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血流病
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今…なんて…
「声が大きいわよ。落ち着きなさい」
窘めるような母さんの声がする。だがその声も頭に入ってこない。
「血流…病…」
確か本で読んだことがある。
血液の流れが正常ではなくなっていく。それはつまり血液による酸素運搬も行いづらくなるということ。だんだんと臓器が機能停止状態に陥って…その先は
「…死」
嘘…だろ…
母さんは風邪じゃなかったのか?ほんとは
…ほんとは…
「病気だったのか…?」
それじゃあ母さんは死…
「でも…あんたはまだ初期の段階だとはいえ…ここはスラムよ!?こんな所じゃ初期でも死が…」
確定してるじゃない…という言葉は飲み込まれたようだ。
…まて。スラムじゃなかったらどうにかなったのか?
「ふふっ。そうね。薬もない。治療も受けられない。大変ね」
「笑い事じゃ……お金さえあれば…」
嗚咽混じりに発せられる声と共に俺は家の中に飛び込んだ。
「母さんっ!」
「ーっ……おかえり。アドニス」
聞かれたのか、と一瞬顔色を変えた母さんだが聞かれても5歳児の俺には内容は理解出来てないと思ったのかいつもの笑みを浮かべる。
「風邪、じゃないんでしょ」
空気が固まる。
「血流病なんでしょ!?」
顔を強ばらせた母さんは口を開く。
「大丈夫よ。風邪と同じようなものよ。時間が経てば治るわ」
「違う…そんな嘘…俺だってわかるよ…」
拾った本で読んだから…
「…そう……ごめんね、アドニス」
なんで…なんで謝るのさ。母さん。
「貴方が大人になる姿見てあげられなくなっちゃった」
なんで必死に泣くのを堪えてるのさ。
「貴方が…」
「母さんっっ!!!!!」
俺はそれ以上の言葉は聞きたくなかった。
視界が軽く滲む。
「母さん…お願いだからさ…それ以上は言わないでよ」
母さんは困ったように笑った。
「初期って…言ったよね」
俺の呟くような一言に母さんと話してたもう1人の女性が反応した。
「…初期でもね、ここじゃ…」
「お金さえあれば何とかなるでしょ」
言葉をさえぎる。そう。金さえあればくすりもかえる。治療も受けられる。清潔な場所で療養できる。
「そのお金が…ここにはないのよ」
今日1日過ごすのも困難なこの場所。
勿論治療費など桁外れの額だ。
「俺が…俺が稼いでくるから…俺が…」
「どうやって?あなたはまだ5歳なのよ」
「…ここから15km離れた場所に…街があるよね!」
確か小さいけれどもここから一番近い街があった。
「…えぇ」
それが何?というように首を傾げる2人。
「今日から5年間、俺が森で狩ってきた獣たちをそこで売る!上手く捌ければ毛皮とか色々な部分で高く売れるでしょ?」
「ちょっと待って!森って…あの森には普通の獣じゃなくているのは魔物のはずよ!大人30人でやっと1匹倒せるか倒せないかくらいなのよ?」
それはなにも経験が無いここの大人達の計算。少し経験がある大人だったら20人。そして冒険者ならばあれくらいの魔物1人で余裕。
それに…俺も…
「大丈夫…だよ。俺1人で余裕だから」
「何言って…」
「やっぱりね」
今まで黙ってた母さんが口を開いた。確信を持って。笑って。
「アドニス。貴方、魔法を使いこなせてるのね」
…やっぱ母さんにはバレてたか。
「声が大きいわよ。落ち着きなさい」
窘めるような母さんの声がする。だがその声も頭に入ってこない。
「血流…病…」
確か本で読んだことがある。
血液の流れが正常ではなくなっていく。それはつまり血液による酸素運搬も行いづらくなるということ。だんだんと臓器が機能停止状態に陥って…その先は
「…死」
嘘…だろ…
母さんは風邪じゃなかったのか?ほんとは
…ほんとは…
「病気だったのか…?」
それじゃあ母さんは死…
「でも…あんたはまだ初期の段階だとはいえ…ここはスラムよ!?こんな所じゃ初期でも死が…」
確定してるじゃない…という言葉は飲み込まれたようだ。
…まて。スラムじゃなかったらどうにかなったのか?
「ふふっ。そうね。薬もない。治療も受けられない。大変ね」
「笑い事じゃ……お金さえあれば…」
嗚咽混じりに発せられる声と共に俺は家の中に飛び込んだ。
「母さんっ!」
「ーっ……おかえり。アドニス」
聞かれたのか、と一瞬顔色を変えた母さんだが聞かれても5歳児の俺には内容は理解出来てないと思ったのかいつもの笑みを浮かべる。
「風邪、じゃないんでしょ」
空気が固まる。
「血流病なんでしょ!?」
顔を強ばらせた母さんは口を開く。
「大丈夫よ。風邪と同じようなものよ。時間が経てば治るわ」
「違う…そんな嘘…俺だってわかるよ…」
拾った本で読んだから…
「…そう……ごめんね、アドニス」
なんで…なんで謝るのさ。母さん。
「貴方が大人になる姿見てあげられなくなっちゃった」
なんで必死に泣くのを堪えてるのさ。
「貴方が…」
「母さんっっ!!!!!」
俺はそれ以上の言葉は聞きたくなかった。
視界が軽く滲む。
「母さん…お願いだからさ…それ以上は言わないでよ」
母さんは困ったように笑った。
「初期って…言ったよね」
俺の呟くような一言に母さんと話してたもう1人の女性が反応した。
「…初期でもね、ここじゃ…」
「お金さえあれば何とかなるでしょ」
言葉をさえぎる。そう。金さえあればくすりもかえる。治療も受けられる。清潔な場所で療養できる。
「そのお金が…ここにはないのよ」
今日1日過ごすのも困難なこの場所。
勿論治療費など桁外れの額だ。
「俺が…俺が稼いでくるから…俺が…」
「どうやって?あなたはまだ5歳なのよ」
「…ここから15km離れた場所に…街があるよね!」
確か小さいけれどもここから一番近い街があった。
「…えぇ」
それが何?というように首を傾げる2人。
「今日から5年間、俺が森で狩ってきた獣たちをそこで売る!上手く捌ければ毛皮とか色々な部分で高く売れるでしょ?」
「ちょっと待って!森って…あの森には普通の獣じゃなくているのは魔物のはずよ!大人30人でやっと1匹倒せるか倒せないかくらいなのよ?」
それはなにも経験が無いここの大人達の計算。少し経験がある大人だったら20人。そして冒険者ならばあれくらいの魔物1人で余裕。
それに…俺も…
「大丈夫…だよ。俺1人で余裕だから」
「何言って…」
「やっぱりね」
今まで黙ってた母さんが口を開いた。確信を持って。笑って。
「アドニス。貴方、魔法を使いこなせてるのね」
…やっぱ母さんにはバレてたか。
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