラドボルグ」
天界大統領の得意技で対地殲滅魔導。それに対しソイニー師匠は、瞬時に反応し詠唱する。
「分子は震え、原子は破壊する。『ソード・セパ』」
ソイニー師匠が杖を上から下へと振り下ろすと、天界大統領が放ったカラドボルグは真っ二つに割れた。その衝撃で砂煙が舞い上がる。
ソイニー師匠は、天界大統領の位置を把握できない。その瞬間気付いた、自分が罠に嵌められたことを。
「アスカ!!!」
ソイニー師匠は叫んだ。
ソイニー師匠が叫んだ時、僕の目は、天界大統領を捉えていた。まっすぐ向かってくる天界大統領。ただ、まだ『天霧陰』から魔導を放つまでに必要な魔導量が足りていない。後数秒、ほんの数秒あれば事足りるのに、間に合わない。
「我が神聖な身を守りて現界せよ、『絶対防壁』」
「我が神聖な身を守りて現界せよ、『絶対防壁(改)』」
ユミ姉とナオミの声が響き渡る。二人は、天界大統領の目の前に防壁を現界させた。
「何のこれしきいぃぃぃぃ」
しかし、絶対防壁にぶつかった天界大統領は力づくで防壁を打ち破ろうとしてくる。すぐに防壁に亀裂が入る。その間も、周りの国軍や魔専の生徒たちは天海大統領に向けて攻撃を続けているが、天界大統領の勢いは一向に収まらない。
——バリン
轟音と共に二人の防壁は瓦解した。再び突っ込んでくる天界大統領。
「行かせない」
今度は、マミに治癒魔導を施してもらっていたヒビトが目の前に飛び出し、天界大統領の進撃をロージェ先生から最初にもらった思い出深い剣で受け止める。
「ちょこまかとちょこまかとうるさいハエどもが!!」
天界大統領の咆哮が東京中に響き渡る。
「害悪なのはお前だ。天界大統領。お前は今日ここで我々によって滅ぶんだ。お前のつけあがったその思想と共に溺死しろ!」
ヒビトの奮闘はかなりのものであったが、天界大統領の勢いは止まらない。次第に後ろに押され始めるヒビト。
——やばい吹き飛ばされる
「よく耐えましたヒビト君」
ソイニー師匠がヒビトに合流し、そして一緒に天界大統領の進撃を防ぐ。
「溜まった」
僕は呟く。そして詠唱する。
「理空逸脱した者を、理の中へと帰依するために、我は身を振るう……」
僕の詠唱に気がついたソイニー師匠。
「ヒビト君、アスカの詠唱が始まりました。タイミングを見て避けますよ。渾身の力を発揮してください」
「分かりました!」
「『ブライアントアローン』」
僕の詠唱が終わった時。
「今ですヒビト君」
「はい!」
ソイニー師匠とヒビトは力技で何とか天界大統領を弾き飛ばし、横に逃げる。
『天霧陰』から放たれた光の矢は一直線に天界大統領に向かう。
天界大統領は、杖を前に突き出して詠唱する。
「我が最強の魔導よ限界せよ『インテグラル・ディスペアン』」
半径1cm程度のオレンジ色の熱球が現界する。その熱量は凄まじく、数十m離れているアスカたちにまで熱気が伝わる。
アスカが放った光の矢と天界大統領の熱球がぶつかり合う。
メキメキと不穏な音が響き渡る。熱球に……ヒビがはいった。
「まさか、私の全てを燃やし尽くすことができる最強の魔導が、こんなチンケな光の矢に負けるのか?」
「天界大統領、その慢心さがあなたを滅ぼす、ここで滅びろ!!」
僕はさらに魔導をこめる光の矢は増幅し……ついに、熱球が崩壊し、矢は天界大統領の胸を突き刺した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
断末魔と共に、天界大統領は膝から崩れ去る。そして、黄金の光が天界大統領を包み込み、じわじわとその光が消失していく。
「魂が消えていく」
ソイニー師匠がポツリと呟く。あの消えていく光が、魂らしい。
終わったのか。ついに……。
僕は『天霧陰』を下ろす。『天霧陰』は次第にボロボロと崩れていき、終いには灰になった、
僕は、本当に天界大統領を倒したか確認するために近づこうとした。が、その時。
展開大統領がいきなり手をつき、足を立て、立ちあがろうとしていた。
「まだ死んでないぞ!」
ヒビトが叫ぶ。が時すでに遅し。
天界大統領は僕に詰め寄ると持っていた刀を振り上げる。僕は刀の方を見るが、僕と刀の間には、僕の肩を掴んだままの姫様がいる。
このままでは、姫様ごと切られてしまう。それだけは——防がなくては。
僕は咄嗟に姫様を抱き抱える。
——グサ
背中に激痛を感じる。
天界大統領の刃が僕の背中に届いた。僕は姫様を抱えながら前方に倒れ込む。
「これで我が弟、魔導具士の怨念を断ち切った。私の勝利だ。長かった。私たちはどこで道を間違ってしまったのだろうな。本当は兄妹揃ってただ平安に過ごしたかっただけなのに……」
天界大統領は満身創痍の中上空を見上げ目を細める。その表情は哀愁にかられている。
「この、死に損ないが! メテオバースト」
哀愁漂う天界大統領に対して、ソイニー師匠が叫びながら岩石を限界させて天界大統領を吹き飛ばす。
「ソイニー……」
吹き飛ばされる寸前、天界大統領は笑った。ソイニーに向け、それは家族に見せる笑顔だった。
天界大統領はまるでボロ雑巾の如く宙に舞い地面に落ちる。
すぐにヒビトが生死を確認しに向かう。
天界大統領はついに死んだ。最後に爪痕を残して……。
「アスカ、アスカ! 衛生兵はいますか? 早く処置を施してください」
姫様や、仲間たちの声が、かすかに聞こえる。背中が異様に熱い。深く切り付けられてしまった。
「アスカ、死なないで、お願いだから死なないで」
姫様が呼んでいる。
「ひ、姫様……、すみません、やられちゃいました」
「アスカ、ごめんなさい。私を庇ったばっかりに」
「いえ、僕は、姫様が生きていてくれさえいればそれでいいのです。あの日、アロンガス家で出会った時に僕の運命は好転し始めました。姫様がいてくださったから今の僕がいるのです、グフ」
吐血をするアスカ。
「アスカ、喋らないで安静にしていて。このままじゃ本当に死んじゃう」
マミや王宮治癒魔導士によりこの世界で受けられる最上級の治癒魔導を受けるが、どんどん衰弱していく。
「姫様、伝えたいことが……」
「アスカ、何?」
「姫様……僕は、姫様のことを愛してます」
「私もアスカ」
姫様は僕の手を取り、力強く握る。
「僕は姫様に見つけてもらえて……幸せでした。また、あのサニーの丘で夕日を見たかった」
「行きましょうアスカ。何度も行きましょう。だから生きて、アスカ。ねえアスカ。アスカ!」
僕の意識は次第に薄れる。姫様の鳴き声がかすかに聞こえる。
——すみません姫様。最後までお供することができませんでした。僕、頑張れましたかね。姫様の役に立ちましたかね。そうであるならば本望です。姫様の幸せを願っています。
視界が白く包まれていく。これが死か。意外に暖かいな。
僕は白い世界に吸い込まれていく、なされるがままに。
どんどんと意識だけが空中を飛び回るが如く凄まじいスピードで移動する。
そして、数秒経った時に、意識が止まった。そこは真っ白な世界。そして、見覚えがある世界。
ああ、ここは真の天界だ。
僕は先日来たばかりだ。本当に死んだんだ。
「本当にここに来るとは予想が当たって嬉しいやら悲しいやらで不思議な感覚だよ」
急に話しかけられ僕は後ろを振り返る。
そこには、エレンが立っていた。
アスカは刀身に見惚れていると、ソイニー師匠が叫ぶ。
「アスカ、黒刀に魔導を込めて、天海大統領に放ちなさい!」
アスカは黒刀の刀身を見つめ魔導を練る。
「姫様。この前みたいに、みんなの魔道を僕に」
姫様は僕の肩に手を置きながら頷くと、国軍に向かって魔道を送るように命じる。
「アスカ、これで終わらせましょう」
僕は静かに頷く。
周りの者たちから魔導が送られてくる。温かな魔導。皆が一心にこの王国を、この世界を守りたいという願いが、一緒に流れ込んでくる。
——僕は、この人たちを、この世界を守りたい
先刻までは全てを諦めかけていたアスカは、人々の気持ちに触れることで気概を取り戻す。
「ソイニー、お前まさか、弟のアイシャが残した刀を全て揃えたのか!?」
ソイニー師匠と激戦を繰り広げている天界大統領が尋ねた。
「答える義務はありません」
「そうか、それが答えのようなものだ。流石にアレを打ち込まれた場合、私の体が保つかは不明確だ。私も遊んでないで蹴りをつけるとしよう」
そういうと天界大統領は刀を思い切り振り、ソイニーの杖を弾くと、すかさず黄金の杖を前に出し言う。
「カラドボルグ」
天界大統領の得意技で対地殲滅魔導。それに対しソイニー師匠は、瞬時に反応し詠唱する。
「分子は震え、原子は破壊する。『ソード・セパ』」
ソイニー師匠が杖を上から下へと振り下ろすと、天界大統領が放ったカラドボルグは真っ二つに割れた。その衝撃で砂煙が舞い上がる。
ソイニー師匠は、天界大統領の位置を把握できない。その瞬間気付いた、自分が罠に嵌められたことを。
「アスカ!!!」
ソイニー師匠は叫んだ。
ソイニー師匠が叫んだ時、僕の目は、天界大統領を捉えていた。まっすぐ向かってくる天界大統領。ただ、まだ『天霧陰』から魔導を放つまでに必要な魔導量が足りていない。後数秒、ほんの数秒あれば事足りるのに、間に合わない。
「我が神聖な身を守りて現界せよ、『絶対防壁』」
「我が神聖な身を守りて現界せよ、『絶対防壁(改)』」
ユミ姉とナオミの声が響き渡る。二人は、天界大統領の目の前に防壁を現界させた。
「何のこれしきいぃぃぃぃ」
しかし、絶対防壁にぶつかった天界大統領は力づくで防壁を打ち破ろうとしてくる。すぐに防壁に亀裂が入る。その間も、周りの国軍や魔専の生徒たちは天海大統領に向けて攻撃を続けているが、天界大統領の勢いは一向に収まらない。
——バリン
轟音と共に二人の防壁は瓦解した。再び突っ込んでくる天界大統領。
「行かせない」
今度は、マミに治癒魔導を施してもらっていたヒビトが目の前に飛び出し、天界大統領の進撃をロージェ先生から最初にもらった思い出深い剣で受け止める。
「ちょこまかとちょこまかとうるさいハエどもが!!」
天界大統領の咆哮が東京中に響き渡る。
「害悪なのはお前だ。天界大統領。お前は今日ここで我々によって滅ぶんだ。お前のつけあがったその思想と共に溺死しろ!」
ヒビトの奮闘はかなりのものであったが、天界大統領の勢いは止まらない。次第に後ろに押され始めるヒビト。
——やばい吹き飛ばされる
「よく耐えましたヒビト君」
ソイニー師匠がヒビトに合流し、そして一緒に天界大統領の進撃を防ぐ。
「溜まった」
僕は呟く。そして詠唱する。
「理空逸脱した者を、理の中へと帰依するために、我は身を振るう……」
僕の詠唱に気がついたソイニー師匠。
「ヒビト君、アスカの詠唱が始まりました。タイミングを見て避けますよ。渾身の力を発揮してください」
「分かりました!」
「『ブライアントアローン』」
僕の詠唱が終わった時。
「今ですヒビト君」
「はい!」
ソイニー師匠とヒビトは力技で何とか天界大統領を弾き飛ばし、横に逃げる。
『天霧陰』から放たれた光の矢は一直線に天界大統領に向かう。
天界大統領は、杖を前に突き出して詠唱する。
「我が最強の魔導よ限界せよ『インテグラル・ディスペアン』」
半径1cm程度のオレンジ色の熱球が現界する。その熱量は凄まじく、数十m離れているアスカたちにまで熱気が伝わる。
アスカが放った光の矢と天界大統領の熱球がぶつかり合う。
メキメキと不穏な音が響き渡る。熱球に……ヒビがはいった。
「まさか、私の全てを燃やし尽くすことができる最強の魔導が、こんなチンケな光の矢に負けるのか?」
「天界大統領、その慢心さがあなたを滅ぼす、ここで滅びろ!!」
僕はさらに魔導をこめる光の矢は増幅し……ついに、熱球が崩壊し、矢は天界大統領の胸を突き刺した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
断末魔と共に、天界大統領は膝から崩れ去る。そして、黄金の光が天界大統領を包み込み、じわじわとその光が消失していく。
「魂が消えていく」
ソイニー師匠がポツリと呟く。あの消えていく光が、魂らしい。
終わったのか。ついに……。
僕は『天霧陰』を下ろす。『天霧陰』は次第にボロボロと崩れていき、終いには灰になった、
僕は、本当に天界大統領を倒したか確認するために近づこうとした。が、その時。
展開大統領がいきなり手をつき、足を立て、立ちあがろうとしていた。
「まだ死んでないぞ!」
ヒビトが叫ぶ。が時すでに遅し。
天界大統領は僕に詰め寄ると持っていた刀を振り上げる。僕は刀の方を見るが、僕と刀の間には、僕の肩を掴んだままの姫様がいる。
このままでは、姫様ごと切られてしまう。それだけは——防がなくては。
僕は咄嗟に姫様を抱き抱える。
——グサ
背中に激痛を感じる。
天界大統領の刃が僕の背中に届いた。僕は姫様を抱えながら前方に倒れ込む。
「これで我が弟、魔導具士の怨念を断ち切った。私の勝利だ。長かった。私たちはどこで道を間違ってしまったのだろうな。本当は兄妹揃ってただ平安に過ごしたかっただけなのに……」
天界大統領は満身創痍の中上空を見上げ目を細める。その表情は哀愁にかられている。
「この、死に損ないが! メテオバースト」
哀愁漂う天界大統領に対して、ソイニー師匠が叫びながら岩石を限界させて天界大統領を吹き飛ばす。
「ソイニー……」
吹き飛ばされる寸前、天界大統領は笑った。ソイニーに向け、それは家族に見せる笑顔だった。
天界大統領はまるでボロ雑巾の如く宙に舞い地面に落ちる。
すぐにヒビトが生死を確認しに向かう。
天界大統領はついに死んだ。最後に爪痕を残して……。
「アスカ、アスカ! 衛生兵はいますか? 早く処置を施してください」
姫様や、仲間たちの声が、かすかに聞こえる。背中が異様に熱い。深く切り付けられてしまった。
「アスカ、死なないで、お願いだから死なないで」
姫様が呼んでいる。
「ひ、姫様……、すみません、やられちゃいました」
「アスカ、ごめんなさい。私を庇ったばっかりに」
「いえ、僕は、姫様が生きていてくれさえいればそれでいいのです。あの日、アロンガス家で出会った時に僕の運命は好転し始めました。姫様がいてくださったから今の僕がいるのです、グフ」
吐血をするアスカ。
「アスカ、喋らないで安静にしていて。このままじゃ本当に死んじゃう」
マミや王宮治癒魔導士によりこの世界で受けられる最上級の治癒魔導を受けるが、どんどん衰弱していく。
「姫様、伝えたいことが……」
「アスカ、何?」
「姫様……僕は、姫様のことを愛してます」
「私もアスカ」
姫様は僕の手を取り、力強く握る。
「僕は姫様に見つけてもらえて……幸せでした。また、あのサニーの丘で夕日を見たかった」
「行きましょうアスカ。何度も行きましょう。だから生きて、アスカ。ねえアスカ。アスカ!」
僕の意識は次第に薄れる。姫様の鳴き声がかすかに聞こえる。
——すみません姫様。最後までお供することができませんでした。僕、頑張れましたかね。姫様の役に立ちましたかね。そうであるならば本望です。姫様の幸せを願っています。
視界が白く包まれていく。これが死か。意外に暖かいな。
僕は白い世界に吸い込まれていく、なされるがままに。
どんどんと意識だけが空中を飛び回るが如く凄まじいスピードで移動する。
そして、数秒経った時に、意識が止まった。そこは真っ白な世界。そして、見覚えがある世界。
ああ、ここは真の天界だ。
僕は先日来たばかりだ。本当に死んだんだ。
「本当にここに来るとは予想が当たって嬉しいやら悲しいやらで不思議な感覚だよ」
急に話しかけられ僕は後ろを振り返る。
そこには、エレンが立っていた。
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